第四話
筒井家領土を乗っ取った織田信雄は陽光を背に受け、いかにも天下人の器めいた顔をしていた。
「見たか。これが織田家の嫡流の力よ」
城下に並ぶ兵の列を見下ろし、得意満面である。
だが、伝令が血相を変えて駆け込んできた。
「申し上げます!藤堂高虎の部隊が現れましたァ!」
彼の軍は、まるで音を立てぬ機械のように前進していた。
「おやおや、織田信雄ごときが……」
馬上の高虎が薄く笑い、風にたなびく兜の緒を締め直す。
「織田信雄ごときが日の当たる所に出てくるな。我々は織田信孝の方を支援しているんでな」
高虎の指が軽く上がる。
その瞬間、砲声が響いた。轟音とともに城門が爆ぜ、火煙が舞い上がる。
「ま、織田なんてどっちももうオワコンだがな」
高虎の声は冷ややかで、どこか楽しげだった。
「藤堂‥その汚い首、はたき落としてくれるわ!」
信雄は必死に命令を叫ぶ。
だが兵の顔には、すでに迷いがあった。
城壁に煙が立ちこめる中、藤堂軍の鉄砲が一斉に火を吹く。
陽の光に照らされた信雄の鎧は、もはや威光ではなく、
滑稽なほどの虚栄を映していた。
そして高虎はその様子を見下ろしながら、
「この程度で天下人を気取るとはな……」
織田信雄、あっさり筒井の遺領を乗っ取られる‥。




