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天使の推しは悪役令嬢  作者: Nica Ido
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1話

はじめまして! ニカ イドです! はじめて小説を書きました! そしてピッコマノベルズ大賞 第1シーズンに応募したのですが、見事落選してしまいました……


このままさようならするのは……と思い、投稿してみました。


ほとんど小説も読んだことのない私が書いた小説って、どうなんだろう?


しかし! ピッコマノベルズ大賞 第2シーズンも絶賛チャレンジ中……がんばってみます!

 心地良い目覚めだった。とても身体が軽く感じた。


 起き上がると、周りには美しい花々が咲き乱れている。大きな樹木の陰にふかふかのクッションがいくつも置かれ、そこでニナは眠っていた。


「目が覚めましたか?」


 声がしたので、何気に視線を向けた。


 そこには超絶イケメンが座り、ニナへ優しく話しかけている。


「良かった……可愛いニナ……あまり時間がないのですが、寝ている姿がまた可愛くて起こせずにいました……いやいや本当に可愛いですねニナ! あー可愛い!」


(えっ? この方、驚くほど理想のイケメン……なのに、何だか興奮してる感じがちょっと怖っ!)


 微笑むイケメンから目が離せず、しばらく思考停止して固まっていた。


(ちょっと待って……ここはどこ? なぜ私は寝ていたの? えっと……落ち着いて……とにかく、邸宅から迎えの従者を呼ばなくては。見ず知らずのイケメンと二人っきりだなんて、誤解を招いてしまうわ)


 冷静を装い、姿勢を正してから、極上のイケメンに話しかけた。


「従者も付けずに外で居眠りなど、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。伺いたいのですが、ここはアルヴァレス侯爵邸の近くでしょうか?」


「ここは人間のいる地上ではなく、天界です。神の国にいるのですよ、可愛いニナ。時間がないので聞かれる前に答えますが、私は神に従事する者です。人間界の表現でいうならば『天使』でしょうか……」


「神の国? 天使ということは……天国?」


「そんな感じです。神の国には魂しか来れませんので、ニナがここにいるということは、眠っていたのではなく、死んでしまったということです」


「えっ? ええーー!? 私、死んじゃいましたの?」




 これは、好き勝手やりたい放題に生きる主人公ニナが、天使に応援されながら、みんなを幸せに導く大聖女への成長物語。


ーーニナが天に召される数時間前ーー


 ことの始まりは、ブラン王国とベルレアン帝国との同盟締結を祝した晩餐会からだった。


「王太子殿下……」


 ニナはまっすぐにアルノーを見つめ、ニッコリと微笑みながらお辞儀をし、ダンスが始まるのを待っていた。


 アルノー・ド・ブラン王太子には二人の婚約者候補がいる。

 

 アルヴァレス侯爵家令嬢『ニナ・フォン・アルヴァレス』18歳。もうひとりの候補者、マーティン侯爵家令嬢『シャルロット・ル・マーティン』25歳。


 アルノーは20歳、シャルロットはアルノーより五つ年上。年齢的にはニナが有利だが、アルノーとシャルロットは幼馴染で、気心の知れた間柄だ。


 この状況でニナが婚約者に選ばれるためには、貴族たちからの高い評価を獲得しなければならない。


 今夜のパーティーは、貴族だけでなく帝国からの賓客も招かれており、いつもよりも参加者が多い。


 王太子とダンスする最初の相手は当然自分でなくてはならない、とニナは不敵な笑みを浮かべ、シャルロットのほうをチラリと見た。


 シャルロットはアルノーから離れた場所で、ニナの友人の子爵令嬢たちに囲まれ、足止めされている。


「マーティン侯爵令嬢の今日のドレス、とっても豪華ですわ! パウダーピンクの髪色にとても合っていて素敵です!」


「そのアクセサリーはどちらでお買い求めになられましたの?」


 子爵令嬢たちは、話題が途切れないようシャルロットを褒めたたえながら、うまく取り巻いて身動きできないようにしている。


 シャルロットの性格上、彼女たちの包囲網をすり抜けて、王太子までたどり着くには時間がかかるだろう。


(さあ、アルノー様、私の手を取って。あら? 何か落ち着かない感じ……シャルロット様を探しているの? もう! 曲はすでに始まっているのに!)


