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36.闇の軍勢の作戦会議

「……以上がコウモリさんが集めてきてくれた情報になります」


 今、俺たちは城の大広間にてラミアがコウモリ型の魔族を使って得た情報を共有しているところである。

 大広間の席に腰掛ける魔族は俺とラミアと希沙良、そしてロウガとチュータの5人。

 まだ軍と呼べる程のものではないかもしれないが、とりあえずは現状での俺の軍の幹部という事になる。


「ありがとうラミア」


 ラミアが持ってきてくれた情報はネリガルとスレイス両魔王の動向、そして王都に召集されたという勇者の詳細である。


 ネリガルについては大方予想通りと言ったところだろう。

 軍を使って村々を襲い、教会や勇者総合案内所を破壊する。

 まさに今の俺がやりたいことだ。


 気になるのはスイレスの動き。

 スレイスが殺したという4人の勇者は、勇者の中でも名の知れた歴戦の猛者達だという。

 確かあの時スレイスはディルハンブレットを殺すつもりであの場にいたと言っていた。

 脅威となり得る勇者の排除、そして無駄な争いを避けて教会を的確に潰していく手法。

 スレイスは魔族と人間の戦いを見越して行動しているのかもしれないな。


「しかし勇者への召集か……一体人間は何を企んでんだか……」


 ラミアの話によれば王都ベルシオンに集まった勇者達は200人以上という事で、人間が俺達魔族に対して何か厄介な動きを起こそうとしているのは間違いない。

 集まった勇者も有名な勇者ギルドや4大英雄に次ぐ実力を持つとされる最上位の勇者達、そして最近目立ち始めた転生勇者達ということなので、スレイスが言っていたように近々大規模な戦闘が起こるかもしれない。


「王都にコウモリさん達を忍び込ませられればもっと情報を得られたのですが……やはりここは様子を見る他なさそうですね……」


 どうも王都には4大英雄の一人である大賢者ガスタ・ウィザードという男が魔族の侵入を拒む強力な魔法結界を張っていて、一般の魔族では足を踏み入れるだけで消滅してしまうらしい。


「フン、人間共がなに考えてるかなんてのは今ここで話し合っても結論はでねぇだろ。それよりも今後俺達がどう動くかだ」

「あぁ、ロウガの言う通りだな。一応俺からもその事でいくつか皆に話があるんだが……その前に一つ聞きいていいか?」

「あんだよ」

「なんでお前肩にメル乗せてんだ?」


 この大広間に集まってからずっと気になっていた事を俺はやっとロウガに尋ねた。

 ロウガの大きな肩にはキツネの獣人族の双子の姉であるメルがその小さな体でちょこんと座っていた。


「知るかよ。こいつ、ここに来てからずっと俺にまとわり付きやがって邪魔なんだよ」


 露骨に面倒くさそうな態度を取るロウガ。

 そんなロウガの足元には、双子の弟であるネルがロウガとネルを交互に見ながらオロオロしている。


「んなことより話ってのはなんだ?」

「キャハハ、ロウガの体おっきいー! ネルもきなよー!」

「今後の話ってんなら、もちろん勇者を撲滅させるための話なんだよな?」

「い、いやぼくはいいよ、それよりもみんな大事な会議中なんだからじゃましたらまずいって……」

「てめぇは仮にも俺のボスなんだからよ、いい加減他の魔王共に先越されてねぇでそれらしい事見せてくれねぇとな」

「えー、ここ見晴らしよくてすっごいおもしろいよー! ネルはチビなんだからロウガに登っておっきくならないと!」

「俺だっててめぇのせいで他の魔王共にナメられんのは癪だか──」

「チ、チビって言うなよ!!! メルだってチビじゃないか!!!」

「わたしは女の子だからちっちゃくてもいいんだよー!」

「なっ──! 女とか男とかそんなの関係な──」


「うっせんだよガキどもッ!!! さっさとどっか消えやがれ!!!」 


 ロウガが子供にマジギレした。

 

