#5
「はぁ~あ、疲れた…。ありおりはべりいまそかり、ありおりはべりいまそかり…」
「ちょっと翼うるさい!!!すいへーりーべーぼくのふね、すい、へー、りー…ああああ忘れちゃったじゃん翼のばか!!」
「バカってなんだよ!おまえの方がバカだろーがバカ都!!」
そんな他愛ない会話をする塾帰り。二人とも、それぞれ暗記テストのやり直しで居残りをさせられていた。
「今夜は月、明るいな…ん?おい都、あれ…。」
俺の視線の先には、妙な灯りが燈る桜舞神社があった。
俺らは普段塾の帰りにここを通るのだが…
初夏なのに満開の桜、それを燈す提灯…まるで、そこだけが違う世界のように綺麗なのだ。
こんな桜舞神社、見たことない。
「なんか、綺麗だな。ぼやぁ~っとしてて…」
都はその景色に吸い込まれるかのように近づいていく。
手が灯りに届く…そう思った時、
ドォォォォォォォォォン!!!
物凄い轟音がした。反射的に体は後ろへ下がっていた。
「おい、なんだよ今の…っ!?」
______そこには、見たこともない大きな怪物がいた。いきなり拳を振り上げてくる。
「わっ!」
慌てて攻撃を避ける。間一髪避け切れたようだ。
しかし、都が見当たらない。
「都…?」
名前を呼ぶと、袖を引っ張られた。どうやら俺の後ろへ逃げていたようだ。
「翼…何、これ…!?」
「わかんねぇけど、とりあえず逃げるぞ!!」
俺は都を立たせて神社の奥の森まで走る。
5分ほど経っただろうか。俺たちは、森を抜けてもう一度神社の境内の裏で座って休んでいた。
「はぁ、はぁ…都、大丈夫か?」
「大丈夫…ちょっと疲れたけど。」
もう足音は聞こえない。何とか逃げられたようだ。
そう思ったのもつかの間。
「翼…後ろ!!」
そう言われ後ろを向くと、さっきの怪物の姿があった。
怪物は拳を振り上げる。
立ち上がろうとしたが、駄目だ…もう間に合わない!!!
せめて…せめて都だけは!!