御用だ!
「綱領の件は確かに!確認致しました!」
綱領を受領し、写しを取った審問官はポエトの腹心であるシュトリクとレイラを取り囲んで用件を伝える。
「ひ、ひぃ」
「こ、この子と総帥の命だけはお助けぇぇ・・・」
二人は異端審問官に取り囲まれ、ルナにしがみついて子犬のように震えていた。
「彼の考えは分かったので、綱領を組織に徹底した後名簿を作って構成員の人数を教えて頂ければ我らの警戒対象から解除という運びになります!」
取り囲んでハキハキと喋るので二人は小さくなるばかりだ。
「それでは総帥と共に今日の所はおかえり頂きます!」
「はぁい」
二人は途中から何も言わなくなったのでルナが返事した。
強面の男性は父親とその同僚で慣れているのだ。
「こちらは総帥です」
まるでレストランのウェイターが料理を運ぶように担架に乗ったポエトが運ばれて来た。
二人はポエトを前にしておろろーんと嘆き始める。
「総帥ー!変わり果てた姿に!」
「私達を置いて行かないでぇぇぇ!」
「あの、死んでませんから・・・」
審問官は苦笑いしながら言ったがポエトは身体中に湿布を貼り、包帯を巻かれていたのでミイラ状態だった。その状態でピクリともしないので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。
「治療もしましたし、明日にはだいぶ良くなると・・・」
「「うぇぇぇ・・・」」
「あの、聞いてます?」
「私が聞いてますから大丈夫です」
二人が悲嘆に暮れているのを他所にルナが審問官から治療と後日に塗る傷薬を処方してもらっていた。
「それでは、太陽の導きのあらんことを」
「ありがとうございます」
二人は総帥に縋り付いてばかりだったので荷車を借りて総帥と二人を乗せてゴロゴロと本部への道を戻る。
「ポエトさん、頑張りましたね」
「ええ、それとルナちゃん・・・何から何まで本当にどう御礼を言ったらいいか」
「そんな、私は何かするどころかポエトさんを・・・」
ごめんなさい、としゅんとするルナにシュトリクは慌てて答える。
「そんな!元を言えば私達の事です。貴女は迷惑を掛けられた立場なのにここまでしてくれたのだから謝ることなんて無いですよ」
「でも、頑張ってくれたのは先生達だし・・・ね?ルルイエ先・・・あれ、いない」
ルルイエは途中から居なくなっていた。おそらくはもう自分が関わらなくて良いと思ったのか、もしくは大聖堂の雰囲気が嫌いなのかもしれない。
「とにかく、まだまだこれからなんだし御礼なんてその後ですよ」
「そうですね、一日も早く銀の黄昏を立て直さないと」
シュトリクとレイラはルナの言葉を受けて決意を新たにしている。これからが大事だ。
アダムが頑張ってくれているとは言え、ダッカーノ達や違反者を如何に処罰し綱紀粛正を行うか。
それが大事である。ポエトもやる気になったとはいえそう言ったことにはまだまだ不慣れ。
レイラたちとの二人三脚で頑張るしかない。そしてゆくゆくは学園に行けない人たちの為が魔法を学べる場所に・・・。
「そうなったらいいな・・・」
ルナがそう呟きながら銀の黄昏の本部へ。そしてそこでは捕縛されたダッカーノ達がエトナ―達に監視されていた。
「エトナ―さん!」
「おお、来たな。その様子だと綱領はちゃんと出せたか」
「はい!でも、ポエトさんが途中で倒れちゃって・・・」
「え?なんでボコボコにされてんのコイツ」
「な、なんででしょうね・・・?」
ルナがそっぽを向いた。エトナ―は大体察した。
「まあいいや、それよりこいつら捕まえたからよ。綱領に従ってこいつらに処罰頼むわ」
エトナ―が蹴りを入れるとダッカーノは意識が戻ったのかエトナーを睨みつつも荷車からポエト達が降りてくるのを見ると彼らに縋るように声を上げた。
「総帥!お助けください!我らは何もやっていない!」
普段ならば陰で若造と侮っているにも関わらずこの言い草である。シュトリクとレイラは恥も外聞もないダッカーノの態度に怒りを滲ませた。
「ダッカーノ、キミは本当に何もやっていないのかい?」
「もちろんですぞ!私達は無実だ!」
自身が探求する魔法に誓って?と問いかけるとダッカーノは当然のように答えた。その際に右手が淡く光ったのを皆が目撃したが、何も起こらないのを見て一瞬訝しんだが証拠は揃っている。
アダムから資料を受け取っていたエトナ―がそれを読み上げた。
「総帥よ、彼らの罪状を述べる。綱領に照らし合わせて処罰されたし」
エトナーが羊皮紙を広げると最初の一文を読み上げた。
「一つ目!ダッカーノの売り渡した研究。これが違法な魔道具の製作に使われた」
その際に多額の金銭を受け取っている!と言うとポエトはダッカーノに見せた資料を思い出したのか苦い顔をしている。
「で、でたらめだ!」
「二つ!人身売買の幇助!並びに直接の関与!・・・その他諸々」
ダッカーノの言葉を無視してエトナ―はさらに罪状を追加した。資料には証拠となる取引の契約書の写しがあった。
その二つで十分だった。エトナ―は読み上げるのが面倒になってきたので最後は端折った。
「ダッカーノ、だそうだが。何か、申し開きはあるかな?」
「そ、それは・・・だが、私は組織の為を思って・・・」
まだモゴモゴと言い訳を続けるダッカーノにポエトは初めて苛立ったような表情を見せた。