 静かに、軽く圧をかけるようにもう一度呼び掛けた。


「……王太子殿下!」


 これ以上ニナを待たせるのは失礼になると空気を読んだアルノーは、軽くため息をつき、ニナとダンスを始めた。


 ダンスの最中もアルノーは、『心ここにあらず』といった感じだった。曲が終わり、拍手喝采の中、礼儀もそこそこに彼はニナから離れていってしまった。


(シャルロット様のところに向かったのかしら? 気遣いはできるのに、デリカシーの無い人ね……)


 呆れてため息をついていたが、そんな状況などお構いなしに、会場の貴賓たちは口々にニナへの称賛を囁き始めた。


「アルヴァレス侯爵令嬢のダンス、見事でしたわね。王太子殿下にとてもよくお似合いですわ」


「社交界ではすでにカリスマ的存在ですもの。流行のドレスもいち早く取り入れて、メイクも立ち振る舞いも人望も、うらやましくてため息が出てしまいます」


 ニナの話題で盛り上がっている。


(当たり前です。私は『ニナ・フォン・アルヴァレス』という与えられた素材を磨き、教養を身に付け、自分に自信が持てるよう心がけていますから)


 惜しまぬ努力の結果が出ていることに満足していた。


「あの美貌に加えて、艶やかなミルクティーベージュの髪……」


「特にあの瞳が稀有で素晴らしいわ」


「赤やオレンジや金色が鮮やかな宝石『ファイヤーオパール』を彷彿とさせる瞳……見つめられると逆らえないような気持ちになってしまいますわ」


(当然よ。髪はブラッシングを入念に、ブラシには栄養たっぷりのオイルを塗って使用し、艶感重視。チャームポイントの目のケアも、ベリー系のフルーツを摂取し、毎晩温めた布を当てマッサージ。目が疲れるので夜は読書しない。面倒でも毎日がんばって美を保っているのだから)


 扇で口元を隠し、自慢げに鼻で笑った。


 今日のニナの目的、『アルノーの最初のダンスの相手に選ばれる』ことを果たし、満足しながらソファでブラッドオレンジソーダを飲んでくつろいでいた。


(『王太子』という肩書きくらい射止めなければ、自分自身を磨いてきた甲斐がないわ。でも……優柔不断な人はあまり好きではないのだけれど……)


 軽くため息をついたところに、ニナのいるソファへ友人たちが笑顔で集まってきた。先ほどの『足止め隊』である。


「マーティン侯爵令嬢とお話してまいりました。会話が弾んでしまい、作戦とはいえ、とても楽しい時間でしたわ」


 社交界の令嬢たちは通常『派閥』を気にするものだが、ニナは面倒が嫌いな性格だったため、特に境界線を設けておらず、誰とでも話し、気に入れば友人になった。


『自分に自信があれば周りも付いてくるし、付いてこなくても気にしない』というニナの人柄に、好感を持った令嬢たちが自然と集まり、友人はどんどん増えていった。


 派閥なしのゆるい関係が、気を遣わず心地良いとお互いに感じていた。


 例えライバルのシャルロットを称賛する話であっても、ニナは普通の話題と同じように楽しく聞いた。


「テーブル席に移動しましょう。お食事しながら報告を伺いたいわ」


 ソファから移動して全員が席に着くと、ニナはグラスを手にとり、一言お礼を伝えた。

 

