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夢の中で

『それを少しの間だけど練習してみましょう』


どうやって?とルナは頭に?を浮かべていたがルルイエが指を弾くと

景色が朧げな空間から何もない開けた草原に姿を変えた。


「さて、これでどうかしら?」

「おお、まるで起きてるみたい!」


ルルイエがニコニコしているのがはっきりと見える。

悪魔としての体の変化をコントロールするにはどうするのだろうか?


「先ずは悪魔に変身するところからね」

「名乗っても駄目でしたよ?」

「え、うそ?・・・あー、もしかして通り名とか?」

「そうです」


それを聞いてルルイエは呆れたように溜息をついた。


「はぁ、変身は魔法とは違うわ。貴女の場合、自分の表情を変えるような当たり前のことなの」

「当たり前・・・ですか?」

「ええ、今の姿も貴女、悪魔としての姿も貴女。それはイメージに過ぎない」

「でもエトナ―さんに看破してもらったら変身できましたけど・・・」


ルナの言葉を聞いて彼女は額に手を添えて頭を振った。


「それね、あなたのイメージを阻害してるのは・・・。いい?あのクソ坊主の事は忘れなさい。腐っても大悪魔とタイマンで殴り合えるような化け物よ?術も体力も何もかもが規格外の化け物なの」

「ひどい言い方だ・・・」


ルルイエの頭の中には杖を手にこちらを笑みを浮かべながら叩きのめすその、どちらが悪魔かわからない

聖なる怪物の姿を思い浮かべていた。


「アイツはね、上級なら無詠唱で、大悪魔でも祭壇でも組まれるか、方陣でも書かれたらとてもじゃないけど正体を隠しきる事なんてできないの」


本来なら対等な力をもった精霊や天使の力を借りて真名を看破する。エトナ―はそれを単独でやってのけるのだ。


「通り名で正体を看破なんてありえないのよ?それが誰にでもできたら真名を隠して通り名を使う意味がないじゃない」

「そ、そう言われれば・・・」

「なので忘れる事!わかった?」

「は、はい」


ずいっと顔を近づけて言うルルイエにルナは思わず背筋を伸ばして答えた。


「さて、変身や正体を現すのに名前を使う理由をおしえてあげましょう」

「名前を言うのはやっぱり意味はあるんですか?」

「もちろん、命名式でも言ったと思うけど真名はこの世界に存在を固定するためのものでもある。真名は楔、名札、己そのもの」


だからこそ己の正体を呼び出すもっとも手っ取り早いイメージを引っ張り出せる。


「だけど真名を声高に叫んだり頭に思い浮かべたりしてると何かの拍子に自分を支配される可能性が捨てきれない」

「そうなんですね・・・」

「だからこそルナちゃんには体の変化を具体的にイメージできるようになってもらわなきゃいけないのよね」


キメラだから大変だけど、今は三種の内の一種類ずつを練習していきましょ。とルルイエは言う。


「百足は体が大きくなりすぎるから難しいけど、蜘蛛も蝙蝠もどちらも汎用性が高いし人気もあるからオススメね」

「蜘蛛か、蝙蝠か・・・」


ルナは迷った。いずれは習熟しなければならないこととはいえ、蜘蛛と蝙蝠・・・。

あまり好きではない虫か、それとも未体験の飛行訓練がついてまわる蝙蝠か。

蝙蝠を選ぼうとして思い出したのは魔法使いの男との戦いだ。

感情が昂って相手を殺す寸前まで追いつめ、友達が危険な状態に陥っていることすら頭から

抜け落ちていたあの時の自分。


「コントロールできなきゃ・・・」

「なにか心当たりがあるの?」

「えっと・・・」


ルナは魔法使いの男との戦いの事を覚えている限りで伝えた。


「なるほどね、怒りと焦りで頭が一杯になった時に蜘蛛の色が濃くでちゃったと・・・」

「はい・・・」

「蜘蛛は狩人、そして守護者の側面がある。貴女の守りたい気持ちが蜘蛛の側面に力を与える」


ルルイエは言葉を紡ぎながら瞳に怪しい光を帯びさせて続ける。


「悪魔の姿は貴女の素質、蜘蛛は仲間とか弱きものの守護者、蝙蝠は闇の中で自由を謳歌し、暗闇で人々を導く知恵者、百足は地を拓き、地に眠る財を探す好奇心を秘めた探求者。貴女の清い願いの形。それと対になる欲望もまた貴女の素質。蜘蛛は獲物を弄ぶ残虐な狩人、蝙蝠は全てを暴き支配せんとする冷酷な監視者、百足は全てを食らいつくす底なしの強欲の捕食者」

「わ、私にそんな側面が・・・」

「だれにでもあるものよ、それが貴女には特色として持っているだけ。守ってあげたい気持ちが行き過ぎると監視しなくちゃいけない。敵を倒して仲間を守るには敵を追いつめて残酷に殺す必要もある。皆と楽しく遊び続けるには強欲なまでに財を求めなくてはいけない。貴女の負の側面は正の側面に由来するものだからね」


そう言われてルナはわかったような、わからないような不思議な気持ちだ。

ただあの時の焦燥が自分を突き動かしたのは事実である。


「深く考える必要はないの、イメージよイメージ」


イメージ、そう言われてルナは頭の中で蜘蛛の姿を思い浮かべる。


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