第二章 下 四臣家であるから自分を貫く
慈桜勇也等が食事を始めた頃、光財学園から慈桜家仮屋敷に行った茶髪パーマの松庭美礼と微笑み顔の桜庭礼実は慈桜家仮屋敷の一室にいた。
慈桜家仮屋敷を簡単に案内する。
城壁に囲まれる広大な敷地は住宅地よりも高い位置にあり、石畳の階段を上がると表門がある、表門は東西南北にあり四軒の屋敷にはそれぞれ裏門がある。この屋敷が四臣家の屋敷になる。
裏門から更に敷地内に入ると、野球場がスッポリと入る草木が一本も生えない庭、その中心には権力を象徴するように3階建てぐらいの高さで建てられた平家屋敷、慈桜家仮屋敷になる。
慈桜家仮屋敷を上空から見た構造は四角形の平家屋敷だが中に入ると一変した二重構造、まずは桜の木と池がある吹き抜けの中庭を囲うように四角形になる縁側があり、数多い襖がある、その居住空間から東西南北に奥に繋がる廊下があり、東側には調理場、西側には道場、南側には神社の本堂のような玄関、北側には男女で分かれた浴場がある。
松庭美礼や桜庭礼実は西側の道場にいる。
道場と言っても畳100枚を越える広さな為、美礼と礼実の背後にいる古白街出身の100人の少女を入れても余裕がある。
美礼と礼実の正面にはメガネをクイッと上げる里見真一と中性的な顔立ちの堀井竪郎がいる、そして向かい合う4人を正面にする渓谷茜、横にアンゴラウサギのリュックサックを置き、見た目の幼さから一人だけ場の空気に合っていない。
茜はコホンとワザとらしく咳をする、自分が東桜臣家として仕切らなければ、とガチガチに緊張してしまい挙動不審になる。
道場内は茜以外はピリッとした空気を出し、お互いに牽制しているように伺える、その空気を裂くように美礼は背後に振り向き口を開く。
「みんなは帰ってもええんやで?」
「いえ、手伝わせて頂きます」
返答したのは100人の少女の先頭に座る凛とした佇まいの少女、長い前髪を綺麗に横に流すロングヘア、見た目から華がありオーラもある、美礼や礼実がいなければ100人の少女をまとめていたのは彼女だろう。
「手伝う言うてもなぁ、このデカメガネと愛想無い女顔やったら殺してもええけど、アホ天パは『たまたま』殺さなあかんねん、結果死にましたぁ的にせな後々めんどいねん、解るやろ?」
「私達は『たまたま』居合わせるだけです」
「アホや言うても朱の血筋やからな……みんなが手を出すのはなぁ……」
視線を正面に向け真一を見ると更に続ける。
「デカメガネ? みんなが手を出したら『たまたま』でも南の分家が出しゃばるんやろ?」
「何故俺に聞く?」
「そんなん南の分家に聞いたら『今の会話が朱の血筋に対しての不穏』とか言うやろ?」
「当たり前だ、北桜臣家としても許せる会話では無い」
「私が言ってもみんなは『たまたま』帰らんからお前がどうにかせぇよ、て女心はそのメガネには写らんのか?」
「まったく写らないな」
「曇ってんちゃうの? 私が『たまたま』朱の血筋に挑む所に東のアホが邪魔しに来たら、『たまたま』居合わせたみんなが『たまたま』東のアホを殺す、という100人の女心まで見えんようじゃ先は思いやられるで?」
「こっちは現在進行形で思いやられている、それに『まだ、二年半前の真実を聞いていない』、
今の南桜臣分家は朱の血筋の指示待ち、北桜臣家は話しを聞いた後に対処を考える、
西桜臣分家が思い描く争いよりも、話し合いの余地があるかを北桜臣家としては考えたいところだ」
「『たまたま』やって言うとるやろ? 私は誰にも邪魔されんと朱の血筋と殺り合えたらええんや、『真実』なんて私が朱の血筋を斬ると決めた、で十分やろ?」
「西桜臣分家として言ってるなら十分だが、松庭美礼として言ってるなら不十分、
