何も知らない間柄
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
時折香る、職場先の匂いが好きです。
職場らしからぬ、焼香の匂い。
家が隣同士だから、彼奴の事はよく知っている。昔から全くと言っていいほど表情の変化がない奴だった。人に興味が無いのか、相手のことを聞くこともなかった。というより無口だった。日々を事務的に過ごす生き方は、まるで機械のようだった。
幼少期、蛇やらザリガニやらを目の前でぶら下げた事がある。けれどもやっぱり表情筋一つ変えず、『そんなに手荒く扱わないの』とだけ言って、生き物を奪われた。ベランダからベランダへと飛び移った時も、『怪我したら全て失うのだから、玄関から入るように』とだけ言って俺を家に帰らせた。昔からそんな奴だった。
「あの子の好きな物とか知っている? この間助けて貰ったから、お礼がしたくて」
「はぁ? 菓子とか好きなんじゃねーの?」
何時も彼奴は何を食べていたか。いや、一緒に居るときは何も食べてないな。出された菓子に手を付ける事はしなかったし。
何かしら情報があるはずだ。髪を掻き回して考えるも、何も浮かばない。一緒にいるといは何時もぼんやりしていて、何かをしていた訳じゃない。本当に何もしていない。
「何も知らないの? 何時も構ってちゃん発動して、ちょっかいかけてるのに」
「うっせーよ。そんなに知りたきゃ本人に聞けよ」
べろっと舌を出して、その場を去る。いたたまれなかったなんて、認めたくない。何も知らないなんて認めたくない。
ノックもせずに女の部屋に入ると、彼奴は何時ものようにぼんやりと空を見詰めていた。だらりと伸ばされた手足は人形のようだ。俺の姿に気が付くと、視線だけを寄越して立ち上がり、何も言わずに部屋を出る。戻ってくる時には、菓子袋がいくつかあった。
「はい」
自分が手を付ける事はせず、俺に押し付けると、その様子をじっと観察する。袋を破って、ちみちみ食べながら、問い掛ける。
「なぁ、俺達は所謂『幼馴染』って奴だけど、お前の好きな物ってなんなんだよ」
「え……ゲームとか、絵描きとか、散歩とかだけど」
それは知ってる。特にゲームと散歩。絵描きは初めて知った。
女は何を突発的にと言うような気配を漂わせて、少し後ずさった。顔も体も引いている。
「好きな食べ物は?」
「食にはあんまり。口に物を入れると、周期的に戻しそうになる事があるから、人前では控えてる。だから匂いのが好きかな。今日散歩していたら、好みの匂いに当たった。寝そうになった」
今更になってその事を知った。知っていたら、菓子の差し入れは控えたのに。……俺は放課後、部屋を訪れて、何をするまでもなく過ごしただけだった。本当に何も知らなかった。
「……俺の匂いは?」
「好き。一緒に居るとしがみついて寝たくなる」
そう言って、静かに笑った。今まで見たこともない程に、綺麗な笑顔だった。
今日は職場先でずっといい匂いがしたので、幸せです。
ずっとこうである事を祈ります。
ただ寝そうになるので、そこは忍耐ですね。
優しいから無口なんだと思います。
人知れず傷付ける言葉なんて幾らでもありますから。
『言う必要がないなら喋るな』をベースとして無口です。
心では相手の思考を奪う程に饒舌ですよ。
口では分からない彼女の優しさを所々に散らして起きました。
ある日突然、口に入れた物を戻しそうになるので、人前で物は食べたくないタイプ。
味が悪いという訳ではないんです。
ただその時の気付かぬうちの体調。
そんな事ありませんかね? ないですか。
次は添い寝ネタが書きたいです。




