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刀一本で世界を救う  作者: 破壊と絶望の申し子
5/12

武闘大会

翌朝、大会がある場所に行こうとすると呼び止められる。


「おい、お前さん。これ持ってけ」


1000ゴルド渡される。何の金だ?と思っていると、


「参加費1000ゴルドだ。持ってないだろ?」


金取られるのか、まあそれはそうか。にしてもいい人だな、この親父。


「助かる。必ず返すぞ」

「おう、今日も皿洗い期待しているぞ」

「負け前提かよ」


俺が突っ込むと、親父はふっと笑い、


「……頑張れよ」

「ああ」


宿を出て、会場に向かう。確か中央にある噴水を右に曲がった先だったか。それにしても、


「ここは全体的に赤の多い町だよな」


壁は白、屋根は赤の建物が多い。夕日が反射して綺麗だったのを思い出す。咲いている花も赤色が多い。そういえばギルドの制服も赤だったな。そんなことを考えていると、目的の場所に着く。金を支払うと、


「お客さん、名前は?それと冒険者ランク」


名前か…。そういえばこっちに来てからまだ名乗ってないな。日本の名前だと浮く可能性があるな。


「……クロだ。冒険者じゃない」


髪が黒いからクロ。安直だが、まあいいだろう。冒険者じゃないと聞いて受付の人は、驚いているが冒険者じゃないと参加不可ということはないので通してもらった。


「おおー」


中に入ると結構人がいた参加人数は24人らしく、俺以外は冒険者だった。


「なんだあいつ…?」

「防具じゃなくて、アレただの服だぜ?」

「なんであんなやつが来てんだ?」


ヒソヒソとこちらを見て何か言ってくるやつがいるがあまり気にならなかった。移動して、今は控え室にいる。この建物の外観はコロッセオのようになっていた。思い出して少し高揚する。


「さあ、始まりました!間も無く第1試合です。選手はーー」


声が聞こえる。始まったようだ。ルールは簡単。相手に負けを認めさせるか、戦闘不能にすれば勝ち。死者を出すわけにはいかないので、致命傷を負った場合、その傷は癒えて代わりに気絶だけで済む都合のいい魔法がかけられるらしい。

少しして、俺の番が来たので試合場に向かう。観客席は6割ほど埋まっていた。100人ぐらいか?あまり人前に出るのは得意じゃないから緊張する。


「3組目の第1試合が始まります!左の方はビルド選手!冒険者ランクはD。大剣使いです!そして右の方がクロ選手!腰に刀を差していますねー。冒険者ではないそうでーす!」

「なに?冒険者じゃないだと?」

「服装は村人じゃないか」

「冒険者に憧れて村から出て来たのか?」


観客はざわつく。冒険者じゃないものが出るのはかなり珍しいようだ。


「まさか1回戦が昨日の村人野郎とはな、こりゃツイてやがる」


目の前の男がニヤニヤしながら言う。こいつとどこかで会ったっけ?見た覚えがないが。


「それでは試合開始でーす!」


「オラァ!先手必勝!」


大剣を振り下ろしてくる。俺はそれを後ろに飛んで避ける。今度は横薙ぎがきたのでしゃがんでかわす。


「なんだ?逃げてばっかか?《三段斬り》!」


ん?技か。大剣を振り下ろし、切り上げ、最後に回転切りが襲ってくる。Dランクの力はおおよそ分かったので、回転切りのタイミングで素早く後ろに回り込み、首に手刀を入れる。男は気を失って倒れた。


「試合終了ー!勝者はクロ選手!とても速い動きで鮮やかな勝利でしたねー!」

「な、なんだあの速さは…」

「ていうか、あいつ武器使ってないぞ」

「村人じゃないのか?」


観客がまたざわつく。試合は進み、2回戦、3回戦と問題なく勝ち進む。そして決勝戦。3人勝ち上がるはずだったが相討ちの試合があったようで、俺ともう1人との戦いになった。


「さあ決勝戦です!左の魔道士は鉄壁の2つ名を持つCランク冒険者のアラン選手です!2つ名通り、強固な魔法障壁を作りあらゆる攻撃を弾いて勝利を収めてきました!対するは右のクロ選手!冒険者じゃないとの話ですが、何者なんでしょうか?未だ腰の刀は使わず、全て素手で勝利してきた今大会のダークホースです!さあどちらが勝利するのでしょうか!決勝戦、開始です!」


