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国境検問官エトナ―

エトナーの指揮で人は驚く程にスムーズに通行していく。

元より人身売買を平行して行っていた為に時折掛かっていたストップが無くなったことだけでも

十分早まるのに足る理由があったがエトナ―が優秀であったことにも起因している。


「ダメ、そこの荷物は没収。禁制品だ」

「わかりました!」

「わー!前は行けたのに!」

「おら!さっさと出せ!」

「ひー!」


手慣れた仕事ぶりに兵士達は半信半疑だった自分を恥じてエトナ―に従っている。

彼らも知らないことではあったがエトナ―は膨大な知識をその頭の中に詰め込んでおり

法律や慣習を諳んじている。これは彼女自身の元々の記憶力と不死身故に脳に負担を掛けても

すぐにチャラになってしまう事があげられる。


「うーん、そうだな・・・これ、取り上げといた方がいいなぁ」

「なんか引っ掛かりますね?」

「目的地がなー、着く頃には禁制品になってるぞこれ。持ってると処罰されるかもしれん」

「だそうだ、ちなみに国内で禁制品を所持してたら密輸扱いになるから重罪になる」

「えー!じゃあ、没収でお願いします・・・」


各国の輸入品の禁制品やらにエトナ―が詳しいのはそれらの規制の情報が教会に齎されるからである。

その理由としては聖職者は国境を越えて布教活動や土着信仰の保護、紛争地に介入して

市民の保護などを行うからであり、その際に国境を越える手続きで手間取らないようにする

ためである。


「列はどれくらい減った?」

「三分の一くらいですかね、すごいペースですよ」


エトナ―が伸びをして言うと兵士は列に並ぶ人の数を見て言う。


「日が暮れる前にここで野宿する人の警護に当たる兵士を選抜しとけ、そんでもって野宿する人にあんまり遠くで寝ないようにも言っとけよ。続投する奴は今の内に休憩な」

「了解しました」


兵士たちはエトナ―の指示を受けて夜勤まで続投する兵士は休憩に入り、それ以外の者は

日暮れに際して警護の目が行き届くよう野宿する範囲の指示を出しにいった。




「おい、なんだよ・・・まったく混乱してねえじゃねえか」


遠巻きに砦の検問所の様子を見ていたのは国外側で活動する山賊たちであった。

山間部の防壁の切れ目から情報を投げ文でやり取りしていた彼らは隊長が死んだことを知り、

内外から同時に行動を起こすことで大儲けを画策したのだが・・・。


「あのバケモンが死んだって聞いたのにこの落ち着きぶりはなんだ?」

「おい、あそこみろ」


日暮れを待って国境を越えるべく野宿する旅人を襲う算段を立てていたが順番待ちの列が

ドンドンと短くなること、野宿する順番待ちの商人たちが整然と並んで簡単ながら防御を意図した

柵の中に入っていく様をみて普段通り、ともすれば普段以上にスムーズな仕事ぶりに

山賊たちは訝しんでいたが山賊の一人が簡素な望遠鏡を渡して一点を指さした。


「あれは・・・尼さんか?なんで尼さんが検問なんかしてんだよ」

「馬鹿、よく見ろ。あれはただの尼さんじゃねえ。大聖堂所属の聖職者だ」


山賊たちはその言葉を聞いて顔を見合わせた。

大聖堂所属の聖職者が何故畏れられるのか?それには二つ理由がある。

一つ、異端審問官である可能性。

二つ、大聖堂所属の神殿騎士である可能性である。

日光教の異端審問官は単に異端を取り締まるだけでなく絶対的な法律の執行者でもある。

彼らは非常に苛烈な刑の執行を行うことで有名で、滅多に出動しないが一度出番が来れば

異端者として認定された罪人を徹底的に痛めつけるのだ。

一般の聖職者が人々に春の木漏れ日を思わせる陽光、そのぬくもりを思わせる慈愛と献身で仕えるのに対し

異端審問官はまさしく川すら干上がらせ、肌を焼く酷暑の日差しのように罪人を苛むのである。

そして次に神殿騎士の存在。彼らは聖職者でありながら武器を手に戦う存在であり

それぞれが厳しい訓練と戒律によって統率された存在だ。

戦闘能力の高さもさることながら彼らは大抵兵士を率いる権限を持って派遣されることが

決まっており、教会が有する兵力を率いている可能性が高い。

聖職者の大半は魔や神秘と渡り合う事を専門とするものの魔とて実体を持っていないわけではないので

騎士や戦士の存在が欠かせない。それ故に剣や槍、弓を携えているものも多いのだ。


「どうしてわかるんだ?」

「尼さんが検問所を指揮してるのは間違いなくそうだろ、それにあの杖!日光教で十字の金属製の杖を持ってるっていや・・・あの”聖人”かもしれねえぞ」

「まさか、聖人がこんな田舎に?」

「隊長が死んだ理由が悪魔に殺されたってんなら可笑しくもあるめえよ」


山賊たちは投げ文で得た情報を思い出してみる。隊長の強さが悪魔に由来するものだったこと、

代償を払う羽目になったこと。それについて教会から聖職者が派遣されたこと。

それらを踏まえてみれば証拠は揃っていると言える。

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