砂場の上の魔王
第1話 砂の上の魔王城
城下町、マテンロー公園
ある公園の小さな砂場で二人の子どもが遊んでいた。
一人は金髪でドクロのイラストがプリントされたTシャツを着た子、名前はキャメロン。もう一人は背中を隠す程の長い黒髪で紫色のシャツを着た子、名前はトミー。
二人はしばらく砂場で遊んでいたが、キャメロンがある提案をしてきた。
キャメロン「トミー、勇者ごっこしようぜ!」
トミー「いいね、やろうやろう!
私、お姫様役ね!」
キャメロン「ええ!?」
トミー「ええ、て?
キャメロン、お姫様やりたかったの?」
トミー「いや、そういう訳じゃ…そうだオレ魔王やる!」
キャメロン「え、そしたら勇者いないじゃん!
勇者ごっこだよ、これ!」
トミー「いいのいいの!
ほら、勇者やると長いながーい冒険しないとダメじゃん!
それよか魔王のほうがかっこ良く座ってるからいいの」
キャメロンはそういうと、砂を集めて山を作る。
山が出来上がると今度は頂上の部分を潰し、まるで椅子のような平らな山になる。
キャメロンはその上に座った。
キャメロン「フハハハー!魔王だぞー怖いんだぞー!」
トミー「おお、なんかキャメロンがやるとそれっぽいよ!
魔王はやっぱ金髪にドクロの飾りだよね!」
キャメロン「そうなの!?」
トミー「そうなの!
じゃあ私はお姫様だからー」
トミーは近くに落ちていた枝を拾い、砂に四角の線を作る。
そして線の前に『ろうや』と書いた後、線を飛び越えて四角の中に入る。
トミー「じゃじゃーん!
ろうやだよーせまいよー!」
キャメロン「おおー、お姫様捕まえたのかー」
トミー「魔王なんだからお姫様の一人や二人捕まえないといけないの!
きっと怖い事されるんだわーきゃーお化けが出たらどうしよー」
キャメロン「…しないよ」
トミー「え?」
キャメロンは頬をかきながら答える。その言葉はまるで国王のように自信に満ち溢れていた。
キャメロン「オレは魔王だけど悪くない魔王だから、トミーに怖い事しないよ!」
トミー「そうなの?」
キャメロン「そうなの!
オレが魔王になったらねーみんな仲良くしないとハリツケの刑にするぞーていうんだ!
そうすれば鳥さんと仲良くなれるし、皆が何してるかも見える!」
トミー「キャメロン、凄いね…。
ちゃんと色々考えてるんだね」
キャメロン「うん!
なんてったってオレ魔王だから!」
座ったまま両手をじたばたしながら楽しそうに笑う。
それにつられてトミーも微笑んだ。
トミー「魔王が優しいなら私にも優しいのかなー」
キャメロン「優しい魔王は誰にも優しいぞ!じゃないとハリツケの刑だからな!」
トミー「じゃーご飯作ってー」
キャメロン「ええ!?」
トミー「優しいんでしょー?
ろうやに入れられて泣いているお姫様に何もしないのー?」
キャメロン「むむむ…それなら」
そう言いながらキャメロンは砂でおにぎりを作る。
キャメロン「はい、おにぎり」
トミー「えーもっと美味しそーなの作ってよー」
キャメロン「砂だもん、おにぎりぐらいしか作れないよ」
トミー「やれやれーこれだからお子ちゃま魔王って皆から呼ばれるのよ」
キャメロン「皆って誰!?」
トミー「いいからいいから。
それじゃ私がとびきり美味しいの作るねー、ひょいっと」
トミーはろうやを飛び越え、少し離れた木の下で小さな石を幾つか拾い上げる。
そして少し大きな葉の中に石を入れ、葉で包んだあと砂場のろうやに戻った。
トミー「じゃーん、私が作ったフランスごはーん!あーんしてあーん」
キャメロン「フランスってなに?」
トミー「フランス知らないの?
お姉様がね、全裸で歌いながら暴れまわる料理人だって言ってたよ。
その人が作るご飯が美味しいんだって!」
キャメロン「凄いね!
じゃあいただきまーす!
モグモグ…美味しい!」
トミー「私お姫様だもん!
今度から私が料理作って上げる!
凄ーいお姫様だもん!」
キャメロン「凄ーいお姫様!?
なにそれカッコいい!」
トミー「私は凄いお姫様なのよ、ドヤァ!」
キャメロン「ドヤァ?」
トミー「お姉様が教えてくれたわ。
自信たっぷりな時はドヤァといえばいいんだって!」
キャメロン「そっか…じゃあオレもドヤァだな!なんてったって魔王だからな!
ドヤァ!」
トミー「む、私だって凄いお姫様だもん!
ドヤー!」
キャメロン「オレだって凄い魔王だぞ!
ドヤァー!」
トミー「私の方が凄いお姫様ー!
ドーヤァ!」
キャメロン「オレは優しい凄い魔王だ!
ドーヤァー!」
トミー「私の方がー!凄いー!お姫様ー!
ド・ヤァー!」
キャメロン「アタシの方がー!凄いー!魔王ー!
ドーン・ヤーァ!」
二人がしばらく砂場でどや顔しあっていると、二人の大人が近付いてきた。
一人はスーツを着た老紳士。
もう一人はドレスを着た貴婦人だ。
二人は子ども達の近くまで歩くと、ほんの数秒互いのどや顔を見比べていたが、静かな口調で二人に声をかける。
老人「ふむ。
この勝負トミーの勝ち…」
貴婦人「なに勝手に審判してんのよ!」
貴婦人の勢いよく振り回したハリセンが老人の頭に当たり、スパーンという音が響いていく。
老人「あたっ!
老人になんて事を…」
貴婦人「あなたチェーンソーが当たってもぴんぴんしてる癖に何言ってるのよ!」
老人「さーてなんの事やら~」
貴婦人「全く、トミー!帰るわよ!」
トミー「あ…はい、お母様…。
じゃね、キャメロン」
キャメロン「うん、またね…」
そして二人は別れ、元の暮らしへと戻っていった。




