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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
銀の黄昏健全化作戦!
225/232

わかったからこそ

ポエトは大聖堂へと向かう。綱領を異端審問局にて発表し、謝罪をして新たな組織としてやり直すために。


そして、二人ともう一度やり直すために。


「うぐぐ」


決意したのはよかったが満身創痍であることには変わりなかった。大悪魔の膂力で全身満遍なくビンタされたのである。

体中が痛む。

まるで磔刑を受けるために進むかの聖者の如く、綱領を書いた紙を手に歩き続ける。


(遠い・・・、こんなに大聖堂は遠かったか・・・?)


一歩ずつ、進める足が重い。精霊の血は本来なら魔力を持たない打撃のダメージを緩和してくれるが大悪魔にその力は通用しない。しかも腕が八本あるので複数人から袋叩きにされたようなものである。


「ふはりほほ」

「は、はい!」

「私達は此処にいますよ!」


声を掛けるもその度に二人はオロオロしている。最初は意味がよく分からなかったが途中、窓ガラスに写った自分の顔を見て納得せざるを得ない状況だった。

こんな顔になっていたら自分でもさすがに心配するだろう。


「ほんはいほほほへ、わはひは、わはっはほほは、あふ」

「え、ええと?」

「今回のことで私は分かったことがあると」

『ルナちゃんすごいわぁ』


人型に戻って着いてきたルナが翻訳するとルルイエが感心する。こちらも実は父親の影響である。

エルドは喧嘩の仲裁に入ると最初こそ話を聞くが途中から全員殴り倒して終わらせてしまう為、全員がボコボコにされてしまう。その後に調書を取るのだが全員がボコボコにされている為誰もまともに喋る事ができないのだ。

怪我人の治療に来たアリシアが呆れながら手当する中、母親にくっついて来たルナら彼らが何を喋っているのか気になって聞き分けて翻訳していたのだ。

その精度はそれなりに場数を踏んだ証拠だ。


「わらひは・・・ふぁは・・・はっは」

「わたしはバカだった」


ルナの翻訳を聞いて二人は顔を見合わせた。よろよろと歩きながらポエトは己の過ちを悔いていたのだ。


「あふぉふぁは・・・ひへはいいほ・・・ほもっへいは・・・」

「後から知ればいいと・・・思っていた?なんで!」

「ルナちゃん落ち着いて!」


むがー!と再び怒り出したルナを宥めながらシュトリクはポエトを見た。


「のほひは・・・ほほはは・・・ひょひほへふはは・・・ひほははっふへ・・・よはっは・・・はら」

「残したものから読み取ればよかったって・・・それじゃあ、今を生きてる二人はどうなるんですか」

「ひはひはっへ・・・ようひゃふ・・・ひふひは・・・」


頬に伝うものが見えて、ルナにもようやく彼の後悔を知ることができた。ポエトは精霊の力で残留思念を読み取ることができる。それはまるで生きている者と話しているように。しかし彼女達の今をまったく知れていなかった自分の浅はかさを知って彼は変わろうとしていた。


「二人の事をちゃんと見てあげないといけないって・・・気付いたんですね?」


ルナの問いかけにポエトは頷いた。歩きながら、周囲から奇異の目線を受けながらも彼は歩を止めず。

過ちに気付いたなら、次にすることは・・・。


「ごめんね、ふたりとも・・・私が悪かったよ」


ルナの手が淡い光を帯びていた。そのお陰で彼はようやくまともにしゃべることができた。

この言葉だけは翻訳ではなく、ちゃんと聞かせてあげたかったから。


「後で答え合わせができたからって・・・今知ろうとしなきゃ意味がないのに」


二人はそれを聞いて、とても複雑な気持ちだった。その能力はいつかの自分達を救った力。

でもそれが今の自分達を苦しめる元凶になっていた。


後で知れるから、今の言葉の意味を調べない。

後で知れるから、今の気持ちを知ろうとしない。

後で知れるから・・・。


そんな彼の後出しで答えを知ることができる力が、どこにでもいていつでも触れられる精霊の性質が。

彼に『今生きている人間との対話』という大切な事を疎かにさせていた。


「もっと、今を大事にしなきゃいけないんだね」


彼がそう言って見上げた先には大聖堂がある。そして、異端者を出した組織の長の来訪に聖堂に詰める聖騎士達が剣呑な雰囲気でこちらを睨んでいる。


「いこう、今をやり直すために」


ポエトはよろめきながらも一歩を踏み出した。





「聖人様、大聖堂に例の魔法使いがやってきました」

「おう、来たか。通してやれ」


大聖堂にある祈祷室の一角で報告を受けたエトナ―は祈りを切り上げて立ち上がった。


「捕まえてきた雑魚連中な、適当に審問官に引き渡しといてくれや。残りは私がとっ捕まえてくるからよ」

「わかりました」


エトナ―は杖を肩に担いで歩いていくとその途中で罰金刑の支払い手続きをしている二人の肩を叩いた。


「お疲れさん、総帥もこれから心機一転でやってくだろう。お前らも真っ新になるんだし頑張れよ」

「ほひ、言われるまでもありませんぞ」

「おなじく」


エトナ―はジダーノとケッチータの言葉に笑顔で頷くと手を振りながら歩いていく。


「面白れぇ顔になってんな、んでもって・・・良い顔になってんじゃん」


ケタケタと笑いながら見つめる先にはポエトが綱領を持って立っている。今までのやってきたことがやってきたことなだけに警戒態勢を敷かれているがエトナ―はそれを追い散らすとポエトの前に立った。


「上手い事やれよ、今のお前さんなら心配はいらんだろうがな」

「言われなくともそうするつもりさ」


いつになく意志の籠った返答にエトナ―は笑みを深めた。

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