悪魔の姿!
メキメキと膨らんでいく。その形が様々な生き物が集合してできていることに気付いて悪魔は仰天した。
『こ、こいつも悪魔なのか・・・?』
「こいつ?頭が高いぞ。木っ端悪魔が」
エトナ―がくっくと笑いをかみ殺しながら言う。悪魔はまだ形が整っていないのもかかわらず
既に自身の魔力の総量を軽く上回る力を持った悪魔の登場に焦った。
「・・・かっ!ふぅ・・・これでいいかな」
「おお、蝙蝠か。かーわーいーいーなー」
「うゆゆゆ・・・それはだめですよぉ・・・」
塊が宙に浮いたかと思うと、それは四対の羽根を持つ蝙蝠の魔人となる。
バサッと翼を広げて降り立ったルナはエトナ―にあごをこしょこしょされて悶えた。
『ぐ、 大悪魔グレーターデーモン!まさかお前・・・いや、あなたのような御方が・・・!』
悪魔が驚愕するのを他所にエトナ―とルナはその姿について話し合う。
「じゃっかん蜘蛛に引っ張られてんな、羽根八枚、しかも人の手もついてる」
「飛ぶとき・・・えっと、どうやって飛んでたっけ・・・」
「羽ばたいて飛ぶのは練習がいるだろ、まあそれはおいおいな。それより悪魔の姿になった感想はどうだ?」
エトナ―の言葉にルナは自身の体をあれこれと確認してみる。
腕はまるでマントのように自身の肩から四対に分かれて生えており、羽根は畳まれている内は普通の
腕とそこまで変化はない。本数以外はだが。
「足も蝙蝠っぽいですかね?」
「そうだな、それっぽいけど猛禽類っぽくもある」
本来足の弱い蝙蝠だが悪魔であり、人の要素も加わったからか足も強靭なものだ。
胴体には月の意匠をあしらったベルトが貫頭衣の上からお腹あたりに巻かれており、
シンプルな出で立ちだが・・・
「ルナちゃんもしかして着やせするタイプ?」
「どこ見てるんですか?」
「乳だけど」
「はっきり言わないでくださいよ!」
お腹に巻かれたベルトと薄い貫頭衣のせいかボディラインがくっきりと出ており、ルナの体型がよくわかるようになっている。
悪魔としての姿と人の姿にどれだけ差があるかは分からないが今のルナは妖艶な雰囲気すら纏っている。
(ど、どうなってる!どうして大悪魔グレーターデーモンが召喚も経ずに人界に!?)
悪魔は自身が非常に不味い立場に居ることを理解した。
大悪魔と自身の攻撃を容易くあしらう実力の聖職者。
この二人に睨まれた自分は正しく蛇に睨まれたカエルだ。
「さて、お前さんの処遇についてだが」
『!』
悪魔がどうしたものかと頭を抱えているとエトナーは
杖を肩に担いで言う。
「ウチとしては魔界に叩き返すのが理屈なんだが、お前さんのやり口は魔界でもルール違反に該当するよな?」
『うっ!』
悪魔はギクリと肩を震わせて汗をかき始める。
(そうなんですか?)
(召喚された時の取り決めで使い魔になるなら兎も角、人を殺して成り代わるのは違法だ。天魔戦争時代に決まった悪魔と神の取り決めに反する)
エトナーの肩に顎を乗せてこそこそと話すルナ。
悪魔と神の取り決めは悪魔にとって現在最も長く続く契約の一つであり、権威のある取り引きである。
契約に違反することは悪魔にとってのタブーの一つである。
『う、うぐぐ』
悪魔はルナとエトナーが仲良く内緒話をしているのを見て
さらに焦りを募らせていた。
(聖職者と肩を組んでる悪魔なんか見たことねぇ・・・まさかこの聖職者って、あの聖人ってやつなんじゃ・・・)
悪魔の中の記憶に様々な情報が駆け巡る。その中で悪魔の天敵ともいうべき神の使徒の中で
人の身でありながら天使や土着神に混じって天敵認定されている秩序の存在がいた。
名をエトナ―。天魔戦争の時代に地獄に身を投げて以来死を超越した存在。
神代より信仰に生きる奇跡の残り香、神の代理人。受肉した天使。
悪魔殺し、神殺し、神秘殺し。あげればキリのない逸話の数々。
「おい、そろそろ答えは出たか?」
『な、なんの答えだ?』
「決まってんだろ?私の手で地獄に落ちるか、この子の手で地獄に落ちるかだ」
「悪役みたいなこと言ってますねぇ」
ルナは悪魔としての本能に引っ張られているのか目の前の悪魔が慄いている姿をみて
クスクスと笑っている。
「ルール違反に厳しいのウチもそっちも同じことだ。神に祈るなら手加減してやってもいいぞ」
「もしくは我らが魔王様に祈るなら、口添えしてあげてもいいぞー」
ルナは歯をかみ合わせた状態で息を吐くと魔界の瘴気から産まれた
蝙蝠の群れが悪魔を取り囲むように飛び交う。
「なんか出した?」
「口笛みたいな感覚でやってみたらできました!」
「おお、よしよししてやろう」
「んんん~」
再び顎をこしょこしょされてルナは悶える。
「さて、どうなんだ?さあ、さあさあさあ!答えろよ!」
エトナ―は目を見開いて悪魔に詰め寄った。このシーンだけを見ればどちらが
悪魔なのかわかったものではない。




