第4話 「看病されましたが、逃げ場がありません」
――失敗した。
朝、目を覚ました瞬間、私はそう悟った。
「……あつ……」
頭がぼんやりする。
喉は痛いし、体は重い。
(これ……完全に風邪だ……)
昨日、少し冷えたまま寝たのが原因だろう。
私はベッドの中で、もぞもぞと身じろぎした。
「……今日は学園、休もう……」
そう呟いた、その時。
「風邪引いちゃった?」
即答が返ってきた。
「え?」
振り向く。
そこには。
ベッド脇の椅子に座る、セシル。
当然のように。
「……なぜ、いるの……?」
「昨夜からいた」
平然と言う。
(昨夜!?)
◆ 完全包囲の朝
「熱、測るよ」
額に冷たい手。
「ちょ、ちょっと……!」
「動かないで」
優しい声。
逆らえない。
「……38度」
眉をひそめる。
「今日は絶対に安静」
「でも課題が――」
「僕が先生に連絡した」
早い。
仕事が早すぎる。
(もう全部手配済み……)
◆ 世話焼き公爵様
その後。
私は、完全に患者扱いされた。
✔ スープを食べさせられる
✔ 薬を管理される
✔ 水分補給チェック
✔ 30分おきに様子確認
過保護すぎる。
「……私、自分でできるよ?」
「無理しちゃダメ」
即否定。
「リリアーナは風邪引いてるんだよ?」
ぐう。
正論で殴られた。
◆ 距離が近すぎる問題
午後。
少し楽になってきた頃。
セシルは、ベッドの端に腰掛けたまま、本を読んでいた。
……近い。
肩が触れそう。
「……帰らないの?」
「帰る理由がない」
真顔。
「君が寝るまでいる」
(それ、付き添いじゃなくて監視では……)
でも。
不思議と安心する。
彼がいると、怖くない。
静かで、温かい。
◆ 弱音タイム
夕方。
熱がぶり返して、私は少し泣きそうになった。
「……しんどい……」
ぽつり。
すると。
セシルは本を閉じて、私の手を握った。
「大丈夫」
低く、穏やかな声。
「僕がいる」
それだけで。
胸がじんとした。
(ずるい……こんなの……)
◆ ヒーロー視点(チラ見せ)
彼は、私の寝顔を見つめながら思う。
(……失うくらいなら)
(嫌われたほうがいい)
(それでも、そばにいさせる)
――重い。
でも、愛だ。
◆ 告白未満の一言
夜。
私は半分眠りながら、呟いた。
「……セシル……」
「なに?」
「……ありがとう……」
彼は、少しだけ目を見開いて。
そして、微笑んだ。
「どういたしまして」
額に、そっと口づける。
軽く。
でも、大事そうに。
「おやすみ、リリアーナ」
(……心臓、もたない……)
◆ ヒロイン日記
『本日』
『看病=天国』
『逃亡不可』
『危険度:MAX』
私は、夢の中でそう記した。
こうして私は。
ますます深く、彼の優しさに絆されてくのでだった――。




