鈴木という男
月曜日の教室は落ち着かない。週末一緒に遊びに行ったグループはその話をしている。動画の新作の話をしているのもいる。ギリギリで飛び込んで来るヤツもいる。ざわつくみんなから課題を集めるためにクラス委員の鈴木が回って行く。
「あー、うざ」
面倒くさいのかなかなか出さないやつに怒る鈴木。
「ちゃんと出せっ」
鈴木は悪いやつじゃあないんだが堅すぎる。あちこちで文句言われつつ僕達の方に来た。
「氷室姉、ちゃんと課題だせ……」
「へへーん、ちゃんともってきてるよ〜」
ドヤ顔で課題を出す凛を驚いたように見る鈴木。ああ、わかるよ。今までまともに出してなかったからな。
「期末は負けないからな」
小声でつぶやく彼のセリフ。それは僕にしか聞こえなかったのか、凛はすでに日和に話しかけている。僕は鈴木が手に持つ課題の山にもう一冊のせる。
「めずらしいな、おかんがギリギリに出すなんて。……まさか氷室姉、お前おかんのを写したのか?」
「そう思うなら比べてみたら?」
振り向いた凛が挑発する。その挑発に乗った鈴木が机の上に僕と凛の課題を広げ比較している。そこ、僕の机なんだが。
「くっ、姉のはカンペキだ、おかん、おまえここ間違ってる」
余計なお世話だ。それにいい加減おかんはやめて欲しい……が無理だな。先生にまで言われてるから。それにしても凛、お前、わかってるなら昨日のうちに教えてくれよ。
凛は勉強嫌いでものぐさだけど成績は優秀だ、鈴木と学年一位を争っている。そんな凛に負けたのが悔しいのか鈴木は凛に向かってたびたび突っかかる。
ようやく全員の課題を集めてそのまま教卓の上に置いた鈴木。ちらっとこっちを見たけど凛は日和しか見てない。
「ねぇねぇ、今日は三郎さんの所に寄っていくよね」
凛と話していた日和が振り返って誘って来た。今日は図書館が休みだから三郎さんのところというとあの喫茶店だな。
「うん行くよ。ほらあんたも」
僕が黙ってるのにじれた凛がもう決定事項かのように言う。ちょうどその時に先生が教室に入って来て話はそこまでになった。
昼休み、日和と凛は女の子たちと食べている。僕はいつも一緒に食べる連中が用事があるとかで一人でカフェテリアの端の方のテーブルに席を取った。一人で食べていると空いてる隣に誰かが座る。
「おかん、一人か? 珍しいな」
「その呼び方はやめてくれと何度も」
「そりゃ無理だ。お前は日和ちゃんと氷室姉のおかんだからな。俺がやめても女子たちや先生もやめないだろうな」
「そうか……ところで鈴木お前いつうちの姉貴に告白するんだ? まぁ…………」
「なっなっ何を言う。俺は……」
鈴木はしばらく黙ってたが恐る恐る聞いてきた。
「他の連中は……」
「わからない。まぁラブコメでよくあるパターンではあるな」
「それを幼馴染といつまでも幼馴染のままでいるお前が言うか?」
くそっ痛いところを突いてきやがる。2人して同時にため息をついた。
「お互い頑張ろうな。でも本人とかには言うなよ」
鈴木は俺を引き込むつもりか。まぁいいや。釘だけは刺しておこう。
「あれでも大事な姉だからな。まずは僕を倒してからて…………」
「何を言ってやがる」
鈴木は僕の話をけんもほろろに、別な話を始めた。
「そう言えば、他校の男子だけど、塾帰りに行方不明になって翌日見つかったらしいのだが。かなり衰弱してたらしいうえに塾を出たあとの記憶がないんだと。そいつ、女の子みたいに可愛いいと評判の男らしいから、お前も可愛いから気をつけろよ」
「やめてくれ、そう言う話は」
ただでさえ三郎さん絡みでめんどくさいのに。
「そう言えばお前、その手の話嫌いだったな、すまん」
意外と僕のこと見てるのは凛絡みだからかな?
その後は当たり障りのない話をしてから食器を返す。
そこで鈴木は女生徒に声をかけられた。
「なんだ、青木」
「お父さんがお祭りのことでおじさんに伝言」
「全く、自分で伝えればいいのに」
「まっ、まぁね。ほんと迷惑しちゃうわ」
鈴木の友達か? 結構親しげにしてるな。そして僕をみる目がなんか睨むような気がする。
「先に行くな」
鈴木に声を掛けて僕はカフェテリアを出た。