先程のように私情で動いたとしても四臣家の立場からしか民は俺達を見ない、朱の血筋と四臣家の私情の対立は良い結果を生まない、
北桜臣家としては朱の血筋と母親の話し合いを推奨する」
説得を含めた仲裁と自分の意見を交える、四臣家をまとめるのも北桜臣家の役割なのだが、個人個人の主張が強くほとんど北桜臣家の言葉が届かない。
「松庭美礼として東のアホを斬るのはええんやな?」
「かまわない」
100人の少女が朱の血筋に刃を向けるとなれば南桜臣分家が動く、北桜臣家としても朱の血筋を護る、だが、東桜臣家は別、朱の血筋に関わる事で四臣家同士の協力はあっても役割を逸脱した助け合いは無い、このような私情の争いなら特に。
「ほんなら、私の前に東のアホがおって、『たまたま』居合わせたみんなが東のアホを斬るのはええんやな? 結果死んでも四臣家としては問題無いんやな?」
「問題はあるが東桜臣家の場合は妹が学園にいる」
茜も当主候補として学園に飛び級している、蒼が死ぬ事は四臣家としては問題ある、だが、実力不足で負けてしまい結果死んでしまうのは、学園に通う以上は仕方が無いと割り切るしか無い、という意味だ。
「よっしゃ、みんなは東のアホを殺ったらええわ、危なくなったら……いや、隙があったら私が殺す」
真一が四臣家として蒼を擁護しないのは解っていた、しかし、自分の私情での争いの為、蒼が危なくなったら真一や竪郎が助けに入る事も私情で許される、美礼は少女等を護る為に真一から『蒼を助けない』という言葉を出させる必要があった。
真一は美礼の気持ちを解って蒼を矢面に立たせた、蒼を信用しての発言なのか言葉通りの妹が学園にいる為の割り切りなのかは真一にしか解らない。
100人の少女は会釈をするように一礼、頭を上げると先頭にいるロングヘアの少女は口を開く。
「それでは私達は夜戦の準備をして参ります」
「ちゃうちゃう! 夜戦の準備やない!」
ワザとらしく過剰に反応する、「アレやで?」と言い、更に続ける。
「私等はな、殺風景な庭で入学式の打ち上げをしようとしとってん、『たまたま』庭に灯りが足りんなぁ、灯りが欲しいなぁ、ってなるやろ? その時に、松明があったやん!? って設定や」
「西桜臣家の御屋敷に『たまたま』ある松明を拝借して来ます」
「そうやで、屋敷にある松明は『たまたま』私が用意したもんや、ミルクちゃんを拐ってアホ天パごと慈桜家の屋敷を燃やそうとしてたんちゃう、北と南分は誤解するんやないで?」
「一つ種を拐って屋敷を燃やす気だったのか?」
「お前人聞き悪いで? 私はアヤちゃんの従姉妹や、従姉妹の子供と遊んどったら屋敷が燃えるだけや、ちゃうな、『たまたま』油まみれの松明にグルグル巻きになったアホ天パが燃えるだけや、屋敷はアホ天パの火の不始末や」
「たまたま油まみれの松明を身体に巻くのか?」
「あの天パを見たやろ? 天パを更にチリチリにしたかったんやろ、天パの鏡や」
どこまでが本気なんだ、と真一と竪郎は思ってしまう、そして美礼は『たまたま』という言葉であらゆる手段を用意してると確信する。
「『たまたま』やで『たまたま』、何事も『たまたま』やったら『たまたま』って言えるんやから」
「はい、『たまたま』西桜臣家の御屋敷にある松明を『たまたま』見つけて参ります」
100人の少女は立ち上がり一礼すると道場を後にした。
真一は呆れるようにため息を吐く、少女等が本堂を後にしたのを確認しメガネをクイッと上げ美礼を見る。
「後々何があっても、あの者等は何も知らない、と言えるようにしたかったようだな?」
「何を言うとんねん? みんなは『たまたま』おるだけやろ」
