神?との遭遇
目が覚めると、そこは白い空間だった。
「ほっほっほ。目が覚めたかの?」
白いひげの爺さんが俺に話しかける。穏やかな話し方であるが、直感的に身分が、いや存在が高次元であると察してしまうほど、どこか神々しい。
「ここはお主たちが言うところの天国というところに近いのかもしれんな」
「なんだ、夢か……」
「まあ、夢じゃな」
だよな。ベットに入って寝て起きたらこんなところにいるんだからな。どう考えてもおかしい話だ。
「しかし、現実でもあるのう」
爺さんがおかしなことを言う。しかし、自分でもこの状況に違和感がある。普段見る夢ってこんなにハッキリしてたか?今までは起きてから夢だと気づき、夢を見ている間は全く気付かないというのに。
「爺さん、どういうことだ?」
「なんとなく感じておるじゃろ?夢ではあるが普段の夢の感覚ではないことに。お主の夢にわしが干渉したんじゃからの」
なんのために?その疑問に答えるように話は続く。
「詳しくは話せぬが、このままだと目が覚めて数時間でお主は死んでしまうんじゃ」
「……は?」
「じゃから、死んでしまうのならちょっと手伝ってもらおうかと思っての」
いきなり死ぬって言われても流石に信じがたい。いくら目の前の神様的な爺さんに言われても、はいそうですか、とはならんな……現実味が無さすぎる。
「ちなみに手伝ってくれるというのなら死にはせんよ。多分じゃが。手伝ってくれないなら間違えなく死んでしまうがのう」
「多分ってどういうことだよ。そこは嘘でも絶対って言うべきだろ」
「お主に行ってもらうところは死んでしまうことが多いからの。嘘はつきたくないんじゃ」
死ぬ可能性が高いところに行ってとりあえず生き残るか、行かないで確実に死ぬか。もしそれが本当なら答えは決まってる。
「……行った場合について詳しく聞かせろ」
「ほっほ、そう言ってくれると思ったわい。まあ簡単に言うとお主が住む世界とは異なるところに行って、やってもらいたいことがあるのじゃ」
「何をすればいいんだ?」
「その前に説明することがあるぞい」
どうやら魔法があり、人間と異なる種族がいる世界に行くことになるという話だ。当然魔物と呼ばれる化け物もいて、治安もそんなによくないらしい。
「ほう、魔法があるのか……」
少しテンションが上がる。なんかこう、ドーン!バーン!ピカーッ!って派手な魔法を使って見たいとは思ったことはある。流石に憧れる年ではなくなったが、ワクワクしないはずがない。
「ニヤニヤしてるとこすまんが、お主は使えないぞ」
「なんでだよ!普通こういう時って全属性魔法に適性あるとかそういうもんだろ!勇者だけしか使えない光属性を使えるとか!」
「お主はアニメや漫画の見すぎかの?そもそもお主は勇者ではないし、無理なもんは無理じゃ」
畜生。「な、なんだあの魔法は…」とか言われてみたかったのに。俺がいう側か。ガッカリしつつも、気になることがある。
「その行くところに住む住人はみんな魔法を使えるのか?」
「いや、全員ではないぞ?もちろん使えない者もおる」
「使えないとはどういうことだ?」
「魔力そのものがないということじゃ。お主も魔法の源である魔力そのものがないから、練習するだけ無駄じゃからな」
魔力なし…才能ないとかそれ以前の問題だな。はぁ。
「お主にはとりあえず能力を振り分けてもらいたい。死なれたら困るから初期ポイントはサービスしとくぞい」
魔力、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、素早さの6つで構成されるらしい。初期ステータスは全て5ずつで計30らしいが、サービスで100にしてもらった。
「言うておくが、魔力や魔法攻撃力なんて上げてもお主n」
「分かってるわ!ちょっと黙ってろ!」
