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生徒を助け出せ!

ディーンの手を取ったティナ。その際に彼女の感覚が彼の経歴の一部を読み取らせた。


(長年の弓の名手でもこうはならない手の形をしてる・・・)


ティナは自身の故郷で永らく弓を引いてきた老人の手を見た事がある。手にはその人の経歴が現れるという。その言葉の通りに受け取るならばそれはまさしく達人の手といえた。


「さて、ここからおさらばするぞ」


アダムはそう言うと鉤縄を取り出して降りてきた梁に引っ掛け、するすると昇っていく。


「あ、おい!あんた、もしかしなくても破獄だろ?俺たちも助けてくれよ!」


エルフの一人がアダムを見て叫んだ。大声にアダムは顔をしかめたが男性を宥めるように言う。


「悪いが単独で来たんでな、纏めて面倒は見切れん。聖人エトナ―に通報はするからそこまで持ちこたえてくれ」

「そ、そんな!いつ売りに出されるかもわからないんだ!頼むよ~!」

「この規模だ、砦の主も絡んでるだろう。そんな時にぞろぞろと出歩いたら殺されかねんぞ」


アダムはそう言うとティナに縄梯子を降ろして引き上げる。


「心配しなくてもこのような状況で見捨てたりはせん、待っていてくれ」

「ホントだな?たのむぞ・・・」


アダムに再三念を押して安心したのかエルフの男性はようやく大人しくなる。


「まったく、面倒な事をしてくれたもんだ」

「あの、先生・・・本当に助けるんですか?」

「見捨てると思ったか?なに、聖人エトナ―はこの砦の付近にもう来てるからな。上手くすれば君のクラスメイトと接触してるはずだ」

「えっ、クラスメイトって・・・子供も来てるんですか!?」


屋根伝いに砦を歩きながらアダムは言う。ティナはこのような状況に自分と変わらない年の人間が来ていることに驚いていた。


「君も子供だろうに、そもそもこうなってるのが想定外だったんだ」

「それはわかりますけど・・・」


そのまま歩き続けると国境を越えて反対側の街に出る。アダムは随分と不用心に歩いているとティナは思っていたが道行く兵士たちが皆壁に寄りかかって倒れているのを見てさらに驚いた。


「先生って何者なんですか・・・?」

「なにって、魔法学校の先生で、君の担任だが?」


飄々とそう答える彼にティナはなんとなく答える気がないんだろうと察して押し黙った。真実はどうであれ自分を助け出してくれることには変わらないのだろう。どちらにしろこんなことができる人間から逃れられる術もない。


「よし、ここの縄を伝って降りれば街に出られる。教会に行ってそこで保護してもらおう」


アダムはそう言うとさっと縄にしがみついてするすると降りていった。ティナもそれに倣って降りようとおもったが思ったより高く、時間がかかってしまう。


「んしょ・・・んしょ・・・」

「エルフにしては鈍くさいな」


降りるのに随分と時間がかかったがもう暗くなり始めていたことが功を奏したのか見つかることなく脱出できた。


「よし、それじゃあ教会へ行くぞ」

「はい!」







「まったく、面倒なことやってくれやがってよ」


時間は撒き戻って。エトナ―は不満を漏らしながら馬車に揺られていた。

古今東西僧侶が紛争や戦争の調停に駆り出されることは多い。純粋に戦争中にも葬儀の関係で呼ばれることもあるが今回はそのどちらにも当てはまらない。


「嘘ついてまで防衛費の請求とかするかフツー」


教会は国の密命を帯びて国境に向かっている。表向きは紛争の危険があるため僧侶を派遣していざという時に相手国から市民に危害を加えないように見張るための派遣だが、実際は度重なる費用の請求などを不審に思った国がとうとう痺れを切らして監査を行う為に僧侶とそれを隠れ蓑に調査員の派遣を決定したのである。

費用をちょろまかしているのであればそれはそれで重罪であるがどうにもそれ以外の余罪もありそうとのことで教会もそれらの調査と必要ならば断罪に動くことになった。


「しかも私らが関わるってことは・・・どうだろうなぁ、面倒くせぇなぁ」


この世界では治安組織が動く場合と教会がそれにくっついて出動する場合によって罪状に違いがある。

治安組織のみの場合は法律に違反していること、規則や職業規範に反した場合だ。

しかし教会の場合は違う。こちらが取り締まるのは悪魔や魔法を悪用した場合、そしてもう一つは『倫理』に違反した場合である。法律というのは国によって違う。文化や世俗によって考えかたが違うのであるからそれはしょうがないのだが、そんな諸国で共通して信仰されている日光教と月光教は信仰圏に共通して守らせている規則がある。


1、重軽問わず種族によって処罰を変えるべからず

2、種族に関わらず人身売買するべからず

3、土着の信仰を弾圧するべからず

4、神と精霊と信仰を軽んじるべからず


大雑把にこの四つが原則とされている。冠婚葬祭を取り仕切る存在であるだけでなく零細宗教の保護者でもある彼らが断罪を掲げて動き出すとなればこれらのどれかに違反したということで、下手をすればこれらは国の法律すら凌駕する権威がある。

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