「それが通用すると思っているのか?」
「『たまたま』なんやからしゃあないやろ?」
そんなもの百も承知、それでも『たまたま』であり、少女等は自分の私情に『たまたま』巻き込まれた、と美礼は貫き通す、少女等を護る為に。
「聞いてた話しと違うな」
「何がや?」
「いや、『西桜臣家を護る立場としては優秀であり、西桜臣家としては未熟』と聞いていた、あの者等が刃をこちらに向けて来たら西桜臣分家としてどうするんだ?」
「どんな答えを期待しとんねん? 優秀やったら斬るんちゃうん? 未熟やったら殺すんちゃうん?」
「それは西桜臣家としてだな、松庭美礼としてを聞きたい」
「アホか、それこそどんな答えを期待しとんねん、そもそもお前……ちゃうな、お前等もおかしいやろ? 北が私情の仲裁に入る、南分が朱の血筋の側におらん」
「どんな答えを期待しているんだ?」
「……、どんな答え? ますますおかし……、!、お前等、二年半前の事に納得いってへんのか?」
呆気に取られる表情を真一と竪郎に向ける、竪郎は視線を流し、真一はメガネをクイッと上げ口を開く。
「北桜臣家、南桜臣分家、として聞いてるのか? それとも里見真一、堀井竪郎として聞いてるのか?」
「アホやな、……」
「私もいいですか!?」
挙手するのは茜、兄が矢面に立たされる話しや今の今までの会話を聞き、自分の出る幕が無い、と今か今かと出番を伺っていた、自分に視線が集まり更に緊張するが身を乗り出し更に続ける。
「二年半前! お兄ちゃんはお父さんに『東桜臣家として答えを出せ』と言われてました!、
話しの内容は、母親が朱の血筋の子供に対応できない場合! 母親が重症になり限りなく死んだ状態になった場合!、
朱の血筋は、その母親と子供を離す! と提案! それを四臣家としてどうするか!? 四臣家当主会では西•南•北そして慈桜家は母親と子供を離す! お父さんだけ答えを保留!、
あの頃は解らなかったけど、お父さんは東桜臣家としての答えをお兄ちゃんならどう出す!? と聞いてました!?」
「……僕も父に同じ問題を出されました、朱の血筋とその妻の今の現状とは考えず、将来的にその問題が発生したら、として判断してしまいました、
当時の僕には南桜臣分家としてでしか考えれなく、母親には子供と離れてもらう方を選びました」
「北桜臣家でも同じ問題が出され、俺も離すしかないと答えを出した、だが、『納得の上の了承』で子供と母親を離す事に賛成するのが北桜臣家の答えだ、と父は言っていた、
今日、朱の血筋といる一つ種を見て、あの時の父に出された問題の意味を知った、
西桜臣本家、北桜臣家として、俺個人として、浅はかな答えを出した事、何も出来なかった事を謝罪する、申し訳無い」
深く頭を下げる。
「いえ、私の不徳の致すところです」
微笑み顔を変えずに「頭を上げて下さい」と続ける。
「僕もです、朱の血筋とその妻の気持ちを読まずに出した答え、朱の血筋を本当の意味で護る事を出来ませんでした、申し訳ありません」
竪郎が深く頭を下げると茜も深く頭を下げ謝罪する。
「ごめんなさい!! 私も離すしかないって思いました!! お父さんはいつもならそんな答えを出したら怒るのに自分も離すしかないって言って怒りませんでした!! 私! あの時……ホッとしてしまいました……ごめんなさい」
自分の出した未熟な答え、その重さ、歯軋りを鳴らし、畳に涙を落とす。
「南桜臣分家様、頭を上げて下さい、茜さんもお気に病まず、私の不徳の致すところです、私が……」
「アヤちゃんは悪う無い!!」
礼実の言葉を止める、拳を握り締めガンッ! と畳を抉り、更に続ける。
