魔女ですが魔法使えません!ま、いいよね~
「ここが私らの村でございます」
そう言われて案内された村は平凡な木造建築の家が数十件ある村で、村というには少々規模が大きく、都市というには少ないくらいの微妙な感じであった。
「人手ばかり多くて特に名産があるわけでもないのですが、まぁ、今回の森火事で言えば人手があることが何よりも助かっているので、不幸中の幸いというか・・・まぁ、森火事事態不幸ではあるのですが」
「な、なんかごめんなさい・・・」
アリスは森火事がもりかしたら自分の呪いによる事象なのかもしれないと思い、ついつい謝るが、村人は滅相もないと過剰に否定してくる。すごい必死だ。
「いえいえいえ、アリス様が森を燃やしたなど、疑ってはおりませんとも。ただ火事なんてのはうちの村ではこれまでなかったもので、少々気が参ってしまっているのかもしれません」
しかしアリスは考えた。でも呪いの効果でなったのは間違いないと思うんだよなぁ・・・これまでも森に住む猪とか鳥とか燃えて炭になったのとかあったし、たまに焼き損の猪が家の前に逃げてきて力尽きたりしたのを食べたりしたんだよなぁ・・・あれ美味しかったなぁ、また食べれるかな・・?
途中で思考が明後日の方向に進むのもアリスクオリティだ。見捨てないでほしい。
「それでアリス様、ポーションまでいただいた身で申し訳ないというか、図々しいのは解っているのですが、あの、アリス様は魔女ということなので、水を大量に出せたりはしませんか?」
一般的な人間というのは魔法を使えない。この世界での魔法使いは解りやすく例えると大金持ちになれるレベルで出世していく。まぁ中にはすぐ命を失うものもいるのだが・・・アリスには関係がない。なぜならアリスは
「水・・・ですか?魔法でってことなら・・・えーと、無理ですね・・・」
アリスは魔法が使えないのだ。水の一滴所か魔力の打ち出しすらできない。だが魔力はある。魔力があるのに魔力操作のできない子は稀に存在しているが、それでも成長すれば魔力操作なぞできるようになる。だがアリスは才能がなかった。いや魔法使いの才能はあるが、どうにも魔力操作だけはできないという特殊体質なのである。ちなみに普通この事実が発覚したら鬱病にでもなるのだが・・・まぁ、そこはアリスクオリティ、「ま、しょうがないよね~」で終わってしまった。
「あ、そうなのですか・・・?川まで水を汲みに行くのが楽になればと思ったのですが・・・」
「あ、でも水は出せるよ魔法じゃないけど!」
「は?」
訳が変わらないという顔をした村人には気が付かず、鞄から小さな枝木を出すアリス。
「これはねー。生命樹っていって、生物の源、まぁ所謂水をだしてくれる木なのだ!すごくない?こんな小さな木が水だしてくれるんだよ!」
「はぁ・・・木から水がですか・・・?」
アリスの言葉を疑ってはいないが、この小さな木からでる水ならば本当に少量なのではないかと持っている村人の返事にあまり元気はない。
「あ、その顔は「そのちっちゃい木から出る水ではあまり意味がない」とでも考えている顔だぞっ。ふふん。残念。めっちゃでるから、もうほんとめっちゃ」
言うも早し行うも早し、アリスはさっそく足元の地面に木を埋める。頭から埋める。するとたちまち足元の地面は水が滲んだように黒くなり、ドプドプと水が沸いてくる。
「おぉ、これはすごい。堀か噴水でも作れる勢いですね」
これには村人も感嘆の息を上げるが、アリスの用いた方法はこれだけではなかった。
「さらにここをこうして・・・こうするんだ・・・けかな?」
語尾に不穏なマークがついたがそれは村人には伝わらずアリス式の生命樹の使い方が行使される。そもそもこの生命樹、頭から埋めるものではない。根を埋め、水をかければ数分で3mにもなる樹へ成長する。その後枝を切ればそこから止めどなく水が流れてくるというなかなかに便利な物なのだが、アリスは頭から埋めたうえに、さらに成長促進の粉と流水加速の魔法薬を一滴かけている。たしかにこの二つの魔法薬はこの木に使う物ではあるのだが、しかしそれは根が地面に埋まっていて尚且つ頭に当たる部分が地上に出てなければならない。つまりどうなるかというと・・・
ドッパァァーーーーーーン
村の入り口付近で数十メートルにも及ぶ間欠泉が繰り出される。その中には生命樹が見える、通常の水を与えれば成長するのに成長促進の薬なんぞ使った日にはこの木はすぐ枯れてしまうし、枝を切ってもいないならば許容量をすぐ越え、爆発するのがオチだったのだが、地面に埋められたことと、流水加速まで使った結果、埋められた上の部分にだけ柔らかい部分があったためそこに一点集中して水を放出(爆発)してしまったのである。
「こ・・れは・・・?魔法ですか・・・?生命樹と言っていましたがこれほどの・・・・?」
絶句している。当たり前である。本来の効果ではないが、村人には、わからない。
「ぁ、ぁれ? うーん?うん。こういう感じに水がでるんだよ!すごいでしょ!」
すごい。この失敗したが万事オッケーみたいな対応がすごい。そして何度も言うが本来の効果ではない。村人、騙されるな。
「素晴らしい木ですね・・・これなら何もせずとも火事も消えましょう・・・これは・・・なんとお礼をすればいいかわかりませんね・・・」
知識がなければそういう物だと思うのはわかるが村人、それでいいのか?・・・いいのか。
「私は森に住んでたわけだから別にお互い様なんじゃないかな?大丈夫大丈夫。これくらいわけないよ!」
たしかにアリスにとっては特に問題もない、生命樹はこの森で採れたものであり、他の薬品もこの森で採れた薬草から作り出されている。しいて言えば森への恩返しといったところか。
「しかしなぜ周囲が燃えている時にこれをしなかったのです?」
不思議そうに村人が尋ねると
「・・・あっ!」
アリスは今気が付いた声を出した。悪気はないのである・・・ただアホの子なのだ、見捨てないであげてほしい・・・。