イケオジの話(2)
日和がどや顔で言う。
「はい、はーい、私、前から三郎さんの首がニセモノだと気がついてましたぁ」
おい、それ言っていいのか?
三郎さんがペンダントを手に取ると首が元に戻った。
「なるほど、日和ちゃんの方が先に気がついたか。魔法のペンダントを使っているのに気がついたのかな」
「それは気が付かなかったなぁ」
日和は残念そうにつぶやいた。
「この世界では俺は魔法が使えないからね、これを使うんだ。ただ、普通の人にはちょっとの間なら魔法のペンダントがなくて首が消えても気が付かないはずなんだ」
「三郎さん、明らかに日本人じゃないのにみんな気にしないのは?」
「ペンダントのおかげだな」
確かに三郎さん外国人のようだが誰も気にしない。ただ歳を取らないことだけ気が付かれたようだ。それに日本人じゃないのに日本語が上手なのもペンダントのお陰なのか?
カウンターに届いた飲み物を配って三郎さんが話をつづけた。
「なんでこうなったのかは、コーヒー飲みながらにしようか。俺はここではない別な世界から来た、というとわかるか?」
みんな頷く。
「俺はあちらではリュカと言って騎士をしていた。マーガレットという魔女の奥さんがいてな」
そのあとは奥さんの惚気を聞かされて……。僕がたまらず話を遮る。
「なんで首がそんなことに?」
「妻が魔法でね」
と三郎さんは手で首を切る仕草をした。
「マーガレットはヤキモチ焼きでね、仕事で女性を助けてお礼されただけなのにいつも怒ってさ。十年前に貴族のお嬢様を助けたら抱きつかれて……。それ見てマーガレットがきれちゃってね、魔法で俺をこっちに飛ばすだけじゃなくて首をどこかにやっちゃってね。それ以来探しているんだけど、なかなか見つからないんだ」
何時も図書館にいたのはこの辺りの言い伝えとか首の行先のヒントを調べていたそうだ。
「首がないと魔法が制限されるから帰れないんだよ。それに誰かに悪さされたら困るしさ。向こうから持ってきた魔道具も期限があってね。何とか首を見せてるんだがそろそろ限界も近そうだし」
「奥さんがヤキモチ焼くのわかるけど首を切るってひどくない? 私、文句言いに行く!」
日和が自分のことのように怒っている。
三郎さんは「まぁまぁ」と日和をなだめて本題に入る。
「それで、首を探すのを手伝ってほしいんだ。もちろんお礼はするよ」
予想通りに厄介な話だ。
「僕ら学生だし魔法も使えないし……」
僕の言葉にかぶせるうように日和が答える。
「はーい、もうすぐ夏休みだし、私、三郎さんを手伝う」
おいおい、即決かよ。
「日和、大丈夫? あんた前にも安請け合いして大変な目にあったよね」
いいぞ凛、もっと言ってやれ。
「今度は絶対大丈夫。私怒ってるの。絶対に首取り戻して奥さんに文句言ってやる。」
こうなったら僕には日和は止められない。凛、ガンバレ……。
「そうね、首はやりすぎね。日和だけだと心配だから私も手伝うね」
僕は凛と日和の顔を見て……あきらめた。
「僕も手伝います」
さて、夏休みは忙しそうだ。そしてその前に期末を何とかしないと。
「二人は夏休みに休めるよう期末をがんばろうね」
「「えっ」」
まさか期末を忘れていた?
僕は頭を抱え、三郎さんはそんな僕らをニコニコと見ていた。




