イケオジの話(1)
日曜は閉館時間が早い。それでも何とか二人の課題は終わった。片づけを終わり図書館を出るとまだ外は明るかった。入り口の正面でおじさんが僕らを待っていた。
「少年、それにそちらのお嬢さん方もちょっと付き合ってもらうかな」
有無を言わせぬその言葉。しかし僕は断る。
「いえ、今日はみんな帰らないと……」
「いいじゃない、面白そうだし。おじさん、どこに行けばいい?」
僕の言葉をさえぎって日和が答えてしまった。
「待てよ、そんなに簡単に」「いいんじゃない?」
僕が止めようとしたら凛が日和に同調する。そうは言っても怪しすぎる。
「でも、知らない人に……」
「大丈夫、悪い人じゃないよ」
小声で日和に言うが聞いてくれない。あぁもう、こうなったら日和はてこでも動かない。
「仕方ない、危なくなったらすぐ逃げるよ」
小声で二人に念を押す。
日和は……すごく上機嫌だ。凛は日和が上機嫌なのでにこにこしている。僕はあきらめてついて行く。
住宅街の中を十分ほど歩いて古めかしい喫茶店に入った。
からんころん、鐘の音とともにコーヒーのよい薫りと穏やかな声が僕らを迎え入れてくれた。
「いらっしゃい、おっ、三郎さんお連れさんか。珍しいね」
「二階は良いかな」
「大丈夫だよ、二階は貸し切りにしとくよ」
狭い階段を登り二階にはいると大きなテーブルと壁際に小さなカウンターが見えた。
三郎さんは慣れたようにカウンターからメニューを取ってきて配ってくれる。
「なんでも頼んでくれ。ここのコーヒーは美味いぞ。あぁ、ケーキもあるからな。勉強した後は甘味がいるだろう」
一通り注文の後、自己紹介を始める。
「俺は三郎、無職だ」
「わ、私は天音日和。天の音、日に和でひより」
いや、少しは警戒心もとうよ、日和。でも日和の人を見る目は確かだ。幼い頃から悪意のある人はなんかそういう色がみえるらしい。
「私は氷室凛、そしてこっちは双子の弟の怜」
凛も気にせず自己紹介する。日和の目を信じているのだろう。
「さて、ここには魔法が掛かってるから外に声はきこえないぞ。あぁ、マスターも承知している」
へっ、のっけから、魔法? 見ると日和が三郎さんのセリフに頷いている。日和は普通の人に見えない物が見えるからわかるのか?
「秘密の話をするときは必須ですよね」
「日和ちゃんだね、よくわかってるね。マスターは信用できる人だけどね、念のためだ」
そう言うと僕ら三人をみまわして真剣な表情になる。
「さっき、図書館で少年、怜君が見たのはまだ二人には言っていないのかな」
「なに、怜君、何があったの?」
日和が興味津々で聞いてくる。僕が答える前に三郎さんが答えてしまった。
「あぁ、俺がペンダントを落しちゃってね。首が消えたんだが。普通の人は気がつかないはずなんだがね」
三郎さんの説明に納得できない凛が口を挟む。
「ペンダントって首と何が関係あるの……ですか」
「凜ちゃんだっけ、もっと楽にして。それでペンダントはこれ。魔法が使えるもの。ちょっと見てて。ほらっ」
三郎さんがテーブルの上にペンダントを置き手を離すと三郎さんの首から上が消えた。
「首が、消えた……」
凛が呆然としている。日和は少し驚いたけどすぐにどや顔で言う。
「はい、はーい、私、前から三郎さんの首がニセモノだと気がついてましたぁ」
おい、それ言っていいのか?




