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もしかして!?

悪役顔のせいで留学中の王女を怖がらせていると知ったキャスリン。


王女のお世話役であるルーターに迷惑をかけないために極力姿を晒さないように心掛けた。


幸い、入学して直ぐにルーターは東和へ行ってしまったのでキャスリンとルーターがお付き合いしている事を知る者は少ない。

少ないというかクラスメイトで友人のエレナとその婚約者のシヴァルしかいないはずだ。

(エレナはマルティナ王女は知っているのではないかと言うが)


だからキャスリンがルーターとマルティナ王女から距離をとったとしても誰も不審に思わないはずだ、が、そんなキャスリンの心遣いを無にするが如くルーターはキャスリンに近づいてくる。


「キャス、今朝は寮まで迎えに行ったのに何故先に

登校してたんだ?」


成績優秀者ばかりが集められた特進クラスのルーターがわざわざ普通クラスのキャスリンを探していたらしく、移動教室の廊下で捕まってそう言われた。


「だ、だって……ルーターは王女殿下のお世話で疲れているでしょう?男子寮からわざわざ来て貰うのが申し訳なくて……」


「忙しくしているからこそ、朝の登校時間がゆっくり話せる時間だとそう思わないか?」


「え、で、でも……」


「キャス、俺が留学から戻ってから変だぞ?とにかく少し話がしたいんだ」


「だ、だって……でも……」


なんて返答しようか言葉に詰まったその時、

鈴を転がしたような可愛らしい声がルーターの名を呼んだ。


「ルーター、どこに行っていたの?探したのよ?」


「……!」


ルーターの背後からぴょこっと顔を出した可愛らしい女子生徒。

まるで花の妖精が魔法学校に舞い降りたかと見紛(みまご)うばかりの愛らしさ。

彼女こそがクルシオ王国第七王女、マルティナ王女殿下だ。


「……王女殿下」


ルーターが突然現れた王女の方を見る。


「ひどいわルーター、わたくしを一人にして。知らない方ばかりの学園で貴方だけが頼りだというのに」


砂糖菓子のようにふんわりとした可愛らしい笑顔で王女はルーターに甘える。


「少し用事があるので席を外すと申し上げたでしょう。それに、ご友人もたくさん出来たではありませんか」


ルーターが冷静にそう返すとマルティナは少し拗ねた様子で頬を膨らませる。

そんな姿もじつに愛らしい王女だ。


「それでも、やっぱりわたくしの側には貴方がいてくれないとイヤなの」



──はぅあっ……な、なんて可愛らしい方!お顔なんて小さくてお人形みたい!わ、私とは何もかもが真逆だわっ……!


初めて間近に見るマルティナの愛らしさに、キャスリンは驚愕した。

それになんて甘え上手でその仕草が似合う事か。

庇護欲を掻き立てられるとはこのような事をいうのだろうとキャスリンは思った。


……それはきっとルーターも……


ちらりとルーターの様子を伺うキャスリン。

そんなキャスリンの存在にマルティナはようやく気付いたように声を発した。


「きゃっ……あ、あなたっ……」


マルティナはキャスリンを見て急に怯えたようにルーターに縋り付く。


「え?……あ、」


一瞬なぜ急に王女が怯えたのかわからなかったキャスリンだが、

以前自分が睨んでいると王女が怖がっていたと聞いたのを思い出した。

そして慌てて両手で顔を隠す。


「ご、ごめんなさいっ!睨んでませんし、怖がらせるつもりもありませんっ!」


ルーターは縋り付くマルティナの手をそっと離し、彼女にこう告げた。


「王女殿下、すぐに戻りますから先に教室に……「もうルーターったら、マルティナと呼んでと何度言ったらわかるの?それにわたくし一人で戻れと言うの?わたくしは王女よ?昔から一人でなんて歩いたことはないわ」


ルーターの言葉を遮ってそう言うマルティナに、ルーターが困ったように返す。


「……今、一人でここまで来られたではありませんか」


「イヤよイヤ。ルーターが一緒じゃないと一歩も歩けないわ」


子犬のように無邪気で愛らしいわがままを言い、再びぷっくりと頬を膨らませるマルティナと彼女を困ったように見返すルーター。


それを側で顔を隠しながら指の隙間から見ている自分が酷く情けなくなって、キャスリンは慌てて二人に告げる。


「わ、私は移動教室の途中なのでこれで失礼しますっ!王女殿下っ、こ、怖い思いをさせてごめんなさいっ!」


そう言ってキャスリンは顔を隠したまま走り出した。


「キャスっ?待てっ……!」


ルーターの声が追いかけてきたが、キャスリンは構わずそのまま走り去った。

(廊下を走ってはいけません)


やがて到着した教室で、自分の席に座り机に突っ伏す。


マルティナ王女は……とても可愛らしい方だった。


美少女の要素を全て鍋に放りこんで煮詰めて凝縮させたような完璧な美少女だ。


ルーターとも本当にお似合いで……二人の方がよほどお付き合いしている男女のようだった。


考えてみればキャスリンの方から告白をして、それをルーターに受け入れて貰って始まった交際なのだが……。


しかもそれからすぐにルーターは留学して、付き合う事になったといってもまだ何も始まってはいない。

キャスリンはふと思った。


───あ、あれ?私とルーターってホントに付き合う事になったんだっけ?

なんだか私の妄想だったような気がしてきた……。

いやいくらなんでもそんな……でも、もしルーターが私の告白を受けた事を後悔していたら?



「はっ!?も、もしかしてアレは無かった事にしてくれと言うつもりだったっ!?」


キャスリンは思わず立ち上がってそう叫んでいた。


「さっき話がしたいって言っていたのはその事……?」



───留学先で妖精のような王女と出会い、世の中にはこんなに可愛い人もいたことを知って、早まった事をしたと後悔してるっ!?


やはり交際は出来ないと、悪役顔のキャスリンよりも妖精の方がいいと言うつもりだったのでは……?


そんな事はないと思いたいが先程の二人の様子を思い出し、不安な気持ちばかりが広がってゆく。



「きっとそうよ!私だって側にいるのは怖い顔じゃなくて可愛らしい人がいいもの!うわーんっどうしようっ!絶対に別れてくれって言われるんだわーーっ」



テンパリ過ぎて教室で嘆くキャスリン。

遅れてやって来たエレナに止められるまで、自暴自棄な自問自答を繰り返していたキャスリンであった。



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