初めてのクエスト ギルド編
――――翌日。
前日飲みすぎたせいで、全員頭痛を起こしていた。
だからと言って、一日中何もしないわけにはいかない。
なにせ彼らは、前日の飲み食いで有り金をほぼ使い果たしている。
はっきり言ってバカである。苦労して手にしたお金を一日で使い果たすものがいるだろうか。
現にギルドへ向かっている、バカ三人組は稼いだお金はおろか、宿屋に泊まるお金すらないのだから。
「……うう、頭が痛い。あー、こんなことなら飲むとか言わなきゃよかった! あいたたた」
大声を上げて、自信の頭痛に追い打ちをかけるサヤ。ラブストーリー
「私、ギルドに着く前に吐いちゃいそう。……うっ!」
「吐くとか言うんじゃねぇ。俺も吐きそうに…………」
「「おええええええ」」
道脇でレンとユウキは吐き始めた。かなりの勢いで前日飲み食いした物が口から出てきている。
道行く人たちは、冷たい視線で二人を見つめる。
「二人とも、あたし先に行くから。スッキリしたら、すぐ来るのよ」
「わかっ……おええええええ!」
「おええええええ」
頭を押さえながら、サヤはゆっくりとギルドへ向かう。
相変わらず、吐き続けている二人。これは当分、スッキリしないだろう。
ちなみに、吐きすぎると食道炎になることがあるので、飲みすぎには十分注意しましょう。
吐いた後のアフターケアとして、うがいと水分補給を忘れないように。
――――あれから三十分後。
ギルドに着いたサヤは、椅子に腰掛け水を飲みながら二人が来るのを待っていた。
「遅いわね~。あの二人、どこほっつき歩いてるのかしら」
と言った矢先、ギルド入口からレンとユウキが入ってきた。
先ほどと変わらず、二人とも顔色がよくない。むしろ、悪化してるように見える。
「大丈夫? あたしたちに休みなんてないんだから、あんまり飲みすぎないでね」
「……サヤが無理やり飲ませてきたんだろうが」
「そうだったかしら? ……それより、今日はクエストを受けようと思うの」
そう言って、机上に依頼書を載せる。
依頼書に記載されている内容は。
町から離れた森に自生している腹痛を治す薬草を採取してきてほしい。
採取する薬草の絵が描かれているが、
「きのこだな……これ。依頼内容間違えてねぇか」
「レン君のより、このキノコの方がおおき……」
机に置かれたウォーターポットをユウキの口に押し込む。
必死に抵抗するも、ユウキの力でレンには勝てない。されるがままに、口に水を流し込まれる。
ついにユウキは白目を向いて動かなくなった。レンは気使って、床にユウキを寝かせる。
顔色の悪かった二人は、今はとても良くなっている。
「……それで報酬はいくらなんだ」
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた。なんと銀貨十五枚! 内容の割にかなりおいしい依頼だと思わない?」
「怪しすぎるだろ。その依頼、受付に戻してこい。やるなら別の依頼にするぞ」
「えー、銀貨十五枚も貰えるのよ。昨日の一件でお金ないし、町外れの森ならあたしたちでも問題ないと思うけど」
サヤの言うことは正しい。お金がなければ宿屋に泊まることも、食事を摂ることさえできない。
仮に町中で野宿をしたらどうなるか、普通の人間であれば想像がつく。
胡散臭くても、ここは依頼を受けるべきだろう。
「……わかった。だが、危険を感じたら俺はお前らを置いて逃げるからな」
「とか言って、あたしたちを担いで逃げてくれるんでしょ? 昨日、飲み潰れたあたしとユウキを部屋まで運んでくれたの知ってるんだから」
「う、うるせえ! 俺はそこまでお人好しじゃねえ」
サヤから視線を逸らし、顔を赤くするレン。
鍛え上げられた肉体持った男が、ツンデレ属性を保有していて誰が得をするのだろう。
約一名、床で横になっている男はこういうギャップに弱かった。
依頼書を持って、早速受付のところへ向かった。
「すみませーん、この依頼受けたいんですけど。承認いただけませんか?」
「……薬草採取の依頼ですね。ここ最近森に魔獣が出没しているとの情報がありますので、十分に注意してくださいね。特に男性冒険者の方が被害に遭われているそうですよ」
「ご忠告ありがとうございます」
受付を終え、彼らはギルドを後にした。
もちろんユウキを忘れずに。
ご精読ありがとうございました。
次回投稿までお待ちください。