魔力草の採取 その3
そんなこんなで合流したFクラス一同と担任は魔力草を求めて
山を上り始めることに。
「せんせー、私達も着いて行っていいんですか?」
「あぁ、今回はワシもいるし大丈夫だ」
アダムは砦に潜入した際に今回の慌ただしい物品の出入りがキリルの
虚偽報告によるものである事を知っているので幾分安心していた。
それに生徒達だけで行動させるのと自分が監督しながらであればその安全性も違ってくる。
「それに砦も機能しているみたいだしな」
「ほへー」
兵士達はいつも通りに国境の検査を行っている。ルナからおおよその事を
聞いていたアダムは砦が機能している事を観察しながら生徒たちを連れて
山へ向かう準備を進めることに。
「そう言えば・・・砦で大変な事が・・・」
「大変なこと?」
「えっと、色々とあったんですけど隊長の人が悪魔のせいでおかしくなって」
「そうでした、それで今は聖人様が陣頭指揮に立ってるとか・・・」
アダムはそれを聞いて少し嫌な予感がした。トップが腐って組織が傾くのはよくあることだが
今の今までそれを隠し通し、表向きは順調に見せていたのはおそらくその
隊長の実力なんだろう。しかしながら組織はトップだけで回せるものではない。
当然ながらナンバー2、3も悪事に加担して色々と利益を得ていたはずである。
「いろいろと用心は必要か・・・」
アダムは少し悩んだ。生徒を連れて帰るべきか、それとも登山をして、速攻で済ませるか。
(ミストとクライグスがいるから強行軍は難しいか・・・それにできることならダズとテイロスの為に魔鉱石の探索もさせてあげたい・・・)
教師として安全とせっかくの校外学習を天秤にかける。その結果・・・
「うん、これは下手するとヤバいな」
「となると・・・?」
「二班に分けて、待機組と登山組を編成しよう。登山組は下手をするとかなりキツくなるが仕方ない」
「待機組は何を?」
「実を言うとこの町の土産物屋で魔力草が売ってるんだよ。待機班は万が一に備えて魔力草を仕入れ、そのまま宿に戻れ。お土産が買いたかったら小遣いの範囲で買っていいぞ」
はいこれ、魔力草の代金な。とお金の入った袋を手渡されるクロエ。
「まず待機班だがミストとクライグス、それに何かあったときの為にフラウステッド、お前さんが残れ」
「わかりました!」
「「はーい」」
お金に余裕のあるルナと、無駄遣いせずにコツコツ節約した二人はお土産の事を早速考え始めている。
「次に登山組のアッテンボロー、ギガース、ユピトール。魔力草の採取と、魔力鉱石の探索だ、気合いれてくぞ」
「わーい」
「うっす」
「わかりましたぁ」
強行軍と言いながらも興味のあることに挑戦できるとあって男子二人の鼻息は荒い。
ティナは元から元気なので問題ない。
「最後に、アインザッツ。お前さんはどうする?」
「どうするって何がですか?」
「お前さんは森育ちだろう、足腰も申し分ないだろうが・・・疲れてるなら残ってくれてもいいぞ」
そう言われてカティナはちょっと迷った。魔力草の採取には興味があったが
面識のある人物が分かれているのだ。
(ルナちゃんともうちょっと話したい・・・けど魔力草の採取も・・・うーーーん・・・)
「めっちゃ悩んでる」
「悩んでるね」
「本当に頭抱える人初めて見たかも」
「・・・コイントスとかでいいんじゃない?」
「買い物も採取も捨てがたい気持ちはわかりますよぉ」
「知り合いがいる方・・・って先生とも知り合いなのか」
皆が思い思いにカティナが悩む姿を見てあれこれと言うが本人はまだ決めかねているようだ。
「うーんうーん・・・」
「コイントスってクロエも言ってるし、やってみたら?」
こういう時にいち早く行動するのがティナである。小銭から銅貨を選んでカティナに差し出した。
「わかった・・・えいっ」
「ああっ!斜めに飛んだ!」
「嘘だろ・・・」
コインを指ではじいたところ斜め向こうに跳んだ。そしてコインは雑踏の中に・・・
ティナが慌てて探したもののもうそこに銅貨はなかった。
「私のお小遣いがーッ!」
「ご、ごめんなさい・・・」
なけなしの銅貨を紛失したティナは絶叫した。カティナはそれを見て小さくなり・・・。
「あの、やっぱり私は待機組で・・・」
「うん、まあ、気にするな」
そう言うとそそくさとルナの後ろに隠れた。
「お”お”お”お”!」
「銅貨一枚でそんな大げさな・・・」
「あとはビタ銭しかないんだよね!」
この世界にも悪銭はある。金銀銅の三種の金属は金属そのものに価値があるが
銅の一個下のランクに屑鉄などで作られた貨幣がある。
これらはこの世界でもビタ銭と呼ばれ、価値の低い貨幣として使われている。
面白い事に金貨、銀貨、銅貨は国によって価値やデザインが違うのだが
このビタ銭はデザインはほぼほぼ一緒なのである。しいて言えば誤差程度の
大きさだが、これはもちろん偽造された悪銭も混ざっているからである。




