砦の事件の終わりに
結果から言うと二人はエルフ達の救出に成功した。
エルフ達はいたく感謝してくれたが忘れていた
エトナーとルナはぎこちない笑顔でそれを受けることに。
「助けていただきなんと御礼を言ったらいいか!」
「いやぁ、ははは」
エトナーも珍しく歯切れが悪い。一応罪状のチェックなど一通り済ませてからなのでさらに時間がかかり、エルフ達が全員解放される頃には日もすっかり落ちていた。
「うー、さむっ」
道すがらエトナーは水筒に入れておいた火酒を含みながら教会へとエルフ達を引き連れて歩く。
「日が沈むと尚更冷えますね」
「ここいらで野宿なんかすると死ねるぞ、酒が尽きる前に教会へ行こう」
エトナーが言うにはこの街の夜は山から吹き下ろす風で恐ろしく寒いようだ。
ルナも今の時点で十分に寒いので皆と一緒に小走りで教会へと向かうことに。
「フラウステッドさん大丈夫かな・・・」
カティナは一人、教会の囲炉裏に炭を足しながら待っていた。
アダムは少し前にクラスメイトの様子を見にいってしまったし、教会には人が居ないのか
閑散としていて、火がはぜる音ばかりが響いている。
「冷えないのだけが救いだわ・・・」
火に集まったサラマンデルが元気に動いている。よほど濃い魔力を与えられたのだろうか。
まるで踊るように炭から炭に、熱から熱を伝えて煙突を上り、金属部を赤く熱していく。
その煙突の機能のおかげで教会はどんどんと暖かくなっていく。
「聖人様まだかな・・・」
「さむーーーーーーーーい!!!!」
ドカッッ!とドアを蹴破る勢いで開け放たれ、青い顔をしたエルフたちが列をなして教会に入ってきた。
「「「「「寒い寒い寒い!」」」」」
囲炉裏に群がるエルフたち。カティナは弾き飛ばされるように端に追いやられて慌てて立ち上がった。
「うーさむっ」
「聖人様!無事だったんで・・・酒くさっ!」
「あれ?アダムはどこいった?」
「えっと、生徒の様子を見てくるって・・・」
「不用心だな、まったく・・・」
人には安全がどうこうといったくせに、とエトナ―は愚痴をこぼすと
囲炉裏を囲むエルフたちの為に教会の物置に向かう。
「おーい!毛布配るぞ!一枚ずつもってけ!」
そこから毛布を持ってやってくると一人ずつに毛布を配り始めた。
エルフたちはそれを受け取るとくんくんと匂いを嗅いで顔をしかめた。
「なんか焦げ臭いんですが・・・」
「虫よけだ、我慢しろ。煙で燻してからしまってあるんだ」
臭いから虫はいねえよ。とエトナ―は言うと自身も毛布をかぶった。
「あれ、ところでルナちゃんはどこに・・・」
「あそこ、エルフたちにくっついて震えてる」
囲炉裏に直接当たれず、ガタガタ震えながらルナは外円にいるエルフにくっついている。
旅支度だったエルフたちは当然ながら防寒装備だったがルナは重ね着しただけだったので
モロに寒さに曝されていた。しかも貸してもらった教会のローブはくたびれていて
旧かったので猶更防寒能力がなかったようだ。それでもエルフたちを押しのけない
あたりに彼女のやさしさが透けて見える。
「かわいそ・・・」
「そう思うなら温めてやんな」
「そうですね・・・」
カティナは毛布を手にルナの傍に行くと自分ごと毛布を被ってルナに寄り添った。
「冷えてるね・・・」
「カティナちゃん・・・」
ローブを脱がせ、肩を寄せ合うと彼女の体が冷え切っているのに気付いた。
同胞を助けるために苦労をかけたクラスメイトを労うためカティナは
ルナの肩を抱いて頬を寄せた。
「ぬくーい・・・」
ホッとしたような表情のルナにカティナはようやく一心地ついた気持ちだった。
同胞は帰ってきたし、助けにいったクラスメイトも聖人様も無事だった。
あとは砦の内情が是正されて元通りになればこういった問題もなくなるだろう。
「よかった、ほんとに・・・」
温まった人から順番に囲炉裏から距離をとって思い思いのグループを作って横になっている。
カティナはうとうとしているルナをもう少しだけ囲炉裏に近づけると余った毛布を枕に
整えて敷くとルナを横にしてあげた。
火のぱちぱちとはぜる音と、ぼんやりしたオレンジ色の光が安心感と眠気を誘う。
「あふ・・・私ももう寝よう」
ルナの隣に寄り添うように横になると自分も毛布の中に入って天井を見上げた。
視線を横に向けるとエトナ―が残りの火酒を飲み干して自身も寝る準備を始めていた。
明日はどんな日になるだろう。
牢屋の中で考えていたときと今、同じことを考えている。
悪い事が終わって、その後のことだからきっといい日になる。そんな気がするのだ。
「・・・やっと、外で私の生活が始まるんだ・・・」
外に出て、国境についた途端に牢屋に放り込まれて、もうだめかと思っていた時に
まさかの学校の先生が助けに来てくれた。そして自分と同郷のエルフたちを
助ける為に聖人様だけでなくクラスメイトまで二つ返事で立ち上がってくれた。
心強い味方を得た気がして、カティナは嬉しくなった。




