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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
銀の黄昏健全化作戦!
224/232

鬼の居ぬ間に

エトナーの心配を他所に銀の黄昏の本部では・・・。


「れ、れひた・・・」


ポエトと銀の黄昏の創設メンバー二人を加え、ルルイエとアービルによる綱領が書き上げられた。

この綱領はルナの記憶にある治安維持組織の心得などから引用されたもので、それをルルイエ達が魔法使いに適用できるように書き直したものである。


『じゃあこれを早速教会に届けよう』

「えっ」


ポエトはさすがに日を跨ぎたかった。というか治療を受けたかった。しかしアービルは許さない。


『今から届けて、少しは自分を支えてくれてる人の苦労を知るべきだと思う』

「・・・」


ポエトは半ば開いていない目でシュトリクとレイラを見た。


「「・・・」」


疲れている。気持ちも、体力もだ。精霊の混血である彼には理由こそ分からなかったが二人が何かに疲れて居ることだけは分かるのである。生命と精神、それぞれをオーラの強弱でそれを見抜く事ができるのだが二人のそのオーラのバランスは乱れ、尚且つ弱いものになっているからだ。


「わたひの・・・せいか」


呟いた。皆がキョトンとする中、ポエトは銀の黄昏が発足した時の事を思い出していた。

ポエトは精霊と人間の混血である。しかし彼の精神性はどちらかといえば精霊に近く、彼の父親が亡くなり天涯孤独となってからも彼には別段寂しさというものは感じなかった。

そんな中でポエトはまだ子供だった頃のシュトリクとレイラに出会った。彼女達も孤児であり、両親を早くに亡くして天涯孤独となっていた。ポエトはそんな二人に自身の能力から二人の両親が残した遺品から残留思念を読み取り、二人に両親が伝えたかった生きる術を彼女達に伝えた。

シュトリクには母親の機織りから編み物までの知識、そして父親からのそれに魔法を付与する術、染料を扱う術を。

レイラには踊り子だった母親からの踊りと、楽師だった父親の技術を。そしてそれに魔法を載せる方法を。


『ポエト様、ほんとうに・・・ほんとうにありがとうございます』


二人はそう言って自分に感謝してくれた。その時に、まだ夜の暗闇を怖がる二人の為にポエトは考えた。

生まれて初めて、誰かの為に考えたもの。

それが銀の黄昏という名前だった。


『我らは魔法を学び、それを使って生きる術を得た。もう闇に怯えることはない。あの月を見てみると良い。あの白銀の月が私達を導くだろう。黄金の太陽がもたらす夜明けには敵わずとも・・・黄昏が銀の月をよぶなら・・・黄昏もまた銀と言えるのではないか?』


魔法は月の夜、舞い降りた月の女神によってもたらされたという。ならば月がもうじき顔を出す事を告げる黄昏こそ魔法に頼って生きる我々が恐れるものではない。

だから、もう夜を恐れなくていい。月夜は我らを養い導く魔法を齎すのだから。


(おもえば・・・大きくなった彼女達を私は・・・)


あれから一緒に魔法を研究し、銀の黄昏を発足した。共に魔法を探求しようと集まった人々と交流を続ける内に彼女達との交流は相対的に減っていった。彼女達が何かを言いたげにこちらを見つめていることに何時から気付かぬふりをしていたのだろう。


『教会の者だ!てめえら大人しくしやがれ!』


聖人が集会所を襲撃してきた時、我先に逃げる仲間を守って立ちはだかった私を見て聖人は苦い顔をしていたのを覚えている。自身の術の効き目が悪いからかと思っていた、そう奢っていた。


『お前さんは、お人好しが過ぎる。いい意味でも、悪い意味でもな。もっと誰かと関わるべきだろう』


触れ合って話合え。彼女に捕まった時、そう言われた気がする。その時には私にはわからなかった。

精霊は触れ合うだけで、その場にいるだけで何を考えているのかがわかる。人はそうではない。

だが、同じ場所、同じ志を持っていれば自ずと分かり合えるのではないかと、そう思っていたのだ。

だから私は・・・二人が疲れていく姿を、見ていなかった。言葉ではわからない、そう思っていたが・・・。


「わたひは・・・わかろうと・・・していなかった・・・」


いつでも情報は読み取れるから、大気に漂う魔力から、残った遺品から、魔力から。

そう思って、しようとしなかった。言葉ではわからないと、きめつけていた。


「いこう・・・すぐに・・・しゅっはふ・・・ひなふへは・・・」


痛む体を起こして、綱領を記した羊皮紙を手に。今、今やらなくては取り返せない気がした。

二人に支えられながら階段を降りて階下に降りるとその途上で新入りの魔法使いが構成員相手に講義をしているのが見えた。皆熱心にその言葉に耳を傾けている。図を簡単に描いてみたり、消して書き直してみたり。

その様を見ると一人で研究をして、その成果だけを教えて、また一人で研究室に戻って・・・それを繰り返していた自分が酷く空虚な、冷たい存在に思えた。


「あんな・・・ふうに、すへひらったのか・・・」


もごもごと、腫れた顔で呟いても答えはない。だが答えを待つまでもないと、今の自分はそう思う。

話合って、互いに考えや思いをぶつけあって、その上で研究をすることが・・・やりたかったことではないかと思う。組織の事もそうだ、もっともっと・・・話をすべきだった。

だからこそ、とポエトは自分の過ちを取り戻すべく立ち上がったのだ。

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