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帰ろう!なるはやで!

アダムは全員に帰り支度をさせると自分は御者に出発の準備をするように言う。


「出発ですか」

「あぁ、紛争はデマだったが別のヤバい事案が起こりつつある」


生徒達には危険だ。とアダムは言う。



「あれ、ダズ君なんで寝てるの」

「魔力切れだよ」

「そうなの?」


Fクラスの面々は青い顔でリュックに入っているダズを見ていたが、

ふと残ったお茶に目がいった。


「あそこに魔力草を入れたお茶があるけど」

「いいのあるじゃん!皆も飲んだの?」


美味しかった?と尋ねるティナに皆は笑って誤魔化した。


「さー、もったいないから飲んで」

「・・・苦いからいいです」

「遠慮せずに」

「うわぁ、押しが強い」


元より体調不良の症状が出ているダズに抗えようはずもない。残ったお茶を容赦なく

流し込まれた。


「おごごごご」

「顔色が凄い乱高下してるけど大丈夫なの?」


飲むたびに顔色が戻っては青くなりを繰り返している。なんて酷い光景だろうか。


「・・・すみませんけど休みますね」


結局ダズはリュックから出てこなかった。



「よし、出発だ!」


全員の荷物がまとまった頃、アダムは生徒を連れて宿を引き払い馬車に乗り込んだ。

行きより一人増えた馬車は少し狭くなったがそれでも速度を落とすことなく

ウッドリーフを抜けるべく移動を開始した。





「山賊が出た?」


砦ではガイドの男性からもたらされた山賊の目撃情報をエトナ―が聞いていた。

教会と国の権限で一時的に隊長クラスの権限を持たされている身ではあるが

彼女の本来の仕事は砦の監査と是正である。


「聖人様、いかがいたしましょう・・・」

「私に聞かれてもな・・・とりあえず調査隊を編成して目撃地点に派遣するしかないだろ。あと、増やせる人員は増やして周囲の警戒だ。情報の周知も徹底して外出を控えさせるんだ」


指示を出すと聞いてくれることだけが幸いだ。エトナーは砦の人員の名簿を見てめんどくさそうに

窓の外を見やる。


(何人か居ねえな・・・ボスが死んだのを見てトンズラしやがったか?)


人身売買などという教会で禁忌に近い罪を犯している彼らは捕まれば重い罪を背負う事になる。

そうなればいままで積み上げたキャリアなど跡形もなく吹っ飛ぶばかりか財産や名誉も

全て失うことになってしまう。


「ちょいちょい指示役が居ないせいでこうなってんのか・・・くそ、めんどくせえ」


検問では応対している兵士たちが右往左往している。おそらく法や慣例に慣れた人物が

悪事の片棒を担いでいた中に居たんだろう。そうでなければ特定の人種を選んで弾くことなんて

できないはずだ。


「あーくそ、マジかよ」


窓の外から見える景色にはさっそく兵士と民衆がなにやら揉めている様子だ。

エトナ―は窓から飛び降りて砦の防壁の上を伝って現場へと向かった。


「どうした、揉め事ならこのエトナ―さんに聞かせてみな」


シュタッと門の前に着地して杖を肩に担ぐと周囲の人々の視線がエトナ―に集まった。


「聖人様だ」

「あれが・・・?」

「大聖堂の聖人、エトナ―様だ」


日光教の信徒がエトナ―を見て手を合わせ、祈りの所作をとる。


「日光の輝きは遍く人々に」

「彼方に安らぎを、その身元に永遠を」


聖句を唱えると信徒たちはそれに答える。それを行うと騒ぎが嘘のように鎮まり、

兵士達は聖人の影響力に知りつつも驚きを隠せなかった。


「さて、それで?騒ぎの原因はなんだ?」

「それが、手続きを行う事ができないので・・・」

「なに?なんでそんなことになってる」


エトナーが問うと兵士達は皆一様に視線を泳がせ、そして空席になっている文官の席を示した。


「書類を管理する者の姿が見えなくて・・・」

「なるほどな・・・」


エトナ―は頭をガシガシ掻いて椅子に座ると通過待ちの人物が持っている書類を取ってそれを

記憶の中の情報と照らし合わせていく。


「ふーむ、積荷は?」

「え?」

「積荷を調べろ、私がやる」

「え、でも」

「権限はもらってんだよ、さっさとしろ!人でここが埋まるぞ!」


渋る兵士の尻を叩いて仕事に戻すと検問を再開させた。エトナ―は検問をいつもは受ける側だが

知識はすべて頭に詰まっている。

各地を放浪して得た知識は慣習や法律にも及んでいるのだ。


「この輸入品は禁制だな、ダメだ。ここに置いてくかそれ持って帰るかだな」

「そ、そんな・・・前は・・・」

「法が変わったなんて御触れは出てないぜ、お前さん誰かに袖の下でも渡したか?」

「え!いや・・・そんなことは・・・」

「どっちにしろ今からダメだ。もちろん聖職者に袖の下は効かねぇからな」


兵士達は以前よりもこの一点に限っては仕事がやりやすかった。

指示は厳格でともすれば反発を招くかとも思ったが陣頭指揮に立っているのが日光教の

聖職者ということで市民からの信頼が非常に厚かったためである。

また法律の知識に詳しく、禁制品の知識にも明るかったので兵士達は荷台の物を

そのまま伝えるだけでエトナ―が弾いてくれるので大助かりだった。


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