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逆ハーレム狙いの貴族令嬢に毒入り飲み物をすすめられて飲むふりをしたら好意を隠さない王子が相手を追い詰めて助けてくれた

作者: リーシャ

もしかしたら、本当に素敵な未来が待っているのかもしれない。


「ちょっと、あんた!」


突然、背後から鋭い声が飛んできた。


「えっ」


振り返ると、豪華なドレスを身につけた、いかにもお嬢様といった雰囲気の女性。


あっという間にこちらへ。


取り巻きらしき数人の男たちを引き連れて立っていた。


「わ、私?」


思わず、間の抜けた声が出た。


一体、何の騒ぎだろう?


「そうよ、あんたよ!その辺の平民風情が、王子たちに近づくんじゃないわよ!」


どうやら、このお嬢様は己をライバル視しているらしい。


っていうか、王子って?


なにもしてない。


ただ、街をぶらぶらしてただけなんだけど。


「えっと……人違いじゃ……」


そう言いかけた、こちらの言葉を遮って、お嬢様はさらにヒートアップする。


「とぼけないで!あんたの目当てはバレバレなのよ!逆ハーレムを築こうなんて、百年早いわ!いい!?」


逆ハーレム?


なんだか漫画みたいな展開になってきたぞ。


でも、そんなこと微塵も考えてないんだけどなぁ。


そもそもの話。


「あの、別に私は……」


「言い訳無用よ!いいわ、覚えておきなさい!あんたみたいな小娘、この私が徹底的に排除してやるから!ぶっ潰すんだから!」


捨て台詞を残して、お嬢様は男たちを引き連れて去っていった。


「えー」


ふむ、どうやら、相手にとんでもない勘違いをされているらしい。


そして、なんだか面白くなってきた。


(逆ハーレム、ねぇ……)


心の中でニヤリと笑った。


ほうほうほう。


向こうがその気なら、こちらも受けて立ってやろうじゃないか。


陥れるつもりなら、逆に陥れてやる。


現代日本のドラマで培った、ドロドロした人間関係の知識を、ここで活かしてやろうじゃないか。


そう決意した。


計画はすでに、組み立てられ始めている。


お嬢様の去っていった方向とは逆に、優雅な足取りで歩き出した。


向こうは優雅ではなかったなぁ。


さて、どんな罠を仕掛けてくるのかな?


ちょっと楽しみになってきた。




お嬢様が仕掛けてきたのは、古典的な罠。


そのお嬢様が用意した招待状で入った夜のパーティーで、カラリィにだけ毒入りの飲み物を勧めてきたのだ。


うわ、と引く。


「これ、飲んでみて!」


もっとも、そんな露骨な罠に引っかかるほど、こっちもお人好しじゃない。


笑顔笑顔。


「まあ、素敵な飲み物!ありがとうございます、お嬢様」


満面の笑みで受け取ったグラスを、一口飲むふりをして、さりげなくテーブルの陰に置く。


スッと。


お嬢様は、私の行動を満足そうに見守っている。


肝心なところで詰めが甘い。


ふふん、してやったり、って顔をしている。


パーティーが進み。


頃合いを見て、わざとらしく体調が悪そうな素振りを見せた。


「あら、どうなさいました?」


お嬢様が、これ見よがしな心配そうな声をかけてくる。


「すみません……なんだか急に、気持ちが悪くなって……」


青ざめた顔でうずくまると、周りの人々が心配そうな視線を向けてくる。


もちろん、演技だ。。


「まあ、大変!誰か、お医者様を!」


お嬢様が騒ぎ立てる中、弱々しい声で訴えかけた。


「あの……さっき、お嬢様が勧めてくださった飲み物をいただいてから……気分が、悪くて」


その言葉に、会場の空気が一瞬で凍り付いた。


(ふふ!)


