第二章モルドレン編⑬ カヱデと面会
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「今はまだヒミツ」
https://youtube.com/shorts/ztOAm6DjzNI
その後。
これだけの騒ぎを起こしたんだ、タダで済むワケない。
向こうもこっちも白騎士団モルドレン支部へ連行、事情聴取となった。
あれこれ聞かれたもののコチラは言い掛かりつけられ巻き込まれた被害者の立場だぜ? その辺は汲んでもらえたので無罪放免だ。
アチラがどうなっているのかは知る由もなかったのだがパイセンの希望で向こうの代表と1対1の面会が許可された。キノコが逃げちまってるから、相手は多分あの委員長っぽい女だと思うが。
そんなわけで、オレたちはパイセン待ちの待機中ってとこだ。
◆
白騎士団モルドレン支部の拘置所。
その中にある面会室に、ガラスを挟んでカヱデとミキ。
ただ一つあるドアの横には、警護のためにオスカレッテが立ち、二人の様子を見ていた。
「迷惑、掛けたわね…」
「まぁねー。そっちはどうなん?」
「ゴリ男君とモヤシ君は落ち着いてるけど、シャルは…ボロボロね、身も心も。裏切られたショックで…ただならぬ仲、だったし…」
「そんなの、せいぜい初めてを奪ってくれた男に騙された、くらいなもんよー」
「随分手厳しいのね。あの子、まだ小さいのに」
「あー、そりゃシャルにも騙されてるわ。カヱデって、享年いくつ?」
「18だった」
「あら、あたしとあんま変わんないんだ。あたし19だもん」
「へぇ。そうなんだ」
「シャルはああ見えて25よ?」
「ええっ? 確か15って」
「言われれば信じるわよね、ちっこいし。昔ならクリスマスももう終わりって焦るようなお年頃よ。そんなんで年下の男の子に処女奪ってもらえたって、浮かれてたってなもんね」
「そう…だったんだ…」
「まぁ女のサバ読みなんか可愛いもんよ。シャルはどれだけ大物のサバなんだかって感じだけど。で、ハルキは?」
「分からない。騒ぎが大きくなった時には、すでに…」
「アイツ、また逃げやがったかー」
「また? ねぇ、どうしてシャルやハルキのこと、詳しいの?」
「あれっ? 聞いてないの? あの二人、昔、あたしんとこにいたのよ」
「そうなの? 知らなかった…」
「まぁ言わんかもなー。先にシャルがいて、後からハルキが入ったんだけど、あたしやユー君とソリが合わなくてねー。で、シャルを連れていつの間にかドロンよ」
「その頃から二人はその、仲が良かったのかしら?」
「さぁねぇ? あのヤロウ、あたしも喰うつもりでいたからねぇ。カヱデはその辺大丈夫だったん?」
「その辺…うん…好きでもない人に抱かれるのとかはやっぱり…」
「そんなんでどうしてハルキなんかと一緒に?」
「強い力に憧れた、といったところかしら。この世界、一人で生きていくのは難しい。ハルキの魔法は強かった。多少性格に難があっても、それでもちょっと我慢すれば身の安全は確保できたから。みんな…この世界ですら生き辛くて、一緒にいるの。シャルも。モヤシ君も…ゴリ男君に至ってはコミュニケーションすらままならないもの」
「…ゴリ男とかモヤシとか…ちゃんとした名前ってないの? おおかた、ハルキが付けたんでしょうけど」
「ええ。モヤシ君は沖田広海。ゴリ男君は分からない。彼、【設定】で力を求めすぎて知性を失ってしまった、って」
「モヤシ…君っていうけど、男?」
「そうよ。かわいいでしょ? そのせいかハルキに女装しろって命令されて。でも本人もまんざらじゃないみたいだから。私も一緒にお洋服選んだりしてね」
「倒錯してんなー。で、ゴリ男は? まともにしゃべれないんでしょ?」
「私は能力持ちなの。【魂の観察者】。【人格設定】の雰囲気とか分かって、それで。細かいところまでは無理でも、日常生活くらいなら」
「能力って、白騎士団にいたの? あなた」
「ちょっとだけ、ね」
「そう」
「あなたのとこのカナート君、だっけ。彼、とても強いのね。お話し、してみたいな」
「それはダメ」
「…なぜ?」
「カヱデ。あなたはまだ自分で気付いてないの? あなた、強そうな男を見れば、すぐホイホイ靡いて従いていく。そのくせ、力でねじ伏せられて、自分を悲劇のヒロインに仕立てたがる。どう考えたってすぐ暴力を振うクズ男なのに離れられない、そういうのと同じ。そんなクズ男好きのあなたを、カナートには会わせられない。彼の強さは暴力的な力なんかじゃないから。ヒエロフであなたたちと会った時、あたしたち、カナートとどれだけの時間を過ごしてきたと思う?」
「…」
「あの日が初対面よ」
「え…?」
「ユー君の紹介でね。あの日あの場所でね、初めて会ったの。彼と。メルリちゃんにも。メルリちゃんにちょっかい出したら、ナイフ突き付けられちゃったわ、彼に。ホントにね、大事にしてるの、メルリちゃんのこと。でも彼女だけじゃない。本人は否定するかもしれないけど、大事にしているのよ、仲間を。それが彼の、カナート=オヌマーの、本質的な強さ。剣がどうとかは、関係ない」
「…そう…」
「あたしはね、あなたのことが好きよ」
「え?」
「好きって言っても百合的なアレとかじゃないけど。キメラが暴れた時、ハルキがトンズラしてから、あなたは仲間をまとめて、仲間を守った。街を守ろうとした。あのクズ男にゃできない芸当よ。だから、あなたはやり直せる。まだ。あなたには、なりたい自分の姿ってないの? この世界、自分の姿は自分で決められるんだから、なりたい自分になればいいんじゃないかしら。今の状況に甘んじて受け入れてなんて、必要は無いんじゃない?」
「…」
「あなたが素敵な女性になったなら、あたしはあなたと友達になりたい。お茶でもしながら、こんなシケたつまらない話じゃなくって、もっと楽しい、この世界に転生してきて良かったなって思えるような話をしたい。カヱデならできると思う。成れると思う。でも、それまでは」
ガタンと音を立ててミキは立ち上がった。
「顔も見たくないわ」
「…」
「行きましょう、オスカレッテさん」
「はい」
「…ありがとう…ミキ…さん…」
俯いたまま、カヱデはポツリと呟いた。
「どういたしまして」
ミキは振り返らなかった。
カチャン
取り調べ室のドアが、小さな音を立て、閉じた。
◆
「随分と手厳しいですね」
カヱデたちが拘留される拘置所はモルドレン支部から離れたところにあるため、少しの間、歩く必要がある。
その帰り道、先ほどの様子を見ていたオスカレッテが、ミキに問いかけた。
「そーかなー? 自分のことを自分で決めらんないようヤツじゃ、男だろうと女だろうと話したってつまらんぜー? そんだけよー」
「カナートのことを随分と高く買っておいでですが」
「彼、カワイイし、面白いっしょ?」
「カワイイ…?」
「言うこと聞かないしさー。元気の有り余った弟みたいだよー」
「…それは先ほどのカヱデに語ったことと何か合わない気がしますが」
「そーかーい? でもあの人、曲がったことが嫌いでしょー?」
「ああ、それは分かります」
「でしょー? だから一緒に…て…あれ、何?」
◆
ED「この穏やかなぬくもりに」
https://youtube.com/shorts/TfUN7HlPlsI