「私が西桜臣分家として護れんかったんが悪いんや!! 北も南分も茜ちゃんもや!? アヤちゃんを護るんは私や!! 私が!!『ケジメ』付けなあかん事や!! 頭なんか下げんでええ!!」
勢いそのままに立ち上がり道場の出入口に向かう。
全員が同じ答えだった事での安堵は無い、礼実を護る立場の自分が全員と同じ答えだった事に恥じを感じ、奥歯を噛み締める、歯茎からは血が流れ、握る拳は自分を痛めつけるように道場の扉を殴り飛ばす。
廊下からは美礼が壁や窓ガラスを破壊する音だけが響く、真一はゆっくりと頭を上げメガネをクイッと上げながら道場の出入口に視線を向ける。
「真実は語るまでもない、俺達は全員同じ答えを出していた、北桜臣家として未熟なまま学園に来てしまったな」
「違います、同じ答えじゃないです……」
呟くように言うのは茜、目元にある涙を拭き取る。
「?、どういう意味だ?」
「お兄ちゃんは……あの時に『離す? 離さない? そんなのどっちでも無いだろ』と言ってました」
蒼だけは違う答えを出していた、しかし、その答えは『どっちでもない』。
「どっちでも無い? 答えは二択しか無い、東桜臣家当主はなんと言っていた?」
「お父さんは『答えは二択、どっちでもないとはなんだ?』と聞きました、
お兄ちゃんは、『朱の血筋と母親を考える前に子供はどうなんだ? 泣いてるだけで解らないって言うなら、朱の血筋の父親がその気持ちを一番解ってんじゃないのか? 母親と子供の気持ちも解らない朱の血筋なら、俺の答えはどっちでもない』って……」
「気持ちでは現状の打破は出来ない、東桜臣家もそれは解っていると思うが?」
「違います! だからお父さんは当主会で東桜臣家の答えを保留にしたんだ! だからお兄ちゃんは勇也さんに付いたんだ!」
「?、どういう意味だ?」
「お兄ちゃん、山で遭難して勇也さんとミルクちゃんに会った事をスゴい楽しそうに話してたんです、何にも興味を出さなくなったお兄ちゃんが……、
その勇也さんが礼実さんを蔑ろにする訳ない! やっぱり『どっちでもない』んです!? お兄ちゃんは二年半前に答えを出してたんです!?、
だから四臣家のみんなが自分と違う答えだった事で、自分が四臣家である事を放棄したんです!!」
「どっちでもない……か」
「あの時に四臣家の秩序•教育•法律を飛び越え、『朱の血筋の秩序•教育•法律』に私達が踏み入り、母親礼実さんの代わりにミルクちゃんに殺される覚悟があったのは、当時ではお兄ちゃんだけです……、今、いえ、傷を負った礼実さんを見て美礼さんは、覚悟が足りなかった自分に気付いたんです」
!……真一•竪郎は美礼が『たまたま』と口にする理由に気づく。
「南桜臣分家として今回の件は『東桜臣家に西桜臣分家の処分を任せます』、もしも松庭美礼がケジメを貫くなら……」
「南桜臣分家は動くな、朱の血筋を後世に残す為には西桜臣家と南桜臣分家は無くせない、俺がケジメを受け止める」
ケジメとは役割を果たせなかった四臣家の末路である。
しかし、美礼は朱の血筋の結婚相手を産む西桜臣家としての役割もある、美礼のケジメは朱の血筋の絶滅を生むのだ。
「礼実さん!?美礼さんを……」
「止めれません」
「なんでですか!?」
「美礼さんがミルクを産み、同じくミルクに対応出来ないでおめおめを帰って来たら、私も美礼さんと同じく朱の血筋に『ケジメ』を求めます、
朱の血筋が自分よりも弱ければ、美礼さんを護れなかった事に対して『ケジメ』を与えます、
西桜臣家を護る立場の者の『ケジメ』です、最初からミルクの為に死ねなかった私に口を挟む資格はありません」
母親として未熟、西桜臣家としても未熟、自分の未熟が生んだ四臣家の乱、礼実は結果を受け入れるしかない。