観客の歓声が上がり、試合は始まる。


「ひょほほほほ!わたくしの魔法障壁は簡単には破れないのですよ!なす術なく敗北なさい!《シールド》!」


すると、アランの周囲にドーム型の視認できる透明の膜が出来上がる。そこから、火の玉が飛んでくる。どうやら中から外には出れるらしい。それを横に飛んでかわす。


「またまた出ました、アラン選手の《シールド》!あれはBランク中位の[ロックドラゴン]の突進攻撃にも耐えたらしいです!さあクロ選手、これにどう対抗するのか!」


ドラゴンいるんだな…。Bランクはかなりの脅威のはずだ。村の1つや2つはもちろん、小さな町でも壊滅的な被害を受けるレベルだったはずだ。そんな魔物の攻撃を防ぐとは、さすがは鉄壁だな。


「オラァ!」


飛んでくる火の玉を見極め、素早く接近し、拳を突き出す。


ガァン!


傷ひとつつかない。やはりかなりの硬さのようだ。


「ひょほ!そんな攻撃無駄ですよ!食らいなさい!《ファイアウェイブ》!」


杖から火の波が作り出され、襲いかかってくる。なかなかの範囲で、逃げ場は無さそうだ。


「ひょほほ!わたくしが使える中で一番威力と範囲が広い炎魔法です!消し炭になりなさい!ひょほほほほ……ほ?」


炎が消える。【破魔刀】で炎を切り裂いたからだ。突然消えた火の波にアランは何が起こったのか理解できていない。そのまま障壁を切り、殴り飛ばす。


「ほげええぇぇぇ!!」


アランは倒れる。一瞬シーンとしたのち、歓声が上がる。

「「「「「うおおおお!!!」」」」」

「試合終了ー!優勝はクロ選手!見事な勝利でしたねー。賞品は10万ゴルドと魔道具でーす。お受け取り下さい!」

「すげえ試合だったぜ!」

「どうやって炎を消したんだ!?」

「やるじゃねーか、あいつ!」


観客の歓声を聞きながら、会場を後にする。




「いらっしゃ…、おう、お前さんじゃねーか。今ちょうど忙しくてな、1000ゴルド分働いてもらうぞ」


昼頃になり、オーレンに戻ってきた。俺の顔を見るなりそんなことを言うが、俺はふっと笑い、1000ゴルドを差し出す。


「ん?どうしたこれ?出場しなかったのか?」

「優勝してきたぞ」


俺はドヤ顔でそう言う。親父は冗談だろ?みたいな顔をするが、俺が賞品の魔道具を見せると、目を見開いて驚く。


「お、おいこれ?マジか?マジで優勝したのか!?」

「だから言ってるだろ」

「まさか本当に優勝しちまうとはな…、お前さん強かったんだなあ」


俺が本当に優勝したと知り、笑顔で喜んでくれた。そして祝いに昼飯をサービスしてくれることになった。親父、いいやつだ。


「その代わり、その中身がなんなのか、俺にも見せろよ?」


そう、これはまだなんの魔道具か分からない。貰ったのは手のひらサイズの小さな箱なのだが、開けるまで何が入っているか分からないらしい。昼飯を食べ終え、店もひと段落したので箱を開けることになった。


「さてさて、何が出るのやら」

「この感じだとレアリティはCが上限だろうな」


魔道具のレアリティもSからEの6段階らしい。まあ大したレベルの大会でもなかったから、そんなもんか。


「ちなみに、Cの当たりはなんだ?」

「色々あるが、無難なのは【生命の指輪】だろうな」


効果は身につけると自然治癒力が高まるらしい。例えば1ヶ月で治る怪我が3週間で治ったり、全治10日の捻挫が7日で治ったり。悪くはないけど戦闘向きではないな。


「外れは?」

「Eの属性の魔石系だな。例えば【火の魔石】だったら手に持って《ファイアボール》と唱えるだけで魔力消費なしで発動できる。3回で使えなくなるがな」


これは微妙だ。俺の場合は魔法が使えないからアリかもしれないけど、使えるやつにとってはゴミ同然だな。ちなみに5000ゴルドぐらいで買えるらしい。


「よ、よし、じゃあ開けるぞ」

「おう」


俺たちは箱のふたを開け、中身を確認した。










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