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刀一本で世界を救う  作者: 破壊と絶望の申し子
7/12

ウサギの名前

夕方になり、宿に戻る。客も多く忙しそうだ。夕食を食べつつ、話しかける。


「親父、ちょっといいか」

「なんだ、見て分かるだろ。今忙しいんだ」

「まあまあ、すぐ終わるから」


そう言って連れて来たウサギを見せる。初めて嗅ぐたくさんの匂いに興味があるのか、鼻をヒクヒクさせている。


「こいつのこと知ってるか?」

「ん?ウサギか…?これもしかして[幸福ウサギ]じゃないか?」

「ああ、やっぱ[ガブガブウサギ]ではないのか。おとなしいとは思っていたけど」

「バカ、あんなブサイクウサギと一緒にするな。そもそも毛色も違うだろ」


[ガブガブウサギ]は茶色の毛でふざけた顔をしていた。[幸福ウサギ]は黄色の毛で赤い目を持ち、整った顔立ちをしている。キリッとしたその目は知的な雰囲気を漂わせ、その愛くるしい見た目と相まってとても魅力的な存在となっている。説明にこれ程の違いが出るほどに同じウサギでも月とスッポン以上の差がある。


「名前の通り幸福や運を司ると言われているウサギだ。ほとんど見かけられないレアな魔物だぞ」


なんでも、魔物としてはめちゃめちゃ弱く、個体数も少ないらしいが運が良いため生存率はかなり高いのだとか。もしかして、と思い落雷についてのことを話す。


「そうか、そんなことがあったのか。そのウサギに感謝するんだな。おそらくたまたま雷がそいつら周辺に落ちるよう誘導したんだろう」


それを意図的に出来るのなら、運とかそういうレベルじゃないような…。そう思いながらウサギの頭を撫でる。


「しかし懐いているな。[幸福ウサギ]に懐かれるやつなんてきいたことないが」


魔物には人を襲う獰猛なやつが大半だが、争いを好まない温和な魔物もいる。このウサギも温和なタイプで可愛らしい見た目からペットとして飼いたいと思う者も多いそうだ。


「そいつは個体数が少ないからなかなか会えない。どうしてもペットにしたいと、多額の報酬で捕らえてくるよう命じる貴族もいるそうだが、 上手くいかないようだ。屋敷に捕らえても無駄って話だ」


なんでも、地下に捕らえても謎の大爆発により空いた穴から脱走、檻に閉じ込めたら急に盗賊に押入られて攫われるとか、何としてでも逃げ延びるらしい。そういったことから、無理やり捕えると不運なことが起こるとも言われているそうだ。


「おいおい、俺大丈夫かよ」

「お前には自分からついて来たんだから大丈夫だろ。無理やりだったらとっくに不幸な目にあってウサギはいなくなってるだろうよ」


抱いて連れて来たから少し不安だったが大丈夫なようだ。しかしとんでもないウサギだな。


「と、ところでそのウサギちょっと触って良いか?」


親父が鼻息を荒くしてニマニマしながらウサギを見て、手を伸ばそうとしている。どう見てもヤバいやつにしか見えない。ウサギもその気配に気づいたのか、テーブルの上から俺の体をよじ登って肩に座った。


「ああっ……」


親父は手を伸ばしてウサギを求めるも、逃げられてしまいとても残念そうだ。しかし、まだ何か諦めてない様子で、


「な、名前!ウサギの名前はもう決めたのか!?」

「ま、まだだが」

「じゃあ俺につけさせてくれ!」


親父は全力で頭を下げた。忙しいんじゃなかったのかよ。いいと言ってないのにウンウン唸って真剣に名前を考え始めている。


「そのウサギはメスだろ?……ウサコ、なんていうのはどうだ?」

「却下」

「キュー!」


ウサギも不服そうに鳴いている。


「な、なんだと!?」


親父は良い名前だと確信してた様で、たいそう驚いている。


「じゃあお前はなんて名前をつけるんだよ!」


ウサギも俺を見つめる。名前か…自分の名前も適当につけたぐらいだからなあ。良い名前をつけられる気がしない。


「決まってないならやっぱりウサコにしy」

「ちょっと待て今考える」


話を遮った。さすがにウサコは不憫だ。ウサギの名前…ウサギ……ラビット…


「ラト、なんてどうだ?」


ラビットを省略した名前。単純ではあるけど俺にしてはいい方だと思う。ウサギを見ると、まあいいだろう、みたいな感じな表情をしている。


「ウサコの方がいいと思うんだがな…」


親父がブツブツ言っているが、ウサギの名前はラトに決まった。話は終わったので席を立つ。


「あんた!いつまで喋っているの!はやく仕事に戻りなさい!」


親父は女将に怒られ、渋々厨房に戻る。女将は俺の方…というより俺の肩に乗っているものを見て、


「あら、なにその可愛いウサギは!」


目をキラキラさせてラトを見つめる。


「ラトだ。さっき森で助けたんだが、どうやら懐かれたみたいだ」

「ラトちゃんって言うのね。ちょっと待ってて」


そう言って厨房の方に行き、すぐ戻ってきた。手には

ニンジンを持っている。


「これ、食べるかしら?」


ラトはピクッと反応し、俺の肩からぴょんとジャンプして女将の胸元に抱きつく。そして抱えられながら美味しそうにニンジンを食べ始めた。


「あらー可愛いわね。日頃の疲れも吹き飛ぶようだわ」


ラトと一緒だからだろうか、女将も元々美人な方だが、より一層綺麗に見える。


「ぐぬぬぬぬ」


厨房には羨ましそうにその光景を見つめるいかついおっさんがいた。






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