皆の視線が、一斉にお嬢様に突き刺さる。


「な、なんですって!わ、私はただ、親切で……!」


お嬢様は慌てて弁解するけれど、もう遅い。


遠くにいる人達も、耳ざとく騒ぎを把握しようと動く。


自身の言葉を聞いた王子たちが、鋭い眼光でお嬢様を射抜いている。


「カラリィさん、本当ですか?」


真剣な表情で尋ねてきたのは、第一王子のキリアム。


「はい……少し苦くて、変な味がしたんです」


潤んだ瞳で訴えれば、どんな人も信じてくれるだろう。


死にかけた顔をしているし。


特に、こちらに好意を抱いているらしいキリアムは、完全に信じ切っている。


「すぐに調べろ!その飲み物を!」


キリアムの号令の下、侍従たちが動き出す。


ほどなくして、飲み物から微量の毒物が検出されたという報告が上がった。


会場は騒然となり、お嬢様は真っ青な顔で震えている。


皆も他人事ではなくなった。


「お、お許しください、王子様!わ、私は……!」


必死に弁解しようとするお嬢様だけど、キリアムの冷たい視線がそれを許さない。


本気で毒を持ってしまっている。


「カラリィさんに毒を盛ろうとしたとは、許しがたい行為だ。王家の威信を傷つけた罪は重い」


逃げ道はなくなる。


こうして、逆ハーレムを狙ったお嬢様は、自らの企みによって失脚することになった。


そのハーレム達もチリチリに。


もちろん、直接手を下していないからね。


ただ、相手の悪意を利用しただけ。


なぁんにも、してない。


事件後、キリアム様は心配そうにカラリィのそばに寄り添い、優しい言葉をかけてくれた。


予想外にも甲斐甲斐しい周り。


他の王子たちも、私を気遣う言葉をかけてくれる。


あれ?


これって、もしかして……望んでいなかった方向に、逆ハーレム展開が進んでる?


まあ、いいか。


これも、異世界生活の面白いところなのかもしれない。



逆ハーレム未遂お嬢様の一件以来、王子たちのカラリィに対する態度は、明らかに変わった。


ちょっとしつこいかも。


キリアムは、事あるごとにこちらの安否を気遣い、優しい眼差しを向けてくる。


第二王子のルシウスは、知的な会話を楽しもうと、様々な書物を私に勧めてくれるようになった。


困ったところもある。


(王子三人、私に来すぎ!)


末っ子のカイル王子は、無邪気な笑顔で花束をプレゼントしてくれる。


(あれれ?これって、完全に逆ハーレムルートに入っちゃってる……?)


別に、王子たちに特別な感情を抱いているわけじゃない。


普通。


ただ、親切にされたら嬉しいし、一緒にいる時間は楽しいとは思っているけれど。


人として、礼儀を持って対応してるだけ。


恋愛感情とは、ちょっと違う気がするんだよね。


ある日、キリアムが真剣な面持ちで話しかけてきた。


「カラリィ、君に感謝している。あの時、君が真実を話してくれなければ、あの女の悪事を暴くことはできなかっただろう」


なんだろう。


「いえ、私はただ、身を守ろうとしただけですから」


意味深だ。


控えめに答えた。


「それでもだ。君の勇気と賢明さには、感服している。もしよければ、これからも私のそばにいて、意見を聞かせてくれないだろうか?」


キリアムの言葉は、まるで求婚のようにも聞こえる。


ちょっとドキドキしてしまうけど、ここは冷静に対応しなくては。


乙女ゲームじゃあるまいし。


「わ、私でよろしければ……」


そう答えるのが精一杯。


異世界に来て、王太子に気に入られるなんて、予想もしていなかった展開だ。


選択肢は合っていない?


それからというもの、王宮に招かれる機会が増え、王子たちと過ごす時間も長くなった。


ルシウス様とは、興味深い歴史の話で盛り上がり、カイル王子とは、庭園で一緒に遊んだりもする。


王妃には好かれ。


「あなた、知識が凄いんだもの」


王にも、同じように意見を聞かれる。


「そんな秘密をいいんですか?」


「相談役になってほしいくらいだ」


戸惑う。


彼らの身分や立場を考えると、どうしても遠慮してしまう自分がいる。


現代の感覚からすると、王族との恋愛なんて、なんだか現実離れしているように感じるし。


あり得ない。


王妃からは三人から好きに選べばいい、なんて冗談を毎回言われて。


世界が違う。


でも、彼らは皆、分け隔てなくカラリィに接してくれる。


生きている人間だ。


飾らない言葉で話しかけてくれるし、こっちの意見にも真剣に耳を傾けてくれる。


えらぶらないし。


そんな彼らといると、身分差なんてどうでもよくなってくるから不思議だ。


(まあ、いっか。流れに身を任せてみるのも、悪くないかもしれない)


広い庭園を吹き抜ける風を感じながら、そう思った。

私も囲い役に参加するという方も⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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