神隠し
「神隠しって知ってるよね?」
彼は唐突にそう言った。
久方振りに会った時の事である。
会った場所は、勿論、私の部屋だ。
引きこもりであった私にはー。
其所だけが私の居場所だったからだ。
その時、私は少し不思議な感覚に陥ってはいたのだった。何故ならば、その様な様々な都市伝説や未解決事件を考察していた時、必ず私から話を振っていたからだ。彼から、そう言った話を話題に出してきた事なんて1度もありはしなかったのだ。でも、その時の私は、その様な変化等、理解してはいなかったのである。
「あぁ。あるね。勿論、知ってるよ。」
私はコーンスープを口に運んでいる。
「それなら話が早い。その内の大半が【完全犯罪】だよね。」
「はい?」
私の口からは素っ頓狂な返事しか出なかった。口に運ばれる筈だったコーンスープは空中で止まっている。行き場を失ってしまったのだ…。
「いや。だから…。【完全犯罪】でしょ?」
彼の瞳は、何時にも増して、深海よりも暗く深かった。
以前に出会った頃と、雰囲気が少し変わっていた様な気もする。
言葉では説明は出来ない。感覚としか言い様は無い。
私の本能が恐れを感じていたのかも知れない。
「どうして、そうなった?だって、神隠しは神様に連れ去られる事だろ?ほら。突然に行方不明になるとかさ…。所謂、超常現象だろ?」
そう。私は思った事を思った儘に口にするのだ。
そんな私に彼は言葉を編み込んでいった。