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7.6大魔王会議 中編

「今回の議題は最近になって現れ始めた異世界から来たとされる勇者、通称転生勇者と呼ばれる者達についてじゃ」


 転生勇者……つまり昨日戦った奴の事か。


「ここ最近現れだした転生勇者は今までの勇者とは桁違いに強い、しかもLv事体は大したことないときておる。今のまま儂ら魔族が狩られ続けるような事になればこの転生勇者共はさらにLvを上げ脅威になるじゃろう」


 確かにその通りだ。

 勇者のLvに今のところ上限というのは無いらしいので、転生勇者達は魔族を倒す毎に延々と強くなっていく。

 それに比べてこちらにはそういったLvという概念が存在しない。

 ステータスはあるにはあるようだが、魔族側からは自身のステータスを確認できないのだ。


「だったらぁ、その別世界から来たとかいう転生勇者を私達6大魔王で一人残らず殺しちゃえばいいじゃないのぉ」

「それができたら苦労はせんわい」

「どういう意味ぃ?」

「貴様、人間が住む町にある教会というものを知っておろう?」

「もちろんじゃないのぉ、人間が神様にお祈りしたりする場所でしょぉ?」

「そうじゃ……いや、今まではそうであったと言うべきかの」


 なにやら意味深な発言をするネリガル。


「のう2代目よ、貴様は話によれば転生勇者の1人とつい先日戦ったらしいではないか」

「あぁ、戦ったぜ。でもそこまで強さは感じなかったし、この俺がしっかり殺してやったぜ」


 とりあえず威厳回復のために強めの口調でネリガルの質問に答えておく。


「しっかり殺したか……してその死体はどうなった?」

「死体……そういえば気づいた時には勇者の死体は消えてたな……」

「やはりか……」

「どういう事なんだ?」


 先日俺が殺したギルバードと言う勇者とその仲間の女2人。

 死体の片付けのための道具をラミアと取りに帰り、現場に戻った時には勇者の死体は無く、あったのは仲間の女達の死体だけであった。

 確かに不思議に思ったが、森に住む魔族が死体を食べるために持って帰ったのだとばかり思っていたんだが……


「それが教会じゃ。情報によればどうやら教会はある限られた人間を蘇生する魔法を完成させたらしい……」

「なに……」

「もう察しはついたじゃろう……限られた人間とは転生勇者の事、あやつらは死んでも近くの教会で再度蘇生される……言わば不死身ということじゃな」


 なんだそれ……

 そんなのどうしようもないじゃないか……


「ちょっと待ってぇ、それってつまり転生勇者は殺しても死なない上にステータスの上昇率も他の勇者とは桁違いってことでしょ? なら転生勇者は無限に強くなっていくってことじゃないの……」


 その通りだ。

 殺しても殺してもキリがない。

 それどころかこちらの手の内はバレ、敵はどんどん強くなっていく。


 くそ!

 教会で復活とかゲームの中だけにしてくれよな……マジであいつらチートじゃねぇか……


 俺はその話を聞いてあらためてRPGの敵キャラの苦労を知った。


「でもさー、教会さえ壊しちゃえば蘇ったりしないんだよねー?」


 ここまでずっと足をバタつかせてつまらなそうに話を聞いていた獣人族の魔王幼女ミミカがそう言った。

 思わずその発言に俺は感心してしまう。

 それは天使族の魔王スレイスも同じ様子だった。


「流石ミミカちゃまじゃのう、他のボンクラとは大違いじゃ~」


 気色悪いぞアンデット族の魔王……


「あなたの言いたいことは分かったわぁ、つまり私達魔族のこれからの標的は勇者ではなく教会ってわけねぇ」

「うむ、この大陸に存在する教会は分かっているだけで108箇所。儂らでそれらを全て叩き潰す」

「なるほど……面白くなって来たわねぇ」


 ニヤリと笑みを浮かべるスレイスの顔は天使と呼ぶにはあまりにも邪悪だった。

 やはり天使族とは言え魔族という事なのだろう。


「参考までに聞いておくが貴様のところの勢力は今どれくらいじゃ?」

「えーと、ざっと2万てところかしらねぇ、あなたの方は?」

「儂の方は5万弱と言ったところじゃろう」


 なんか物凄い数字が飛び出してるぞ。

 魔王たちの勢力ってそんなに多いのか?


