シード
「終わったー」
入力と選択を繰り返すこと二日間。
いや、流石に二日間は誇張になるが、まる一日は間違いなく超えている。
にしても、ステータスの種類が多かった。まさに暇を持て余した神々の遊びな訳だが、それをすべて導入しようという僕も、なかなかに暇なのだろう。
「この解放感、癖になる」
神になった特典なのか、疲労感は無い。
それは精神的な面もそうなのだが、なんというか、束縛感からの解放は別枠みたいだ。
「次は人類について考えないと」
人類のいない異世界なんて、餡のないいちご大福みたいだ。
奇をてらうという意味では悪くないし、人類じゃなくとも知的生命体は作れる。
食べられ無くもないが、正直餡ありのいちご大福には負ける、といった具合だ。
……うん、テンションがおかしくなっている自覚症状はある。
元人間がまる一日ぶっ通しで作業をしたんだ、疲労がなくとも精神には悪影響があって然りだろう。
それはともかく。
世界の中に生物を生み出す方法は三つある。
完全な自然発生を待つ、直接その生命体を配置する、がわかりやすいはずだ。
自然発生を待つのであれば、どんな生命体が生まれるかわからないというドキドキがあるが、特定の生命体を選ぶ事ができない。
直接その生物を配置するのは、自分好みの世界にできる反面、手間がかかり、生命誕生が神話チックになるという問題もある。
じゃあ、三つ目はどうなんだ、と質問してくれたら個人的に話しがいがある。
三つ目は名前に『シード』を含むシリーズだ。
これは『さり気なくその生命が誕生するように介入するプログラム』と言える。
遺伝子操作、もしくはさり気ない自然災害によって、目的の生物を作り出してくれるのが、この『シード』シリーズだ。
これの利点は生命誕生が科学っぽくなるだけでなく、その過程で生まれた生命体も残る、という点だ。
「ヒューマンは考えるまでも無く必要。エルフやドワーフは種類が多いな、……ん?」
待てよ、種族は基本、遺伝的な要素で決まるものが多い。
でも僕が望んでいるのは、遺伝とか関係無しにランダムで種族が決まるものだ。
ランダムなものを増やしたり、魔法の種類も多く導入することによって、僕はこの世界を『カオス』にしようと企んでいる。
例えば、エルフが閉鎖的な種族である、という設定は、エルフの森の外でエルフが産まれない状況、エルフの森の中でエルフ以外が産まれない事が、ある意味前提条件として存在している。
それじゃ駄目だ。
僕の望んでいる『カオス』に、そんなものは不要、むしろ邪魔とも言える。
「そういう種族はないのだろ……あるんかい」
『シード』シリーズの中から目的に適したものを探していたら、予想を裏切って存在した。
まさに暇を持て余した神々の暇つぶしだな。似たような事を言った気がするが。
『人類』、人型且つ創作物の中でも比較的ヒューマンと友好的な種族をすべて含めた、ある種代表的な種族。
どのような種族の子供が誕生するかは、完全に運。
理想的過ぎて、若干怖い。