食事
アダムの呆れながら言った発言にテイロスは何処か自慢げだ。
「ふふふ、ドワーフだから・・・な!」
「そうだな、とりあえず皆の分まで食うなよ」
「ふぇんふぇ、ふぉのふぁんふぁふぁい」
「真似するからだぞ、アッテンボロー。シチュ-に浸して食え」
上機嫌で硬いパンをぼりぼり食べていくテイロスにアダムは深くは追及せず
籠の中身を全部食べそうな勢いの彼に釘を刺しておく。
真似したダズが口に入れたパンをひたすらあぶあぶしている。
「香りが良くっていくらでも食べられそう」
「・・・ルナちゃんよく食べるね」
クロエはシチューを舐めるように食べながら言う。見た目通りに小食らしい。
それでも自分の分は食べられそうなだけこの食事の質が伺える。
対照的にルナはシチューをお代わりし、香草焼きもぺろり。見た目は華奢でも彼女の中身は
三メートルオーバーの悪魔である。そして魔力の消費なども相まって食欲はかなり
強くなっているのだ。
「エルフもお肉とか食べるの?」
「もちろん、一部には食べない人もいるけどそう言う人はドルイドみたいな呪術師とかくらいよ」
「へぇ、そうなんだ」
「だからもーらいっ」
「あ!もう!」
エルフといえば世間一般では純血のエルフを指す言葉である。
彼らの中には修行僧のように血を避ける者もいるがそれはあくまで精霊たちとの交信のため
穢れを避けるためのものである。
一般のエルフは獣を狩っているものはいる。お茶に乳をいれる者も。
「「「「御馳走様でしたー」」」」
「はいよ、ありがとうね」
それから穏やかに食事を終えた一行は宿のおばちゃん達に御礼を言って再び部屋へ。
「あー、今日はほんとに色んな事があったね・・・」
「ね」
女性部屋で皆は今日の出来事に思いを馳せていた。
山賊との対決、捕まって牢屋に放り込まれたこと、悪魔の力を行使したこと。それぞれが体験したことはとても普段の生活では体験できない刺激的なものだ。
「とりあえず魔力草も買えたし成績にプラスになるね」
「カティナちゃんとも合流できたしね」
校長の課題をクリアしたこと、そしてこのクラスに笑顔が増えたこと。何よりの結果を得られて皆は安堵のため息をついた。
「ルナちゃんが悪魔化の力を使えることも分かったし、これならFクラスで上位に行くこともできるんじゃないかな」
「上位って何の話?」
「クラスごとにイベントが結構あるんだよ、勉学や修練の奨励のために学費を免除してもらえたり賞品があったりする」
ティナはそう言うと学費免除してもらってそのお金欲しい!と私欲を溢れさせている。
「へえ、そんなこともあるんだ・・・」
「そう言うのって
ルナは賞品とはなんだろうかと思いを馳せる。
杖?魔道具?それとも魔石?どれ一つとってもおいそれと購入できるものではない。
金銭もそうだが魔法使いの使う品はどれもオーダーメイドの物が多い。
国から認可を受けたワーカーウィッチやウィザードには支給品もあるがそれらも
量産品であるため性能が御世辞にも高いとは言えず、癖のあるものも多い。
魔道具の製作を生業にしている人に知り合いが居ればそう言った問題も解決するが・・・
(考えてみたらルルイエ先生がいたな・・・)
以前魔界に行った際にアモンから聞いた話によるとルルイエは高名な魔道具の製作者らしい。
同時に悪名も高いらしいが悪魔にそう言わしめるのだから相当なんだろう。
「でも、皆でFクラスがすごいんだって・・・そう言ってもらえたら嬉しいよね」
ルナの言葉に全員が頷いた。此処にいないダズとテイロスもきっとその言葉には同意するだろう。
現在Fクラスは残念ながら皆に侮られる立場である。
マリーもそれでひどい目に遭ったし、ルナの古い知り合いには彼女がFクラスに入ったことを
嘆いているものもいる。それほど魔法学校で末端のクラスに編入されることは不名誉な
歴史があるのだ。
「通報があったのはここらへんか」
「ああ、人がたくさん倒れてるぞ。あれ全員山賊か?」
場所は変わって山賊たちと戦闘を行った場所。衛兵達が山賊たちを捕縛するために
馬車を引き連れてやってきた。
そこで衛兵たちが見たのは多数の無力化された山賊たちと数人の遺体。
そして厳重に拘束された魔法使いだった。
「凄い人数だ、これほどの人数が居たとは・・・」
「国境近くの砦はちゃんと仕事をしてるのか怪しいもんだな」
中には気が付いて逃げた者もいるかもしれない。しかしこの魔法使いと
少し離れたところで首を落とされて死んでいる男の姿に衛兵は見覚えがあった。
「コイツって、教会に指名手配されてる奴じゃないのか?」
「なんだって?・・・あった、うっ・・・コイツ!」
「なんだよ?」
一人が拘束されている魔法使いを見て記憶を探っている隣でもう一人の衛兵が手配書の束をめくる。
すると急に相方が呻いたので怪訝そうな顔をして振り返った。




