捨てられた
全く認識のない人にパンをもらった。最近まともな食事を摂れていないせいで、不覚にも差し出されたパンを食べてしまった。
おいしかった。
パンを食べている僕を輝いた目でずっと眺める彼に、少しばかり怒鳴ってやりたかったが、空腹に負けて懸命にかぶりついた。
ふふふと笑って彼はどこかへ去って行った。お礼の一つくらい言っておけばよかったと少し後悔した。
次の日。僕は彼の匂いに反応して目を覚ます。
「今日から僕の家に住ませてあげるからね」
彼は僕のことをひょいと持ち上げ、楽しげにそう言った。僕は嬉しすぎて思わず尻尾を振りながらワン! と叫んだ。