第二章モルドレン編④ 有識者会議
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「今はまだヒミツ」
https://youtube.com/shorts/ztOAm6DjzNI
「…えー…それでは第1回メルリさん有識者会議を始めたいと思います…」
「「「「ぉーぅ…」」」」
モルドレン支部の会議室の一室。
ミキミキの呼びかけでメルリ、カナート、フルルを除く5名が集められた。
「司会進行は僕、ユーリ=カモメが行います…が…ミキ先輩、第1回って言ってますけど、これって今後もやるつもりなんですか?」
「何事も無ければこれで終わり、か、メルリちゃんの可愛さについて熱く語る集まりにしたいわー…」
集まった理由が理由だけに一同みなテンションが低い。
「メルリさんの方は現在フルルさんに張り込んでもらっています。何かあれば報告が入ると思いますが」
「カナートくんは?」
「さっき道場の隅っこでダンゴ虫になってるのを見かけたっす」
「ダンゴ…では本題に。昼前にあった、メルリさんの…何て呼べばいいですかね、メルリ事変、とでも呼びましょうか、まずは当事者の証言ということで、最初に剣を交えたリリアさん」
「ウチがやった時は別段…剣は握るのも初めて、って聞いてたんすけど、初心者にしては上手いなぁ、と。ホントに初めてなんすか?」
「僕の知る限りでは。剣を持った同士というのも、サージエンスでカナートやヒミコさんがオスカレッテさんに稽古を付けてもらったのを見たのが初めてだと思われます」
「それであんなに? スゴ…」
「次にあたったオスカレッテさんはいかがでしょう?」
「メルリ殿の太刀筋、あれはカナートのものそのものだ」
「分かるんだー、そんなのー」
「ああ。ワタシは後進の指導もしているのでな、そのくらいは。なのでメルリ殿はカナートを見ていて学んだ、というのは間違いない」
「それであんなに? ってわたし同じこと言っちゃった…」
「問題はその後だ。太刀筋そのものは変わらないが、とにかく速さが違う。それに確実に急所を狙う正確さも。何より…『気』が違った。端的に言えば、それは『殺気』…だった」
「殺…気…」
「正直、メルリちゃんがそんな、って思わなくもないんだけどー」
「ワタシも信じがたい。だがもう一つ…目、だ」
「目?」
「メルリ殿は青碧の、綺麗な瞳をしていたと記憶しているのだが」
「赤く…なかったですか?」
「その通りだ、ユーリ殿。知っているのか?」
「…それを見たことがあるのは…僕だけかも知れません。サージエンスの駅前広場でオラシオン=ハウウェルたちの一味に捉えられ、解放された時、彼女は、メルリさんはいつものメルリさんでは無かった。僕はそれを『裏メルリ』と密かに呼んでいるのですが」
「『裏メルリ』って黒いロングのメイド服っすか?」
「ええ、そうです」
「ウチ、それ見たっす。民生部にも動員かかって、それで。だからホテルのエントランスで会った時、あれ? 同じ人? って不思議に思ったんすけど、みんなメルリちゃんって呼んでるから気のせいかなー? ウチの見間違いだったかなー? って思ったっす」
「そんなことが現実にあるのかなぁ?」
「現実も何も、我々がいるこの【フォビドゥン】がそもそもファンタジー世界ですから」
「そっか。魔法まであるもんね…目の前にウサギもいるし」
「で、その、『裏メルリ』って何者なのー?」
「僕も定かには。ただ、可能性として、メルリさんは二人いるのではないかと考えています」
「でも一人、だよね?」
「見た目は。しかしフルルさんのようなケースもありますから」
「ナハルル様かー」
「ええ。カナートは、こちらに来る直前はラノベの設定を考えていたそうです。その設定がこちらの【設定】、すなわち【生前設定】になったのでは? と考えられます」
「その設定に『裏メルリ』があった…?」
「いえ、無いでしょう。名前と種族やジョブ程度だったそうですから」
「え? それじゃ逆に今のメルリちゃんって一体…」
「そうなんです。そもそも普段我々が接しているメルリさんの方が、むしろ不可思議な存在なのです」
「うーん…」
「ねぇ、メルリちゃんが何者か話してても意味無くなーい? それよっかこれからどうするのか、差し当たって今どうするか、考えた方が良くなーい?」
「それはそうですが…具体的に…どうします?」
「『裏メルリ』が何者かは置いとくとして、なんでそんなのが出て来ちゃったのかって、やっぱストレスじゃないかねー?」
「ストレス、かぁ。ありえるなぁ」
「ここ来た時も色々あったし、サージエンスでもフルルちゃんのこととか、色々あったじゃーん?」
「それならストレスを取り除いてあげれば、ってことっすかねぇ?」
「メルリちゃんのストレス解消って…カナートくんのお世話以外にあるのかな?」
「…ないわー」
「カナっちの側にいるときが一番幸せそうだもんねー」
「え? そしたらお洋服買いに誘ったりしたのは…」
「良くなかったのかもしれないっす」
「えー? じゃぁわたしたちが原因作っちゃったのぉ?」
「そうとは言い切れないけどー。とりあえずあたしたちはメルリちゃんに構いすぎないようにするとして、逆に二人だけの時間を作ってあげるというのはー?」
「それか」
「それだなー」
「それっすね」
「それ…とは?」
「ウッシッシ。よーし、それでは『ドキッ♡ カナっちとメルリちゃんが急接近⁈ なんなら【フォビドゥン】の人口が増えちゃっても構わなくてよ?』作戦を発動するー! 全員持ち場につけー!」
「「おおうッ!」」
「…構いすぎないんじゃなかったのか…?」
「でも…もう誰も止められないですよ…経験上」
◆
ED「この穏やかなぬくもりに」
https://youtube.com/shorts/TfUN7HlPlsI