ふーむ、どうしたものか。バランスよく上げるべきか、特化させるべきか。バランスよく上げた場合は魔力0、攻30、防20、魔攻0、魔防20、素早さ30ってとこか?でもこれって、弱くはないけどそんなに強くないような…。冒険者歴3年ぐらいの強さな気がする。冒険者とかそういうアレがあるのか分からんが。悩ましい。
「そうじゃ、お主にはこれを渡しておこう」
「ん?日本刀か?これ」
ずしっと重みのある刀を渡される。初めて持つが、想像より重く、まともに扱えるとは思えない。
「よく知らんが、お主日本人なんだから日本刀を扱うのはお手の物じゃろ?」
「日本人なのにチョンマゲじゃないの?って聞いてくる外国人並みに酷いな」
「なんじゃその例えは」
しかし、刃を見てみると素人でも分かるぐらい良い刀だ。刀身が美しく銀色に輝いており、見惚れてしまう。
「それは鍛治の神の作品でな、刃こぼれしない加護がかかっており、魔法を打ち消す効果があるんじゃ。まあ、自分の魔法も打ち消してしまう欠陥品じゃが、お主には関係ないじゃろ。フリマに安く売ってたんじゃ!」
途中までいい感じだったのに最後が台無しすぎる。
「この刀の名は【破魔刀】。魔を破る刀じゃ。これと、あと1つ魔法ではないが固有技をくれてやろう」
そう言って爺さんの手から光の球体が出現し、俺の頭に吸い込まれ消えていく。
「それは《リミッターブレイク》。本来人は全力のつもりでも力の30%ほどしか引き出せていないと言われているが、100%まで引き出すことが出来るようになるのじゃ」
「おお、すごいな!」
「まあ100%引き出したら体が壊れるからオススメはせんがな。副作用を考えると70%ぐらいまでにしておいた方がいいぞい。それでもかなり辛いじゃろうが」
さすがにデメリット無しとはいかないか。しかし、魔法をかき消す刀に力を上げる技か……よし、決めた!
「能力の振り分けは決めたぜ。魔力0、攻50、防0、魔攻0、魔防0、素早さ50だ!」
「ほっほ、すごい偏り方よのう」
「攻撃を食らう前に倒せばいい」
「ちなみにさっきお主が冒険者歴3年ぐらいって思っとったアレ、5年ぐらいが正解じゃぞ」
「心読めるのかよ!ってもう今更だな…」
能力を振り分け、貰うものも貰い話は本題に入る。
「それで、お主にやってもらいたいことなんじゃがーーーーーーーーーーーーー」
ボフッ
…………………………………ん??
目の前の光景が変わる。気づいたら草の上に尻餅をついた形になっている。どうやら、異世界に着いてしまったらしい。やってもらいたいこと言えてないぞ、爺さん。まあ俺は別にいいけど。爺さんの呆然とした顔が目に浮かぶ。
「さて」
自分の状況を確認することから始める。
魔力: 0
攻撃: 50+25
防御: 0
魔攻: 0
魔防: 0
素早: 50
固有技: 《リミッターブレイク》
振り分けた能力通りだな。+は装備分か。持ち物をみると、【破魔刀】だけだ。当然か。周りをキョロキョロ見ると、ゼリー状の丸い物体が這いずっている。
「す、スライム…?」
どう見てもスライムだ。プルプルボディで移動している。刀の柄でツンツンするとプルプル揺れる。こちらに気づくとググッと力を溜め、勢いをつけて体当たりしてくる。スローモーションのように見えるため、避けることは簡単だが、あえて受けてみる。
「…っ!」
胸元にヒットした。痛いかと言えば、痛いというほどではない。ドッジボールで胸元にボールが飛んできた程度の衝撃だ。なんともいえない。
「ん?…軽い?」
【破魔刀】で反撃しようと思ったら、さっきよりかなり軽く感じる。そういえば攻撃力50にしてたんだった。力も上がっているんだな。
「ふっ!」
刀を振りスライムを切るとポンッと消えた。うん、弱いな。いや、俺の一撃が強いのか?なんにせよ、分からないことが多すぎる。
「とりあえず情報収集だな」