総帥との対談!
アダムが屋敷の中であれこれやっている最中。最上階にてアービルとルルイエ、そしてポエトは対談を行うべく場を整えていた。
『さて、まずは音が漏れないように』
ルルイエがそう言うとアービルは指を弾いた。すると一瞬だけ透明な膜が薄く広がり、周囲の音から三人を切り離した。
「なぜ音を遮断したのです?」
『言霊がどこに作用するかわからない。それにこういったことを盗み聞きする者は多い』
アービルが指を唇にあてて、シーとジェスチャーをする。ポエトはそれを見てなるほど、と納得した素振りを見せる。実際はルルイエがアダムが仕事をしやすいようにと配慮したものであったが、実際問題精霊の混血と悪魔の魔法談義なんて特殊も良いところである。
「この地にめぐる地脈を使って魔法を使う事は可能ですか?」
『可能だ、聖人の目を欺くことができるのであれば』
魔法使いらしい問いかけにルルイエは思わず笑みを浮かべた。こういったグレーな、ともすればアウトな問いかけをすることは魔法使いならではである。好奇心が理性を上回ること。それが優れた魔法使いの素質でもある。
「聖人はどれくらいの早さで察知できるとお考えで?」
『即座に、後は現場にたどりつく時間だけ』
ポエトの問いかけにルルイエは簡潔に答える。アービルの正体であるルナからすれば高度というより断片的すぎる会話で何がなにかわからなかったが、彼女も知識さえあればこの会話に参加できるようになる側だ。
「やはり無理か・・・では漂う魔力を扱う事は人にはできないのか?」
『体に備わった器官が未熟すぎるから無理。だが稀に修行や才能でそれを可能にする存在がある』
「そうなのですか・・・」
『お前もそうだろう。精霊との混血よ』
精霊は大気や自然に漂う魔力そのものと言っていい。人間にはまだその大気や自然に漂う魔力そのものを取り込む技術はないが、仙人や魔法使いの中でも悪魔になった者、死して精霊やリッチになった者などにはそれが可能になる場合がある。
『むーん・・・』
アービルが掌に魔力を集中する。大気中の魔力を集めるイメージをしながら。カティナが風の魔法を使う時のように、風の代わりに魔力が集まるイメージを。そうすると徐々に魔力が掌の上で形を取り始めた。
「おお・・・」
『お前にもできるのだろう?驚くことではないはずだが』
「ですがこれほど濃密に集めるのは・・・、それに自分がやるのと他の誰かがやるのを見るのはどうにも勝手が違います」
まるで玩具を差し出された子供のように目を輝かせているポエトにルルイエは苦笑しつつ尋ねるがポエトはその事にはお構いなしといった様子でそれに見入っている。
ルルイエはちょっと嬉しそうなアービルの肩を足でちょいちょいと突きつつ魔力を霧散させるように指示を出した。
(ルナちゃん、そろそろ魔力を霧散させてちょうだい)
(・・・はぁい)
勿体無さそうに手を閉じると集まった魔力は周囲に風を起こしながら部屋に吹き流れていった。
ポエトは自分の髪がなびくのを感じながら目を輝かせている。
「うむ、やはり悪魔は素晴らしいです・・・混血であることを疎んだことはないが・・・やはりその魔力操作は惹かれます・・・それができたらどれほどのことに挑戦できるだろうか」
ポエトはそう言いつつも彼女が霧散させた魔力をまるで拾い上げるように手に集めて魔力の塊を作っている。
ルナは全くわかっていないがこれだけでも常人離れした神業である。
なにせこれが出来れば場所に漂う質に左右されるものの魔法を使い放題なのだから。悪魔はそれを必要としないほど魔力を持ち合わせているが魔力を取り出す蛇口を増やし、同時に異なる魔力を操る際にそういった芸当をやったりする。
そのためルルイエなどの老練な魔法の使い手は複数の属性を帯びた魔力をあらかじめ用意して魔法を行使できる。
『訓練でどうにかなるものを羨んでも時間の無駄だ、それよりももっと知りたいことは?』
ルルイエは魔力操作についての話題を切り上げた。理由は色々あったがなにより話を聞いてるルナが真似をしようとするからである。魔力操作は一度感覚が染みつくと無意識にそれを操作してしまう事がある。
ルナは多数の腕、多数の目を持っていて魔力の操作と放出と管理を同時に行える肉体的な特徴を持っているのだ。
多数の操作を会得してしまうとどこかでそれをうっかり使ってしまうことがある。手癖のようなものだ。
当然ながら普通の人間に多数の属性の魔法を同時に扱うことは無理といっていい。特にルナのような学生には。
それができてしまうとどこかしら異常性を抱えた学生であることがバレてしまうため大変よろしくない。
なによりそんな学生を自分の弟子にしたがる魔法使いも出てくるかもしれないし。
(師匠は私で十分なのよ、エトナ―が例外!他は認めないわ・・・!)
ルルイエはルナの才能に惹かれて集まる有象無象の姿を想像して苦い顔をした。