 その怒鳴り声にメルはケラケラと楽しそうに笑い、ネルは必死に謝りながら一目散に逃げていく。

 そんな光景を見て俺は心の中で「よかった」と呟いた。

 ヴォルグスの話では、人狼族は過去に獣人族を裏切って俺達吸血鬼の軍に入ったという事だった。

 だからロウガ達人狼族と獣人族であるネルとメルの関係を心配していたのだが、今までの様子を見る限りでは杞憂だったようだ。 


「あーらら。あんな子供に怒鳴りつけるなんて、もうちょっと大人になった方がいいんじゃない」

「あァ?」

「仮にもあなた一族の長なんだし、その言葉使いとか態度、この機会に改めてみたら? それじゃあただの野蛮な盗賊のままよ」

「ハッ、よく言うぜ。てめぇこそもっと大人になれってんだよ。そこのネズミに自分の事姫様だなんて呼ばせちゃって、あー恥ずかしい恥ずかしい。そんなお姫様ごっこなんかしてるからいつまで経っても体が成長しねえんじゃねえか?」

「は──?」


 うん、こっちは問題ありだな。

 正直なところ希沙良とロウガが性格的に相性が悪いのは薄々感づいていたが、ここまでとは……

 

「まぁまぁ二人ともそんな喧嘩腰にならずに落ち着けって。ロウガも希沙良ももう仲間なんだから仲良くやってくれよ……」


 とりあえず仲裁に入ってみるが、相変わらず二人は火花を散らして睨み合っている。

 これはさっさと本題に入った方がよさそうだ。

 俺は一度咳払いをしてから、無理やり話を続けた。


「あー、もう本題いくぞ本題。まず俺達の今後の行動についてだが、大きく分けて2つだ。1つ目はこの城と周辺の森の防衛力を高めること、2つ目は村の教会を壊し、その村を俺達で支配することだ。まず城と周辺の森の防御についてはラミアから話す」


 そう言って俺はラミアに話を振った。


「では、私からまず、今この城がどのような状況に置かれているのかを簡単に説明させていただきます。皆さんご存知の通りこの城は広大の森の中心にあり、外からこの城へ来ようとすれば勇者の足でも半日はかかるでしょう。さらに森には私の友人である強力な魔族、そして私の幻影魔法や催眠魔法が至るとこをに張り巡らされております。以前までならこれだけである程度勇者からの襲撃を回避できると思っておりました」


 そう、以前まで──つまりあのディルハンブレットと出会うまではそれで充分だと俺も思っていた。

 しかし人狼族の住んでいた森の半分を燃やし尽くしたあの魔法。

 あのクラスの魔法が今後俺達の住むこの森に使われないとは考えにくい。


「ノノ様にお聞きした4大英雄との一件から今のままでは危険と考え、先代様の時代に使われていた防御結界用のゴーレムを起動しようと考えております」

「ゴーレムか……確かにアレを起動させてりゃ安心といやぁ安心だが……」


 どこか複雑な表情を見せるロウガ。


「どうしたロウガ?」

「いやなに、人間共が作ったもんに頼るってのが少し気に食わないだけさ。まぁ仕方ねぇがな」

 

 人間が生み出した魔族ゴーレム。

 数百年前に人間の賢者達がその膨大な知識と魔法を使って作り出した人工的な魔族。

 ラミアによれば作り出されたのは数体のみで、最高クラスの攻撃魔法をも防ぐ事のできる結界を有する。

 その機能からゴーレムは主に町の守護の役割を担っていたそうだが今はもう作られておらず、起動しているゴーレムもいないらしい。

 理由としては、人間の手で新たな生命体を作り出すという行為が神を冒涜する行為だという声が多く上がったからだということだが、真偽の程は不明だ。


「そう言うなロウガ。いくら人間が作ったとはいえ魔族なら俺達の仲間だろ」

「まぁ……そうかもな」

「それでゴーレムの件についてはラミアに任せていいんだな?」

「はい……ただ私も保管されている場所を知っているだけで実物を見たことはありません。なので本当に起動させられるのか……」

「とりあえずは実物を見ないことには始まらないか……」


 しかし今この場所を守るには魔法を防ぐことのできる防御結界は必要になってくる。

 仮に上手くゴーレムを起動できなくてもなんとか他の手段を考えるしかないだろう。


「城の防衛については大体分かったわ。それで2つ目の村への襲撃の方は?」

「あぁ、それについてはもう大体作戦は練ってある。その話をする前に実験・・の話をしておこう」

「実験?」

「あぁ。魔王……つまりヴァンパイアロードの力、眷属化の実験だ」

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