実はやらかしてる三郎さん
「いらっしゃい、おお、君たちか。三郎さんはまだ来てないよ。二階にあがるのはちょっと待ってね」
マスターは愛想よく僕たちを迎えてくれる。店にはほどほどのお客さんがいる。程なく二階から団体さんが降りてきた。みんなお年寄りだ。
「マスター、今日もありがとうねぇ」
最後のおばあちゃんがマスターにお礼を言い出て行った。
二階に上がるとマスターと同い歳くらいの女性が片付けていた。
「ちょっと待ってね、今片付けちゃうから」
そう言いながらテキパキと片付ける。カウンターに食器を片付けると僕たちの方を向いた。
「いらっしゃい。あなたたちが怜くんと凛ちゃんと日和ちゃんね、旦那と三郎さんから聞いてるわ。私は佐々木梓。佐々木、この店のマスターの奥さんね」
「すみません、お仕事中の邪魔じゃなかったですか?」
凛が声をかける。こういうところはよく気が付く。
「あっ、大丈夫よ。もう終わったし。それより何を飲む? 大丈夫、三郎さんにつけておくから」
「あっ、払いますよ、ちゃんと」
「いいのいいの、あなたたち神校の生徒でしょ。あそこはアルバイトできないから大変じゃない? 大丈夫、三郎さんにつけたりしないから」
そういいながら片付けたカップを下へ送るリフトに入れて僕達の注文を下に伝える。
「二階を私たちが占有しちゃって大丈夫ですか?」
「このあとはお客さんが来ないから大丈夫よ。ここは町内会の主にお年寄りが使うの。打ち合わせとか趣味の集まりとかね。だいたい平日の昼間だからこの時間は逆に空いてるわ」
さっきみたいにね、そう言われて周りを見回してみるとそういう部屋に見えるな。
「三郎さんはね、お年寄りの色々話をよく聞いてくれるからなんかそういうお客さんも増えてね、三郎さんが来てからお客さんが増えたの」
その時飲み物が届いた音がしたので話は終わった。配膳が終わった奥さんはマスターを手伝いに下に降りて行った。
三郎さんが来たのはそれから30分ほど経ってからだった。
「すまんすまん、仕事が長引いてな。待たせちゃったな」
三郎さんの仕事は力仕事だそうで町内あちこちでやっているらしい。
改めて三郎さんからが今まで調べたことを教えてもらう。昨日見せてくれたノートの他にも調べた結果のノートが大量にあった。場所や日付、時刻、現象や目撃した人など細かく書いている。すごいなぁ、街のあちこちのそれらしいところはぜんぶ調べてある。それでもこれという決め手になることはわからないそうだ。
例えば、都市伝説もどきの怪しいもの。
しかし、言われた時間帯に何度通っても何もなかったり、あっても単なるどうぶつの仕業だったり物理現象の見間違いだったりだそうだ。
「逆に三郎さんが都市伝説になったりして」
凛の言葉に二人で同調してしまう。
「「それはありそう!」」
三郎さんが照れるように言った。
「実はいつくかあってな」
「「「あるんだ……」」」
「おっさんが一人で暗がりに立ってりゃな。職務質問も何度か受けていつの間にか警察でも顔見知りができてな」
よくまぁこの街にいられるな。
「その後、何人かその手の犯罪者を捕まえてからは何も言われなくなったよ」
「「「そーなのー?」」」
だいたいが三郎さんを見て犯人は逃げ出しそうになるけどそこは元騎士、すぐに捕まえて、警察に引き渡すそうだ。
「それはいいがやはりやりにくて、あまりやれなくなったんだよ」
そうだろうねぇ。