「ミミカのお友達は10万だよー!」

「10万!?」


 獣人族多すぎじゃないかそれ!?

 こんな幼い子が10万人の魔族の王という事実に俺は思わず声を上げてしまう。


「ミミカちゃまは人気じゃからのう~、して2代目よ、貴様のところの勢力はいかほどじゃ?」

「え、あ、えーと……ふ、ふたり?」

「なんじゃ聞こえんぞ、大きい声でハッキリと喋らんかい!」

「えっと……2人……です……ごめんなさい」


 つい謝ってしまった。

 しかし事実なのだから仕方がない。


「まぁじゃろうな、元から吸血鬼なんぞには期待しとらんわい。所詮はもう終わった種族じゃ」


 うっ、なんか癪に触る言い方だな。

 吸血鬼だって好きで絶滅したわけじゃないだろうに……


「なんじゃ何か言いたいことがありそうじゃのう」


 そう言ってネリガルはギロリとこちらを睨んだ。

 なんだ、別に俺は何も──


 ここで気づいた。

 俺の隣に立つラミアが涙を浮かべてネリガルを睨みつけている。


「言いたいことがあるなら言わんかい小娘、無礼講じゃ、今なら貴様の発言も寛容に聞いてやろう」

「で、では……無礼を承知で言わせてもらいます……」


 ラミアの体は僅かに震えていた。

 まだ魔族になったばかりの俺にはあまりわからないが、魔王というのは一般の魔族から見れば相当上の立場の者のはず、当然と言えば当然だ。


 しかしラミアは言った。


「吸血鬼は……吸血鬼は終わってなどおりません! ここにいるノノ様は闇の支配者にして我々吸血鬼の王ヴァンパイアロード! あなたのような老いぼれとは違い未来を作っていくお方です! 死神様も、天使様も、獣神様も笑っていられるのは今だけです! きっとノノ様はどの魔王よりも強く、そして強大な勢力を作られるでしょう!」


 そんなラミアの叫びをネリガルは聞き終えると、ふんと鼻で笑った。


「ほう、そこの2代目が儂らより強くのう……カカカッ、吸血鬼の女はよほど冗談が好きと見える。そうは思わんかスレイス?」

「そうねぇ、確かに先代のヴァンパイアロードは強かったわぁ……この私が惚れちゃうほどにねぇ。でもそこの可愛い2代目が私達より強いだなんて到底思えないわぁ、まぁ大事な大事なご主人様を信じたいって気持ちは立派だけどぉ」


 2人の魔王はそう言うと俺を見て馬鹿にするように笑った。

 ラミアは俺の横で悔しさをこらえるように拳を固く握り、血が滲み出るほど唇を噛み締めている。 


「そもそも吸血鬼などがこの6大魔王という称号を与えられているのは全て先代のおかげではないか、ならばそこの若造が儂らと同等の立場でこの場にいるというのがまずおかしな話、魔王とは全魔族の王として──」


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ糞ジジイ」


 ネリガルの言葉を遮って俺は言った。


「確かに俺はあんたらから見たら魔族になりたてのひよっこだ。だから何を言われようとどう思われようといいさ、だけどよ……」


 今目の前にいる魔王達がただの魔族でないことくらい俺でも分かる。

 だけど今はそんなの関係ない。


 なぜなら──


「俺の命の恩人をバカにするならてめぇら魔王なんて俺がまとめてぶっ飛ばしてやるよ!!!」


 俺は立ち上がり、中指を立てて偉そうにふんぞり返る2人の魔王に言ってやった。

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