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学力テスト

「ねぇルーター、頼んでおいたことの調べはついたの?」


マルティナが学園内のテラスで優雅にお茶を飲みながらルーターに訊いた。


「はい。しかし最初にご報告したように、シヴァル=アデールがアデール商会の子息である事以外、新たな情報は出てきませんでした」


「彼に兄弟はいるのかしら?」


「……はい弟と妹がいるとか」


「嫡男であったしても弟が商会を継げばいいのよね。ふふ、魔力量といい器量といい、申し分ないわ」


「しかし彼は平民ですし、本人にその気がないのでは……」


「あら、気持ちなんて簡単に変わるわよ。留学の日程が終わる頃にはきっとわたくしに夢中になっているわ。でもそうね、恋は駆け引きよね。彼に少しわたくし達の仲を見せつけて、ヤキモキさせた方がいいかもしれないわね」


「………」


「それに身分だって簡単に変わるわよ。どこかの高位貴族の養子にすればいいのだから。もちろんルーター、あなたもね。それよりもうすぐ試験よ。例のアレ、よろしく頼むわね?」


「はい。お任せください」



ルーターがそう答えるとマルティナは満足そうにまたお茶を口に含んだ。





◇◇◇◇◇




どういうわけかキャスリンとエレナがマルティナ王女に嫌がらせをしているという噂は、不思議とすぐに消えてしまった。


人の噂も七十五日というけれど、これでは人の噂も二~三日…である。


「どうしてあんな噂が流れたのかわからないけど、すぐに無くなってくれて良かったぁ~!やっぱりアレね、王女殿下に嫌がらせをしているという仲間にエレナがいてくれたおかげね!」


キャスリンのその言葉に、エレナはそれまで目を落としていたノートから顔を上げて訊いてきた。


「……どうしてそう思ったの?」


「だってエレナが優しくて高潔な人だってことはみんな知っているもの。だから噂を信じる人が少なかったのよ。悪役令嬢顔の私だけだったらやっぱりあの顔ならやりかねない、とみんなまだ噂を信じて話していると思うのよね」


とは言ったものの、近頃不思議に思っている事もある。

キャスリンを悪く言う噂は相変わらずどこからか突然に湧くのだが、それも不思議とあまり広がる事なく立ち消えてゆくのだ。

まったくもって不思議な現象である。


───まぁラッキーだけれどもね


そんな事を考えていると、エレナがさりげなくキャスリンを諭す。


「キャスリンは自分の顔にコンプレックスを持ち過ぎよ。貴女の顔は怖いのではなく、目鼻立ちがくっきりしている美人顔なの。そういう顔は得てしてキツく見られがちなだけ。そしてそれをやっかんで悪く言う人達の意見なんて信じてはダメ」


「エレナ……優しいっ……」


エレナの言葉にキャスリンは感激して思わず泣きそうになる。


「ふふ、ほら、そんなことを気にしている場合ではないわよ?試験は明日からなんだから」


「そうだった!こうしてはいられないわっ……初っ端から苦手な魔法力学なんだから集中しなくちゃ!」


キャスリンはそう言って、教科書を開いて問題をノートに写しはじめた。


魔法学校は明日から学力試験に入る。

前回の試験ではキャスリンは善戦健闘の末、学年十五位となかなかの好成績を叩き出した。


ちなみにエレナは二位で、学年トップはシヴァルである。

(一学年の総人数約三百名)


しかし入学試験では首席を取ったルーターも留学を経て初めてこの試験から参戦するのだ。


これはシヴァルもうかうかしていられないのでは?とエレナと話をしていた。

でも本当はこっそり心の中で、ルーター頑張れ!と小さな声でエールを送っていたキャスリンであった。


───私も頑張らないと!ルーターに少しでも良いところを見てもらいたいもの!


と、意気込んで挑んだ学力試験もなんとか無事に終え、試験結果が出た後に貼り出された成績順位表を見てキャスリンは驚愕した。



「よ、妖精王女は愛らしいだけでなく頭もいいのねっ……!」


と、膝から崩れ落ちそうになるもキャスリンはなんとか根性でその場に踏みとどまった。



なんと今回の試験、堂々の学年トップはマルティナ王女だったのである。

二位はルーターでシヴァルは三位。エレナは四位であった。

上から押し下げられて、キャスリンは十七位という結果に終わった。


その貼り出された結果を見て、シヴァルは不敵な笑みを浮かべる。


「こんな事して意味があるのかねぇ……まぁハリボテで飾り立てるためには必要なのか」



彼はそう意味深な事を言って、やれやれと肩を竦めた。






───────────────────────






このあと20時に一話完結の読み切りを投稿します。


タイトルは

『婚約者が肉食系女子にロックオンされています』です!


よろしくお願いします!








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