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待ち伏せ

速度を出してはいたものの、昼過ぎに出発した一行は宿場町にたどり着く前に日暮れを迎えようとしていた。


「不味いな、下手をすると追いつかれる」


暗い道を進めば当然速度を落とさなければならない。

そうでなくても馬は走り通しだ。何処かで休憩は必要だ。


「ぐぅ」


アダムが振り返ると生徒達はルナとテイロスを除いて眠り込んでいる。元気印とはいえティナは山登りの帰りなのでしょうがないだろう。


「うーんうーん」

「ティナちゃん魘されてる」

「まぁ、半身びしょびしょだからな」


クロエが寄りかかって寝ているのでティナはじめじめの影響をモロに受けており、クロエが触れている部分から濡れてしまっている。


「フラウステッドさんは寝なくて平気か?」

「ルナでいいよ、テイロス君」

「そ、そうか?」


テイロスは非常に困っている。実家では若い女性と話すことなんてそうそうなかった。

他の若者達と違い黙々と作業に打ち込む彼は話すにしても鍛冶場に出入りする他のドワーフの奥さん

やおばちゃん達ばかりで同年代の女性とあまり話してこなかったのだ。

対するルナは父親で体格の大きい男性には慣れていたし、バエルやルルイエのような

超常的な存在にも触れているので全く物怖じしない。もとより明るい性格でもある。


「暗くなってくると普段は眠くなるんだけど・・・今日はなんだか目が冴えてる」


馬車に揺られながらも木々のざわめきや獣たちの足音まで聞こえそうなほどルナの感覚は冴えており

眠ろうと思っても眠れない。


「そうなのか?」

「うん、それになんだか・・・ディーン先生たちも緊張してるみたいだし」

「わかるのか?」

「なんとなくね」


ルナの体の中に眠る悪魔の力が上る月に反応して感覚を鋭くさせているのだ。

一度変身して体に感覚を通したためであったが、ルナはまだそれについては知らない。



「馬が限界だ、速度を落とさないと・・・」

「わかった」


御者の言葉を受けてアダムは御者の席から一段上がって屋根に腰掛けた。

全方位に気を配って奇襲をできる限り阻止するつもりのようだ。


「先生が屋根に乗ったみたいだ」

「ホントだね」


上を見上げてテイロスとルナは言う。それとほぼ同時にルナの感覚が何かを捉えた。


「誰かこっちを見てる気がする」

「え?そうなのか?」

「ㇱッ・・・なにか、良くない視線・・・」


ルナは窓の外を見る。そして窓に触れながら外を見ると木々の間にできた闇がすっと

晴れていくような感覚とともに視界から闇が消えてクリアになっていく。


「先生!誰かいる!」

『なんだって?』

「馬車の左の森にえっと・・・二人、いや三人います!」


馬車の屋根に腰掛けて周囲を警戒していたアダムは木の葉の散る音を左から聞いた。

そしてそれが偶然ではないと教えるようにルナが叫んだ。


『先生、誰かいる!』


左に目を向け、魔力を操作して視力を強化すると木々の間に武器を携えた人影が見える。


『二人、いや三人います!』


馬車の中から聞こえる声に寝ていた生徒達も起き出している。ルナは返事が無い事を

聞こえていないと思ったのか馬車の窓を開けて顔を出している。


「先生!」

「馬鹿!聞こえとる!窓を開けるな!」


声を上げた刹那に風切り音と共に飛来した矢が馬車の外側に突き刺さった。

頑丈な旅用の造りが幸いして貫通はしなかったがルナはそれを見て慌てて窓を閉めた。


「速度を上げてくれ!捕捉されたぞ!」

「無茶いわんでください!馬が倒れる!」


御者は肩をすくめてわずかでも的を小さくしようとしている。しかし追手はそんなことはお構いなしに

馬を狙って矢を飛ばしてくる。


「何事!?」

「山賊が追ってきたみたい!」

「ええっ!マジ!?」


ティナがクロエを抱えたまま叫ぶ。カティナは目を擦りながら窓を開けると


「風よ!防ぎたまえ!」


杖を翳し、魔法を行使した。翳した杖から溢れた光が馬と御者を包み、淡く輝いた。


「矢避けの魔法ですか!」

「はい!気休めですけど!」

「ありがたい!」


御者が感謝の言葉を述べるも、馬車に再び矢が直撃してカティナは慌てて引っ込んだ。


「馬車には掛けられないの?!」

「ごめん!生き物しかまだ無理なの!それに下手すると御者さんとかを狙った矢が逸れてこっちに来るかも・・・」

「ダメじゃん!」

「ごめーん!」


矢が通らないと思ったのか礫が馬車に当たり始めた。窓を狙っているらしい。


「しつこい奴らだ、窓を割られるぞ」

「御心配なく」


リュックからにゅっと杖が伸びると窓に蔦が生えるように補強が入った。蔦はよく見るとガラスに

うっすらと土がついたもので魔力で補強されているからか礫が当たってもビクともしない。


「ダズ君?」

「土の魔法でガラスを強化しました、石くらいじゃ割れませんよ」


粘土のように弾性のある土の補強によって礫が当たる衝撃を吸収しているらしい。

ガツガツと硬い音が柔らかいものに当たる音に変わり、馬車の傷も減っている。

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