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カティナのお話

カティナ・アインザッツはエルフの生まれである。ド田舎の森の中で純血主義の根強い地域でそだった。


「何故人里離れたこんなところで私達は生活しているの?」


そう問いかけたのは何度だっただろう。

それに対して帰ってきた答えはいつもこうだ。


「エルフは移ろい易く、様々なものに影響を受ける。だからこそ純血を守らなければならない」


その言葉は胡乱でとても信じられなかったがある人物がそれを肯定したせいで言い返すことも出来なくなった。


「エルフが?あぁ、そうだなぁ・・・適応能力が高いからだろうが土地に適した姿にすぐ変わるもんな」


日光教の聖人、エトナーだった。彼女は存命の全てのエルフよりも長生きでこの森にやって来た時、大人たちはいつも彼女を下にも置かない扱いだった。

そんな彼女の言葉は全て彼女自身が見聞きした事なので全てにおいて有無を言わせない説得力があった。


「次の代はだいたい影響受けるな、子供も百年ありゃ変態し始めるからな」

「百年・・・?」

「うん、百年。あとはまあ、魔力とか本人の素質とかもあるかな。でも子供が生まれる場所を選べばまた子供は戻ったりするぞ」


どこまで知っているのか。というより見たことあるんだこの人。

尊敬よりもヤバい人って言葉がでてきてしまう。なんでだろう。


「あの、子供が戻るってなんで知ってるんですか?」

「あん?そりゃあお前さん、僧侶なんて医者も兼任するのが昔じゃ当たり前だったからな」

「え、じゃあ産婆さんだったんですか?」

「そうさ、エルフは旅好きなヤツも多かったしな。天魔戦争の時なんか皆が散り散りになって疎開するから一部だけでも生き残りますようにって祈ってくれって言われたし、妊婦さんとか赤ん坊を預けられたこともあった」


がはは、と笑いながら言う。そんな彼女が何故にこうして慕われるのか、それが続く言葉で察せられた。


「それでどうしたんです?」

「全員分、寝食忘れて祈ったさ。誰一人欠けてくれるなってな。おかげでこの里の子たちは皆、戦争では死ななかった」


そう、彼女はこの里の長老たちにとって恩人であり、人によっては母同然で

人間でありながら、というか人間かこの人?彼女はエルフの営みを影から見守ってきた存在なのだ。


「純血を守るってのは、考えすぎかもだが・・・私の為かなぁ・・・」

「聖人様の?」

「私が守ったエルフたちの中であの時、私と出会った時の姿を保ってるエルフはもう彼らだけだからな」


困ったように、それでいてどこか嬉しそうに彼女は言う。エルフよりも長生きな彼女はきっと多くの人を見送ってきたのだろう。それ故に過去の姿のまま自分と一緒の時間を生きてくれている彼らをありがたくおもっているのかもしれなかった。


「ま、それも彼らの代で終わりになるかもしれんが」

「どうしてそう思うんですか?今も純血主義はまだ・・・」

「エルフってのは留まる者と巣立つ者の二種類になる。血が濃くなるとどういうわけか外に出たくなるヤツが増えるのさ」


お前さんもその口だろ?と聖人様は私の心を見透かしたように言う。


「そうなんでしょうか・・・」

「おや、ここで親戚と結婚して子供作る気概があるのか?健気だねぇ」

「それは・・・いやですけど」

「エルフの伴侶見つけて帰ってくるって手もあるけど・・・現実的じゃないしな」


この世界に最も多き種族はエルフなり、されど最も少なきもエルフなり。

これはエルフが様々な地域で暮らし、そして混血をしてきたことを示すことわざだ。

地域に適応し、その土地に根差して現地の人々と交流して、やがてその土地の一部となっていく。

純血のエルフはもう数えるほどしかいないそうだ。それでもたまに先祖返りして純血に近しい子が生まれることもあるらしいが。


「お前さんはきっと外の世界が見たくなるさ。だって、ほら・・・エルフだし」


エルフさん、エルフさん、小さな君は木の葉に掴まり風に乗って旅にでた。

エルフさん、エルフさん、小さなお家で一晩眠る。

季節がめぐり、木の葉を変えて、あなたは一体いまいずこ。

母がたよりをまってるよ、父が帰りをまってるよ。

いずれ子供がうまれたら、いちどは帰ってきておいで。

エルフさん、エルフさん、大きな君は馬に乗り。

エルフさん、エルフさん、旅のお宿で一晩眠る。

季節がめぐり、馬車を変え、あなたとうとう家路についた。

母が笑顔を浮かべるよ、父が涙を浮かべるよ。

子供を大事にその手に抱いて。あなたは帰ってきたんだよ。

遠く遠く離れても、あなたのお家はここだから。



エルフの歌を歌いながら、私は聖人様の言う通り森の外へと出ることにした。

魔法の学校があるらしい。そこで私は勉強してみる。人間の魔法とはどのようなものか知りたくなったから。

聖人様にももう一度会いたくなったから。森を越えて山を登り、私は国境までやってきました。

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