第一章サージエンス編⑤ ユーリ先生の嗅覚パネェ
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「今はまだヒミツ♡」
https://youtube.com/shorts/ztOAm6DjzNI
嵐は去った。
パイセンたちはメルリを引き連れそれぞれ自室へ。
「さてリリィ。我らもお暇しよう」
「では僕がお見送りしましょう。大したお構いもできませんで…」
何やらお客を送る母ちゃんみたいなことを言いつつ、ユーリが玄関まで二人を送る。
そして静かになった屋内。
「はぁ、やれやれ。ん? どうした?」
戻ってきたユーリが何やら難しい顔をしているが。
「…匂いますね」
「え? あれ? 臭い? 風呂入ってきた方がいいかな? クンカクンカ」
「あなたではなく、あの二人ですよ」
「いやーユーリさんよ、女に臭いとか言ったらクラス中の女から目の敵にされて、何なら落とした消しゴムを拾ってあげただけで泣かれるまであるぜ?」
世にかような悲しい話はいくらでもあるが今は文字通り『住む世界が違う』のだ、あえて触れるまい。
「いえ、そうではなく。あの二人、百合の匂いがします」
「…なんて?」
「白き清純なる芳香、百合の花の匂いです。あの二人の関係…興味深いですね」
百合の花って「そっち」方面の話か。
「僕は…リリアさん×オスカレッテさん、とお見受けしました」
「でもグランディールの方が先輩なんだろ? 今さっきそう言ってたし」
いや、オレは百合カップリングの議論をするつもりはないのだが…
「オスカレッテさんはあれで結構ヘタレですからね。それを利用しての『誘い受け』ですよ。あの女性、体質的にMではなかろうかと。下着の【設定】の話が出ましたが…まぁ内容は察せますが、実際、あなたに付けられた【設定】で内心興奮してますよ」
「マジですか、先生…」
あの赤ら顔はそういうことだったのか…枷をかけたつもりが快感を与えちまってるってことなのか…
「まぁ観察からの僕の推理ですがね。カナートも、もうちょっと他人に興味を持った方がいい。執筆の糧になりますよ?」
「こっちの世界、【フォビドゥン】だっけ、来ちゃったらラノベ書くどころじゃないじゃん」
「はは。それはそうですね」
ピンポーン
「ん? また客? はーい」
〈あの、メルリです〉
メルリがやって来た。
ところで昨日の買い物でメルリの部屋着になるものを買った。
寝間着と兼用ってところだ。旅の荷物は少ない方はいいだろうからな。
まぁユーリの四次元ロッジはあんまりそういうの気にしなくて良さそうだが。
Tシャツにパーカー、それにショートパンツ。
言うまでもないことだがカ(略)
「ふぅぅぅ…おちつきますのでぇ…」
パーカーのフロントファスナーを胸元まで閉めた隙間、すなわち定位置にフルルが収まっている。部屋着でも定位置は作れるのだ。
「メルリ。フルルの病院の件、話が決まって、明日朝に行くことになった」
「はい。フルルちゃんから聞いています。メルリも付き添いで行って…よろしいのですよね?」
「当たり前だ。というか来てもらわないと困る。フルルとて女の子だからな」
「ふふ。はい。分かりました」
「ああ、グランディールが土産になんか持ってきてるぞ。みんなで食うか?」
「あ… はい。ミキミキさんとヒミコさんも呼んで」
「いや、いい」
「え? なぜ?」
「メルリを辱めた罰だ。オレたちだけで食っちまおうぜ!」
「あー!? 悪いんだー! …あはは。そうですね、分かりました。それではお茶の用意、しますね」
「ああ、頼む」
メルリのお茶なら安心して飲める。
菓子屋の箱を開けてみれば
「シュークリーム、だな」
ユーリが作る料理と違い、これは一目見て分かった。何か情報的な違いがあるのか? あるいは…ユーリのアレが特殊なのだろうか?
「お!」「ああ!」「んむぅ!」「むぐぅ」
「「「「おいしいっ!」」」」
「こんなウマイものを土産に持ってくるとは、やるな、グランディールめ」
ふ… …とメルリの食べる手が止まる。
(…何でだろう…ご主人様がオスカレッテさんの話をするたびに胸がチクって…ヤダな…こういう気持ち…)
「これはグランディールとはいえ、礼を言わねばな。なぁメルリ!」
「あ、はい! そうですね!」
(…どうしたらいいの…?)
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ED「この穏やかなぬくもりに」
https://youtube.com/shorts/TfUN7HlPlsI