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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
銀の黄昏健全化作戦!
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あれからいろいろありましたとさ

エトナーが帰ったのを皮切りにアダムが帰り、ルナも帰路についた。残った三人は人の少なくなった屋敷でこれからを話し合う事に。


「とりあえず綱領を発表するとして、次に何人残ったか把握する所から始めようか」


ポエトは屋敷に入ると全員を集合させる鐘を鳴らした。するとそれからあまり時間の掛からない内に全員集合した。


「これで全員か?」


ポエトの言葉に残った構成員達がうなづいた。


「ダッカーノ派が軒並み捕まってスッキリしました」

「聖人が来て逃げ出した奴らも何人か居たんですけどね」


構成員達がそう言うと全員が顔を見合わせて笑った。


「でも、あの人が教えてくれたんです。基礎的な事は魔法学園の図書館でも教えてくれるらしいです」

「そこで基礎的な所を勉強して、ここでそれを応用すれば私達だって魔法が勉強できるんです!」


アダムに短い時間とはいえアドバイスを受けた者達が言う。

それに対してポエトは笑顔を見せて言った。


「そうだな、じきに教会の監視対象からも外れる。そうなれば皆で魔法学園の図書館に行こう。あそこはその場で読むだけなら無料だそうだ。」

「お金を払う必要もないんですか?!」

「監視対象からって・・・教会に怯える必要もない?」


ポエトが頷くと構成員達は歓声を上げた。

今までダッカーノの時代遅れの本に高いお金を出していた者、書店や集会に参加したくても教会の監視が厳しくて無実にも関わらず諦めるしか無かった者。

彼等はこれからずっと楽に、そして彼等にとっては当たり前の規則を守る事で勉強を続けられると知り喜んでいた。



「これで銀の黄昏も、シュトリクさん達も上手くやっていけそうかな」


ルナは道すがらふと呟いた。銀の黄昏は再び組織として、そしてポエトはシュトリクたちと再びやり直すだろう。

夕暮れの中、歩く彼女の影が伸びていく。夕闇の中を歩く者、やがて金の夜明けを待つ者達は銀の黄昏を経て明日へと至るのだろう。


「これで少しは安心かな・・・色々と」


その影が次第に人ならざる者の形になっていったがそれを目撃したものは居なかった。

銀の黄昏は大規模な粛清の後、組織の規律を刷新して新たなスタートを切った。

初代総帥のポエトはその後も魔法の探求を続け、やがてその組織は表と裏両方の世界で名を馳せることになる。

魔道の探求者、白銀の月夜を黄昏に待つ者。その名は広く知られていくこととなる。


ルナはそんな事は露とも知らず、家族と夕食を取ったのちに眠りについた。




「やめてくれぇ!」


夕闇が迫る大聖堂、その地下にある異端審問官の詰所では罪人たちの悲鳴が木霊していた。


「神に祈りなさい、太陽の届かぬこの場所に主の慈悲が届くかはわからないが」


清潔な白衣に身を包んだ紳士が一人、新たに入ってきた罪人の前に立った。

優し気な雰囲気すら漂うその紳士の前に座らされているのは今回の騒動の原因となった元魔法使いのダッカーノだった。捕縛されてから一旦牢屋に送られ、日が沈んだ後にここに連れてこられたのだ。名目上は尋問とのことであったがダッカーノは大抵の事は黙秘するつもりだった。なにせ正直に話してしまえば一巻の終わり、それくらいの罪は重ねている。


「なにをする気だ!私はこれでもさる国の・・・」


そう喚き散らすダッカーノを他所に紳士は持ってきた鞄を机の上に置いた。


「お静かに、これから仕事の時間なので・・・」


手を挙げると助手らしき人物が彼にマスクを手渡した。革製の、茶色のマスクだ。


「何をしているんだ・・・?」

「ふふ、仕事とはいえ心が痛みますから。切り替えないと」


マスクを被り、そしてハンガーラックに掛かっているエプロンをつけると彼は先ほどの雰囲気から一変して意気揚々と鞄からなにやら取り出していく。


「今日はたくさん捕まりましたからね、お手入れが済んでないんだが・・・まあ、仕方ないでしょう?」


中には麻布を円筒型に丸めたものが入っている。それをまるで巻物をひろげるように転がして広げていくと・・・。


「ひっ」


思わずダッカーノは声を上げた。そこには赤黒い液体で汚れた鋏とのこぎり、それに金づちだった。

医療用にも思える小刀が最後に飛び出し、紳士はそれをまるでお気に入りの香水でも選ぶように指を動かして選んでいく。


「鋏は、さっきも使ったから・・・、そうだなぁ、でものこぎりは粗くなっちゃって切れにくいし・・・金づちでやろうか」

「やるとは何を・・・?」

「うん?知らないのかい?ああ、なんだ・・・伝えてないのかね」


紳士が助手を見ると助手は忘れていたと言わんばかりにぺこりと頭を下げた。紳士はそれを見てやれやれと溜息をつきながら金づちを手に取った。


「君が知ってる事を全部聞きたいんだよ、もう一つ用件もあるからそれもついでにやるつもりだ。物事はスマートに済ませようじゃないか。顧客のリクエストとボスのオーダー、両方を一気にこなせるなんて・・・幸運なことだよ」


ちらっと視線で合図を送ると背後に立っていた二人の審問官がダッカーノの手をそれぞれ掴んで机に押さえつけた。


「君、人の売買に手を出したんだって?子供を奪われた両親からリクエストが来ててね」


そう言うと紳士は金づちを迷わずダッカーノの指に振り下ろした。


「ぎゃああああ!!!」

「うん、この声だ。お前らの悲鳴が遺族の無念を雪ぐんだ・・・ささ、ついでに喋っていこう。このリストにある取引とその相手の事柄をすべて思い出すんだ」


紙切れにリスト化された文章を見せる。


「まってくれ!こんなことをされたら死んでしまう!喋るから!喋るからやめてくれ!」


紳士は悲鳴を上げるダッカーノの顔を鷲掴みにするとぐいっと顔を近づけた。


「安心したまえ、どこをどうやれば人が死ぬかは良く知ってる。これでも医者でね、簡単には死なせないから」

「おごご・・・」

「君のせいで死んだ者がお前の苦悶の声を望んでいるんだ。だからね?こうするしかないんだ」


紳士はダッカーノの口に布を突っ込むと再び金づちを振り下ろした。

異端審問官の尋問は夜中、太陽が沈んだ頃に行われる。主が目を瞑る時間帯であるから。


「むぐぅおおおおおお!」


罪人の悲鳴が木霊する。その悲鳴は罪を雪ぎ、被害者の魂が救われるまで絶えることはない。

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