「私とマーティン侯爵令嬢の勝負のために、いつも皆様のお力添え、感謝しております」


「私たちも、ニナ様とマーティン侯爵令嬢にお近づきになれて、とても光栄に存じます」


 乾杯のあと、ニナから遠い席の子爵令嬢が、負けじとシャルロットの話題を出した。


「先日のパーティーのときも、作戦だったとはいえ『ドレスが汚れて困った』フリをして近づいた私に、マーティン侯爵令嬢はとても親切にしてくださいました。さらに『何かあれば、いつでも声をかけて』と、ご自身の予備のドレスを貸していただきましたの」


 そのときのドレスはどんなデザインだったのかと、話題はファッションへ移っていった。


 テーブルには、アスパラガスのコンフィ、スモークサーモンとアボカドのテリーヌなどが次々に運ばれてきて、食事も進み、会話も弾んだ。


 社交界ではシャルロットも人気が高い。それなのに控えめなのは、ニナより年上だからだろう。ニナを押し退けて前に出るなど、公の場で目立つことに恥じらいや抵抗を感じているようだ。


 ニナはその優しさや奥ゆかしさを利用して、パーティーでは自分に注目が集まるよう策を講じ、王族や貴族から高評価を得ていた。


(でも実際には、アルノー様と幼なじみのシャルロット様のほうが有利になりやすいはず。水面下で動かれているのかしら?)


 ニナは、このままうまく婚約者に選ばれても、つまらない気がしていた。


 子爵令嬢の一人がグラスをニナに向けて、もう一度乾杯を誘っている。

  

「この勝負、このままだと国王陛下からのご指名はニナ様に決まってしまいそうですわね」


「……それはどうかしら。王太子殿下のお気持ちも含めて、総合的に評価が高くなければ選ばれません。近いうちに開かれる貴族会議で、いよいよ婚約者が決定しますわ。勝利を手にするのは私となるのかどうか……皆様の予想は当たるかしら?」


「結果が気になりドキドキしますわ」


 話が盛り上がり、再び乾杯したところで、後ろから肩越しに話しかけられた。振り向くと、父のアルヴァレス侯爵が立っていた。


「お話し中に失礼。ニナ、少しいいかな」


 笑顔ではあるが、目が笑っていない。


「お父様、どうかなさいましたの?」


「ガルフィオン辺境伯夫人がお倒れになられたと先ほど連絡があった。ご危篤らしい。夫人の居城へ今すぐ向かうから、先に失礼すると皆様にご挨拶してきなさい。国王陛下や王太子殿下には私から事情をお伝えしておく」

 

 ガルフィオン辺境伯夫人は、ニナの祖母であり、聖女でもあった。祖母から心のこもった手紙やプレゼントが時々届いていたものの、会う機会はほとんど無かったため、ニナはあまりショックを受けていなかった。


(今日のために用意したドレスにメイク……もう少し友人たちとファッションについて話をしたかったけれど……)


 残念に思いながら、挨拶もそこそこに済ませ、父親と馬車に乗り込んだ。


「急いで帰ろう」


 早く邸宅へ戻るように指示を受けた御者は、手綱を大きく振って、馬を走らせた。


 馬車に揺られながら、帰ってからの荷物の準備について考えていた。邸宅近くの下り坂に差し掛かったとき、御者が叫んだ。


「ご主人様! お嬢様! 危険です! お掴まりください!」


 バキッ! ガガガ!


 何かが軋み、削れるような音がした。


 突然激しく揺れて馬車が傾き、横転した勢いでニナは外に投げ出され、頭を強く打った。


 父親は多少の打撲がありつつも、痛みなど知ったことではないと馬車から這い出て、ニナに駆け寄った。


「……ニナ! ニナ!! 大丈夫か?!」


(お父様の声が遠くに聞こえる……、すごく頭が痛い……、ドレスが汚れたら嫌だわ……髪も乱れたんじゃ……ないかし……ら……)


 意識が遠のきながらも考えていたのは、『今すぐ鏡が見たい』ということだった。


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