山賊VSFクラス!
アダムは地面に落ちた棒の先端に何かが塗られているのを見て思わず顔をしかめた。
「暗器使いだったとはな、ご丁寧に毒でも塗っていたようだがまだまだだな」
そう言いつつ、アダムは手甲越しに伝わった衝撃に内心冷や汗をかいていた。
(革製だったら貫通してたな・・・弱い弓を使っていたのは武具の手入れをしていないと思わせるためのブラフだったか)
袖から覗く暗器は恐らく弩の一瞬だろう。
動きの多い利き手ではなく弓を持つ腕の方につがえた矢は魔力を篭めることと腕の動きを連動させることで発射される仕組みだったようだ。
「さて、お前さん。山賊にしてはなにかと達者なようだが・・・悪い事は言わん、真っ当な道に戻りなさい」
「・・・」
「臓器までは傷つけていない、丁寧に治療すればちゃんと助かるだろう」
刺さった短刀を抜いて血を払うとアダムはそれを仕舞い、暗器使いの傷を止血してあげた。
「悪いが生徒が心配なんでな、ここら辺で失礼させてもらう」
暗器使いはそう言って背中を見せたアダムにもう片方の手に仕込んだ矢を飛ばそうとしたが
「死ねっ!」
「未熟者」
「えっ」
どうやったのか矢を引き抜いていたアダムにそれを投げ返されて袖を木に縫い止められてしまった。
「全く馬鹿な奴だ」
力なくへたりこんだ暗器使いにふん、と鼻を鳴らすとアダムは今度こそスタスタと歩きだした。
「いた、あそこ・・・」
三人は少し走った後、前を歩く山賊に気付いて身を隠した。
「どうする?」
「ディーン先生が合流するまで待つのが一番では?」
「俺たちだけで勝てるとは限らないぞ」
相談しながら時折山賊たちの動向を調べる。そうしていると・・・
「ねえ、あれ・・・ガイドの人じゃない?」
「え、あ・・・ホントだ」
ガイドの人が山賊たちの近くで隠れているのが見えた。
「先に逃げたと思ったのにもう追いつかれたのか」
「足遅いね」
しかし町までの距離も随分と近くなってしまった。山賊たちもここまで来てしまえばもう
引き返すしかないはずだが・・・。
「まだ進んでいくぞ」
「マジ?町の兵隊さんとかいるんじゃ・・・」
テイロスが言うとティナは驚いた。当たり前だが数人の山賊ごとき兵隊の相手にはならない。
ましてや身なりの粗末な落ちぶれた感満載の彼らならなおさらだ。
そう思っているのはティナたちだけではなかった。隠れていたガイドもそうだった。
「おい、あの人何かする気だぞ」
テイロスが言うが早いか、ガイドは火打ち石でカチカチと火を起こすと筒を置いて
その中に火種となにかの繊維質のものを入れた。
「狼煙か」
「そんなことしたらバレない?」
「町から見えるとはいえ大胆だね」
筒からもうもうと煙が立ち上っていく。真っ黒な煙は町の人にも良く見えるだろう。
ただそれは山賊にも言えることで・・・。
「ん?なんか臭わねえか」
「ホントだ・・・あっ!この野郎!」
狼煙に使っていた草には松脂などがある。そう言ったものは結構臭う。
元より煙を上げて燃えるようにできているのだ。風向きでは当然臭いもあるだろう。
「わ、わ、わーっ!」
ガイドの男性は慌てて立ち上がったが山賊を指さすと声を上げた。
「狼煙を上げたぞ!緊急事態を示すヤツだ!じきに兵隊がやってくる!」
逃げるなら今の内だぞ!というガイドの男性に対して山賊たちはへらへらしている。
「ははは、兵隊がくるぞーってか」
「おーおー、おっかないねぇ」
山賊たちは砦では今隊長が死んで混乱していることを知っているのだ。
そんな時に迅速な対応なぞ望むべくもない。
「な、なんで・・・キリル隊長がくるんだぞ!」
怖気づくどころかじりじりと武器を手に近づいてくる山賊たちにガイドの男性は
焦りながら下がってくる。
「あのクソ野郎なら死んだぞ、悪魔に食われて死んだ!」
「えっ」
「尼さんが祓うところまでウチのスパイが見たんだよ、残念だったな」
そんなわけだから助けはこないぜ、と山賊たちは笑いながら言った。
ガイドの男性は狼煙が無意味なことと助けが来ないことを知ってみるみる顔を青くしていく。
「そ、そんな・・・じゃああの人たちも助からないのか・・・?」
「ここで待ち伏せて捕まえりゃ同じことだからな!」
「そんなー!」
おろろーん!と泣き出したガイドの男性にティナたちはどうしたものかと頭を回転させる。
「どうしよう、魔法はどんなの使える?」
「地面を陥没させたり、隆起させたりですかね」
「俺は石の形なんかを変形させたりできるが・・・」
「「射程距離が短い」」
ダズとテイロスの魔法の弱点、それは単純に離れたところに攻撃できないことだった。
ダズの土に関する魔法はじわじわと魔力を地中に浸透させて地面を操るもので、未熟な彼には
遠距離までそれを及ぼす力がない。
テイロスはそもそも魔法を使う訓練自体をそこまでしていないので粘土細工の応用でできる
石を変形させる能力しかない。
どちらもほぼ触れてからじゃないと能力は発動できない。




