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刀一本で世界を救う  作者: 破壊と絶望の申し子
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お金が足りない

朝起きて、顔を洗ったら下に行く。料理が出される。今日はパンだ。ハムエッグっぽいやつにコンソメスープっぽいやつ。っぽいやつ、というのは似ているが色や大きさが若干違うためだ。食べ終わって、人も減ってきたので女将に話しかける。


「ちょっと聞きたいことがあるんだが」

「なんだい?」

「昨日の米、あれって昔からあるのか?」

「なんだい、そんなに気に入ったのかい?あれは200年程前あたりかね、食べられ始めたのは」


200年程前……割と最近だな。


「この世界っていつからあるんだ?」

「は?どういう意味だい?それは」

「この世界が出来たから何年ぐらい経つんだ?」

「そんなの分かるわけないじゃないの。神様じゃあるまいし」


不思議な顔してそう言う。いつこの世界が生まれたかは分からない。しかも話ぶりからして、正確に知っている人はこの世界にはいないのかもしれないな。


「じゃあ、米は前からあったのか?それとも200年前からか?」

「そうだね、前からあったらしいわよ。ただ、食べ物とは認識されてなかったらしいけど。200年前、1人の若者がこれは食べ物だと周りに伝え、広まったと言われているわ」


ふむ、200年前、1人の若者……。


「そういえば、この街には井戸があったが、昔は井戸を使っていたのか?」

「あたしが生まれた頃から既に使われてなかったけど、おじいちゃんから聞いた話だと昔は使われていたみたいよ。そのおじいちゃんもおじいちゃんから聞いたらしいけど。ある日突然井戸は使われなくなったとか」


そのおじいちゃんの情報が何百年前から伝えられているのか、それは正しい情報なのか。もし、その200年前の若者が異世界人、いや日本人だとしたら。そうすれば米もシャンプーなどの日用品もあることも納得がいく。それに井戸についても衛生上よろしくないと、浄化システムを形成したのかもしれない。


(いや、でも…)


それだと時代が合わない。仮に200年程前から米や文化が伝えられ、今に至るとしてもだ。そんなに前の日本人に、水洗トイレやシャワー、その他諸々の知識があるとは思えない。末期とはいえ、江戸時代だぞ?


(ん?待てよ)


そもそも、この世界に来た異世界人はそいつだけではないのではないか?そもそも俺も異世界人。この時点で既に2人だ。もっと来ていても不思議ではない。それならここ数年でこの世界にやって来て、文化をもたらしたやつがいるのかもしれないな。ちょっと危険な質問だが…


「なあ、この世界に異世界人って呼ばれるやつはいるか?」

「数百年前にいたらしいわよ?それからは記録に残ってないみたいだから、その人以降は知られていないわね。あっでも…」

「なんだ?」

「ただの噂話なんだけど、近々王都で異世界から勇者が召喚されるとか……」

「その話本当か!?」


思わず食いつく。


「い、いやあくまで噂よ?本当かもしれないけど、目的もわからないし」


思わぬ話が聞けたな。俺以外にほぼ同時でこの世界に来るやつがいるとは…。色々と気になることができたな。まあおいおい、少しずつ分かるだろう。とりあえず今は金だ。全然足らん。


「色々助かった。突然変な話して悪かったな」


席を立ち、宿を出る。冒険者ギルドに行き、昨日の受付嬢に話しかける。


「お待ちしておりました、冒険者登録ですね」

「ああ」

「では、冒険者制度についてお伝えいたします」


大体村人から聞いた通りの話だ。追加情報としては、自分のランクと上下の依頼を受けることが出来る。Eランクなら難易度がEとDの依頼を。Dランクなら難易度EとDとCを。そして自分のランクより上の依頼をいくつかこなすことで昇格するらしい。


「では、登録には魔力が必要になります。こちらに魔力を注いでください」


そう言ってカードを渡される。………ん?魔力??俺が固まっていると、


「……?どうされましたか?」

「…魔力なかったら登録出来ないのか?」

「ええ。危険な仕事が多いですからね。そのようになっております」

「………どうしても?」

「はい。規則ですので」


俺はガクッと項垂れる。まさか魔法が使えないだけではなく、冒険者にもなれないとは…。


「ぎゃはははは!お前魔力ねーのか?登録しないで帰るなんてよ!」

「はやく田舎帰って畑でも耕したらどうだ?」


頭の悪そうな2人組が絡んでくる。が、俺には聞こえてなかった。それほどショックだったのだ。王都に行っても多分無理だ。そのまま入り口へトボトボ歩いて行くと、


「おい、無視してんじゃねーよ!」

「村人の分際でこの俺様たちを無視するとはいい度胸じゃねーか!」


2人は舌打ちして俺を睨みつけるが、俺はそのまま出て行った。


「やべえ、これからどうしよう」


実際かなり焦っていた。金を稼ぐ手段がなくなった。今後について悩みながら歩いていたらオーレンについていた。中に入ると、


「おや、お前さん、昨日米をバクバク食ってたやつだな。どうした、そんなツラして。腹減ったのか?」


顔に傷のある、筋肉質な男が話しかけてくる。ここの親父だ。俺が事情を話すと、


「魔力がなくて冒険者登録出来ない、か…。まあ無駄に死なせるわけにはいかないからな」

「………」

「金を稼ぐ方法は何も冒険者だけじゃないぞ。なんならうちで働くか?」

「有難い話だが、俺は世界を見て回りたいんだよ」

「なら、とりあえず街の武闘大会に出て資金を…いや、魔法も技も使えなくてはどうにも」

「なんだその大会は!?」


俺のあまりの食いつきように親父は驚く。ちなみに、魔法や技は魔力を消費して発動されるため、魔力なしは圧倒的に不利なのだ。スキルゲーなのに通常攻撃のみで戦う感じになる。


「あ、明日強さに自信のあるやつが出る大会があるんだ。優勝商品は10万ゴルドと何かの魔道具だったか」

「魔道具ってなんだ?」

「知らないのか?魔力が込められている道具のことだ。装備品だったり使い切りだったり。魔力なしで使えるんだよ」


是非欲しい、その魔道具。俺も魔法デビューできるかもしれない。それに10万ゴルドあれば当分の間は大丈夫だ。


「よし、それに出よう」

「お前さん本気か?今回はなんでもCランクの鉄壁と呼ばれる魔道士が出場するらしいぞ?」


Cランク…つまりベテラン冒険者か。二つ名を持っているということはその中でもかなりの実力者なんだろう。


「本気だ。今のところそれに出るのが一番良さそうだ」

「…そうか、まあ気楽に頑張れよ」


よし明日か。今日のところはとりあえず終わりだな、何もしてないけど。残りの残金を確認。4650ゴルド。


「………」


その日は親父の横で皿洗いをした。その日の昼食、夕食、明日の朝食、そして宿泊代を有り金全部にまけてもらった。

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