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やなやつ!

だがそんなアダムの言葉とは裏腹にダズは鞄を降ろすと骨組みだけのベッドに寝袋を敷いてそこに腰を下ろした。


「僕は大丈夫ですよ、穴倉で暮らしてたりもしてたし」


なんと埃っぽいのが平気らしい。ここらへんは種族の特性だろうか。


「此処に来るまでに他の生徒には会わなかったのか?」

「そうですね、旧館の近くに何人か居たような気はしたんですけど」

「本館の生徒にしろどっちにしろそっちは確実にサボりだな。授業が始まるまでには来るといいんだが・・・」


ダズはアダムの言葉に溜息をついた。Fクラスに入ったから、ということがマイナスになるという噂は彼も聞いていた。それ故にこのクラスに決まった時点で真面目に通う気が起きなくなってしまったのではないかと考えたからだ。


「掃除が終わってない個所もあるからまだ使う部屋は決めてないんだ。それならここの部屋に入るついでこの部屋の掃除を引き継いでもらっても構わんか?」

「わかりました、まかせてください」

「この子たちは朝から来てるからな、一旦休憩だ。実家通いのフラウステッドは今日はここまででも構わんぞ?」


アダムの言葉にルナは少し迷ったが・・・予定もないので昼食だけ家で取って午後も手伝うことにした。


「それじゃあ、いったん帰って両親に声を掛けてから戻ってきますね」

「きゃー!ルナちゃんステキ!」

「・・・ありがとねぇ」


二人に拝まれて困りながらもルナは一旦家に戻ることにした。


『よし、じゃあワシらは本館の食堂で昼飯を食うぞ』

『ごちになります!』

『奢るわけないだろ!』

『えーっ!』


ルナはティナの賑やかな声に思わず笑いながら旧館を後にした。




「あれー、こんなとこでなにしてるの?」


ルナが旧館を出て学園の門を目指していると自分と同じ高等部の1年生に出会った。クラスのプレートを見るとどうやらDクラスらしい。


「お昼なので一旦家に帰るところです」

「へぇ、じゃあ俺らと遊ぼうよ」

「ごめんなさい、旧館の掃除を手伝うので・・・」

「えぇ?Fクラスの連中の事なんかどうでもいいじゃん」


よく見ると後ろにも同じDクラスのメンバーが。彼らは困るルナを見て彼を咎めるどころか何処か楽しそうにしている。


「おい、そいつもFだぞ」

「え?ホントだ・・・なんだよ落第組か」


バカにしたような口ぶりの男子にルナは構っていられないとおもい、隣を通り過ぎようとした。


「待てよ、落第組がウチのクラス無視していいと思ってるのか?」

「落第組なんてクラス、ありませんから」


そう言って通り過ぎようとした時、不意に背中に水がぶつかった。


「つめたっ!」


振り返るとDクラスの男子が杖をこちらに向けている。どうやら水の魔法を使ったらしい。


「・・・」


流石にルナもムッとした顔になり、体内の魔力を操ると体についた水を掌に集める。

魔力で生成された水は魔力によって操作するのが容易い。ましてや悪魔として転生したルナは体の隅々までを魔力で再構築することが可能であり、彼女の自意識が強ければ悪魔形態と人の形態、それ以外の姿にもなれる。これは彼女が体を再構築できるレベルで魔力を操作できることの証左であり、様々な形を取れる悪魔が魔法使いの終着点とされる理由である。

つまるところ本来ならば掌などの魔力を集めやすい箇所でしか操作できない魔法を彼女は全身で操作できるため、魔法でできた物は肌で触れている限り容易く制御できるのだ。


「魔法をつまらない事に使ってはいけません」


服はあっという間に元通りになり、全てが掌に集まった。それを見て絶句しているDクラスの男子を見てルナは水を球体に変えて男子の頭の上にお返しした。


「反省するといいですよ」

「お、おい!なんだこれ!?」


水は男子の頭にまるでボールのようにくっつき、男子は困惑した様子で手を前に突き出しておたおたしだした。

周囲のクラスメイトもルナの魔法の精度に呆然としており、彼の声は虚しく響いていた。



「ふー・・・上手くできてよかった・・・」


ルナはすたすたと余裕たっぷりを装いつつ学園を出ると大きく息を吐いた。

感覚というのは言葉にできないことが多い、それには知識や経験が必要だがルナにはそのどちらもが足りていない。

できると思ったからやってみたらできたのである。ただそれを当然と思えるほどにはルナはまだ自分に確信を持てていなかった。


「自分で出した魔法じゃなくても操作できるんだ・・・」


魔法を使ったのはこれで何度目だろうか?中等部では勉強だけだったし、この間の実技試験で火を起こす程度の魔法を使ったばかり。火に慣れてきたものの、水の形を変えて投げつけるなんて芸当は無理なはずだったが。


「ルルイエ先生に聞いとかなきゃ・・・」


しかも水はまるでボールのように球体を維持して彼の頭にくっついていたのだ。不思議なもんである。

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