魔法陣とは
「まったく、お前らは何をやっとるんだ」
「何って魔法で服乾かそうとしてたんじゃないですか」
ティナがまったく悪びれた様子もなく答える。複数回雷の魔法を浴びたルナはマリーと同じようにガタガタしているが。
ルナの体質が災いして帯電しているらしい。魔力操作で散らすことも出来るはずだったが生憎と彼女にそんな知識はない。
「風と火の魔法で暖かい風を出すことが出来る。授業代わりに教えてやろう」
魔法陣の書き方だ、とアダムは言う。
「魔法陣は円が基本だ。これが大まかな範囲を決める」
アダムは懐からスクロールに使う羊皮紙を取り出した。そしてそこにコンパスを使って円を書くと真ん中に風を示す魔法のシンボルとそれを囲むように火のシンボルを描き、それを線で繋いで風のシンボルを囲んだ。
「これで火は風に作用して火が吹き出さず熱を風に伝える役割を持つわけだ」
「ほえー」
生徒一同は円の中を見ながらアダムの説明を聞いていた。
「さて、これで仕組みは完成だ。だがこれだけでは魔法陣は未完成なんだが・・・理由は何かわかるか?」
「はい!」
「はい、フラウステッド」
ルナが手を上げたのを見てアダムは彼女に顔を向ける。
「魔力を通す仕組みがありません!」
「正解」
アダムはそう言うと魔法陣を囲う様にさらに円を描いた。
「魔法陣の使用方法は幾つかあるがこれは魔力を直接流し、ながしている間だけ陣が効果を発揮するものと設定する」
魔法陣を囲んだ円と魔法陣の円の間に隙間がある。そこにアダムは文字を書き込んでいく。
「美術的な見た目を意識するなら円周をぐるっと綺麗に描くといい」
そう言いつつアダムは短く余白をたくさん作った。
「美術的な見た目はどうしたんですか?」
「実用性には関係ないからいらん」
「書けないんじゃなくて?」
ティナがそう言うとすかさず拳骨が落ちた。
「いったー!」
「余計なこというから・・・」
頭を抱えて蹲るティナを他所にアダムは続ける。
「この空白には色々な制御に使う文言を足すこともできる。今回は服を乾かすために温風を出すわけだが・・・」
そう言うとアダムは空白をペン先で突きながら言う。
「ここに必要な文字は何だと思う?」
「わかりませーん!」
ティナの頭に二発目の拳骨が落ちる。
「あががが・・・!」
「・・・思いつきでしゃべってるの?」
クロエが湿らせた布で頭を冷やしながらティナは考える。
「熱すぎたら問題だよね、燃えるし」
「それだと火が出てるが・・・まあそれもそうだ」
「風が強すぎると飛んで行っちゃうし室内だと大変ですね」
「うむ、そうだ」
「となると・・・最初に制御しないといけないのは威力かなぁ」
あれこれと話し合うとアダムはそれに概ね同意し、次の段階に。
「出力が問題だ、それを制御するには文字で行うのは難しいが手動で魔力を流す場合にはある程度の自由が利く。それでも魔力を流して即座に反応したり反応したら即全開になると困るな?」
「ゆっくり反応するようにしても威力は変わらないのでは?」
「その際にこの制御の文字に流れた魔力の通り道を描くことが手っ取り早い制御方法になる」
火のシンボルを角形で囲み、数字を書いていくと途中で風のシンボルを経由して繋ぐと星形になる。
「これで火に魔力が巡るたびに風のシンボルに魔力が少しずつ流れ、熱も徐々に上がっていくという仕組みになる。これで出力問題は大まかに解決できるというわけだ」
書き終えた魔法陣にアダムが魔力を流すと魔法陣が外円から光りはじめ、徐々に文字に伝わり少しずつ風が起こり始めた。
「おーー!」
「すごい、魔法陣ってこうなってるんだ・・・」
「陣は図鑑でしか見たことないから新鮮ですね」
魔法陣は魔力に反応し、陣として成立した場合長く効果を残すので媒体に残す場合慎重な保管が必要になる。
また社会で採用されている街灯の光などに使われている魔法陣は風雨にさらされるのを防ぐために厳重に保護されているため実物を拝む機会は意外とないのだ。
そのため生徒たちにとって魔法陣の実践授業は非常に人気がある。大半の生徒が懸命に中等部を過ごしてきた理由の一つであり、魔法使いになれずともこの知識があれば技師としての道も開ける。
魔法学校であれば他の施設で魔法陣のテストをする際に魔法使いの監督をわざわざ呼ぶ必要もないので勉学を即座に実践に移せるのも大きな利点だ。
「服を吊るした場所の下にこれを敷いてだな・・・」
「先生、これだと魔力を流すのは難しくないですか?」
「それもそうだが、そのためにこういったものも用意してある」
アダムはそう言うと今度は革袋を取り出し、中から小さな石を取り出した。
「これを使う」
「それは魔石ですか?」
「そうだ、魔力を貯め込む性質をもった石に予め魔力を籠めてあるタイプだ」
「魔力を充填できる魔石!」
「小さいのはそんなに高くないから小遣い貯めて買うのもありだぞ」
魔石を魔法陣に触れるように置き、ずれないように四隅に重しを乗せると魔法陣は緩やかに光り温風を噴き出し始めた。




