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戦いを終えて

ティナはルナを真っ直ぐに見つめて、さらに続けた。


「ルナちゃん、体か、頭かが特別だったとしてだよ?そんなことよりルナちゃんが私達とどうしたいかが問題だよ」

「わ、たし・・・が?」


真っ直ぐに見つめてそう言うティナ。ルナが言葉に詰まっているのを見て彼女は続ける。


「友達でいてくれるんでしょ?私達がそう望むなら」


そう言うとティナはにひっ、と少しだけ恥ずかしそうに笑う。


「と、もだち・・・」

「そうだよん」

「ともだちで、いたい・・・」


するすると足が縮んで、ぱちぱちと瞬く八つの目から涙がこぼれた。


「みんなが、あぶないと思ったら、怖かった・・・」

「ルナちゃん優しいからねぇ」

「落ち着いてみたら、体が変わってて、怖かった・・・」

「まあ、背中から足が生えたらビックリはするよね」


本当は体が変わったことが怖かったのではない。ルナにとって体はもうとっくに別物になっているのだ。

本当は悪魔としての体こそが本来の姿なのだが、それがバレてFクラスの皆に嫌われるのが

怖かったのだ。


でもルナは運がよかった。それはティナたちが優しかったことだけではない。

魔法使いとしての感覚は常に不思議と隣り合わせで、何もしらないもの、得体の知れないものとの

付き合いを知ることこそが学問としての魔法の本分であったから。

魔法使いの極致点が悪魔として転生することであったことも挙げられる。

Fクラスの学生にはそれについてはトンと縁のない話ではあったが。







「貴様を殺ればあとはガキだけだ」


時間は少し遡って、アダムは馬車を囲む山賊たちと対峙していた。

山賊たちは仲間の妙手だった暗器使いを降したアダムを警戒していた。


(人数が多いな・・・)


五人ばかりをルナが先んじて発見していたがアダムが周囲の気配を探ってみるとさらに多い

気配が周囲を囲んでいる。

逃げるなら造作もない、鏖にするのも。だがそれではいらぬことを生徒に見せてしまうことになる。

地域によっては人の死はあまりにも軽かったがアダムの教師としてのこだわりが

生徒に血を見せる事を嫌った。


「お前らごときにそこまで時間をかけるわけにはいかんな」


アダムはまるでタバコでもそうするように干し肉を口に含んだ。

その刹那である。瞬時に山賊数人の頭に衝撃が走った。


「なにっ!?」


山賊が頭に手をやるとうっすらと血がついていて、足元には血の付いた携帯食に

使われる乾燥した豆が入っていた。


「まずは数をできるだけ減らすか」


屋根の上に立っていたアダムは即座に姿を消すと隠れているつもりだったらしい山賊の一人の背後にまわる。


「うげっ!」


姿を見失って木から顔を出した山賊の頭部に蹴りを入れて昏倒させる。

馬車が先に進んでいく中、本格的に脅威と認定したアダムを山賊たちは取り囲んだ。


「ガキは何人か居ればいいだろ、コイツから殺る」


思惑通りにほぼすべての戦力をこちらに割いてくれたことに安堵しつつ、アダムは短刀を抜いた。


「雑魚ばかりだが・・・」


アダムの姿が滲むように掻き消えるとその都度一人が倒れる。


「く、くそっ!コイツ!」

「俺たちだって身体強化してるはずなのに!」


一方的に数が減っていく。こちらは追いかけど追いかけど攻撃どころか近づくことすら叶わない。


「ぐっ!」


前後左右どこからでも攻撃が飛んでくる。ホームグラウンドのはずの森の中で舞うのは

影ばかり。その後には倒れ伏した悪漢の姿が残っていく。


「ぎゃあっ!」


瞬く間に人が減っていく。急所を打たれたものは皆一様に意識を無くすか苦痛に呻いている。

そしてさらにそれが恐ろしいのは誰もが死の一歩手前で止まっていること。


「化け物め・・・!」

「強いから化け物か?違うだろう」


ザッ、と音を立てて着地したアダムは手を握ったり開いたりしながら言う。


「化け物はお前らだ。人の命を弄び、糧にする獣がお前らなんだ」


口答えしようとした山賊たちはアダムの瞳に宿る冷たい輝きに息を飲んだ。

有無を言わせぬ迫力とまるで氷のような冷たい怒りが見える。

殺意を何かしらの感情か、それとも立場かで覆い隠している。


「さっさと逃げるなら逃げろ、子供たちに何かあったら八つ裂きにしてやるぞ」


奪い取った剣を投げつけると剣はまるで弓から放たれた矢のように真っ直ぐ飛ぶと

山賊の肩を深く切り裂いた。


「い・・・いてえよ!こええよぉぉぉ!」


残った山賊たちはアダムの放つ殺気と痛みに耐えかねて一人が逃げ出すとそれに連なるように

逃げ出し始める。


「だああああありゃっ!」


そんな山賊がアダムに背を向けた瞬間に山賊の胴が無惨に泣き別れた。


「?」

「見つけたぜ、ひひっ、俺が殺してやるよぉ!」


夥しい血の臭いをまき散らしてやってきたのは山で戦闘したばかりの暗器使いだった。


「随分と様変わりしたな、イメチェンか?」

「ひひひっ、そうかもな」


両手に鋭いかぎ爪をつけた手甲をはめている上に昼間に使っていた仕込みのボウガンまでつけている。

それ以上に変わっていたのは暗器使いの表情だった。


「強化魔法だけじゃないな?まったく無茶なことを」

「ひひひひ!ちょっとお薬を処方してもらったでぁけぇだぁ!」


血走った目と時折鼻と目端から血を流している。相当危険な薬を使ったらしい。

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