「話しに聞く西桜臣分家では民を従える事は不可、ですが、100人もの古白街の者が松庭美礼に従っています」
「愚問だったな、あの女等は松庭美礼を西桜臣家として既に認めてる、認めているから松庭美礼を護ろうとしてる」
「南桜臣分家としてでは無く堀井竪郎として、100人の西桜臣家の者を守らせて頂きます」
ゆっくりと立ち上がり礼実に一礼する、道場の出入口に歩を進めそのまま道場を後にする。
「私! お兄ちゃんに今の話しを伝えます!」
アンゴラウサギのリュックサックから携帯情報端末を出し蒼に繋げる。
「……?、なっ!? 電源切ってる!! 何してやがんだクサレ兄貴!!」
「今の朱の血筋と東桜臣家にしてみられば追われる身だ、自分達の位置情報を教える手段を断つのは定石だ」
「さ! 探して来ます!!」
「無駄だ、東桜臣家なら科学的に足の付く逃げ方はしない、出会った民の家にいるか空き家に忍び込んでるかだ、
朱の血筋がいるから大量の食料の流れを調べれば解るが、東桜臣家がいたら赤樽美酒を使い最低限の日割り受注にして民家を渡り歩く、
他にも、南の街に行ったから畑の野菜を貰ってる可能性もある、相手が誰であろうと飢えさせないのが南の住民、子供がいれば尚更飢えさせない、現状で探すのは不可だ」
「山に帰ってるかもしれません!!」
「それなら大丈夫だ、学慈街から出れば北桜臣家に連絡が入る」
「どうするんですか!?」
「可能性の話しになるが、東桜臣家が『どっちでもない』と判断しているなら一つ種の最優先を考える、真実を知れば今日にでも行動を起こすはずだ」
「お兄ちゃんなら直ぐに来ます! でも!」
「もしもの時は北桜臣家と南桜臣分家の名にかけて二年半前にかけれなかった命をかける」
メガネをクイッと上げる。
茜は自分の無力を理解している、真一の命をかけるという言葉に対して自分も命をかけるとは言えない。
「私は何をしたらいいですか!?」
「北桜臣家が死んだ場合だが、大人達や学園の上級生が政治の中核になろうと動く、
その時は『慈桜家使用人と学慈街を出て古白街慈桜家仮屋敷に逃げろ』、その際は一つ種を最優先、次に母親、次に自分だ、
朱の血筋と東桜臣家は放っておけ、あの2人なら『死んでも次があると思っている』、
どんな事があっても一つ種を『お祖母』に預けろ、これは俺が死んだ場合や北桜臣家が政治的な圧力がかかった場合の対処方だ、覚えておけ」
「北桜臣家が政治的な圧力?」
「今回のような異例で北桜臣家が無くなるのは別にして北桜臣家が無力になる時がある、
それは、四臣家の先代や先先代と争う場合だ、北桜臣家はその場合、中立を貫き通す、西桜臣家と南桜臣本家は現代の秩序と法律で動く、
問題は南桜臣分家と東桜臣家だ、今の俺達じゃ逆立ちしても大人達に勝てない」
「大ジジなら味方に……」
「ダメだ、孫の代の四臣家が失う事があれば、ひ孫の代の為に関わる大人達を滅ぼす、俺等四臣家が抱えるのは秩序•教育•法律のような政治では無く、朱の血筋の事情で行う殺戮を防ぐ事だ、この辺が非常に難しい、四臣家の大人等と一戦かまえる事が無い事を祈りたいもんだ」
「ばあちゃんに頼むのなんか心細いんですけど……」
「『お祖母は完全に俺達の味方だ』、祖父だろうが先先代の朱の血筋だろうがお祖母には敵わない、
普段は問題有りのお祖母だが、乱れた政治や武力の中では朱の血筋を越える、その後の手綱は『苑水老』に任せろ」
メガネをクイッと上げ更に続ける。
「俺等の代は最悪な始まりからスタートだが、乗り越えれば先代や先先代に負けない四臣家になる、それに一つ種の結婚相手を産むのは松庭美礼だ、北と南の分家が失っても松庭美礼は生かさなければならない」
「はい!!」