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悪魔になったらするべきこと?  作者: Faust
銀の黄昏健全化作戦!
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落ちぶれるものは落ちぶれるべくして

魔法を技術として見た時、国や組織というのは非常にドライな扱いがなされる。


何の役に立つのか?


これが何より重要視されるからだ。しかし基礎技術の底上げや知識の蓄積というのは大抵の国で軽視されがちで、召し抱える魔法使いはそれらを修めてから門を叩くので尚更である。

そして国が求めるものとなるとそれは更に狭く、限定的だ。


産業に関わるか?農業に関わるか?軍事に関わるか?

諜報か?医療か?それとも占術か?


これらの分野に貢献できないものはそうそう雇われない。そして魔法使いの持ってきた技術はやがて使い古されて淘汰される。なにしろ産業は魔法ではなく技術、職人がいるから知識さえあれば簡単に代用されてしまう。農業もそうだ。国の目に留まるレベルともなれば人間業ではない。

軍事に関しては昔から一定の研究が独自になされているため、外から入ってきた人間を雇ったりしない。

医療や占術は教会の専売特許だし、それを上回るとなれば悪魔の助けが不可欠である。王族の信頼を得られるならまだしも機関に属して人助けや商売をできるほど悪魔は何度も力を貸してはくれない。


ただ、落ちぶれて放逐された魔法使いにもチャンスが無いわけではない。なぜならすってんてんになった分、組織のしがらみから解放されるのである。裏の世界に赴いて一から勉強し直してもいいし、老人になっていても銀の黄昏のような組織に属して情報収集を行えば捲土重来の機会は訪れる。


(あくまで、一からやり直す覚悟があればだが・・・この老害には無理だろうな)


アダムはダッカーノの顔を見て心の中で悪態を着いた。

この男は返り咲くつもりはあるが自分の技術や知識を刷新するだけの度量がないのである。その証拠に未だに古い本を大事に飾っているのだ。しかも彼らの後ろでは何も知らない構成員たちがその本を開いてなにやら真剣に読みふけっているのだ。

自分の知識を見直すどころかひけらかしていい加減な知識を覚えさせている。


「研究熱心ですな」

「ええ、私が持ち込んだ一級品の本ですからな。格安で閲覧させております」


酷い野郎だ。とアダムは唾を吐きたくなった。昔の城に勤めていただけの奴が適当に書いただけの本を見るのに金を取っているのだ。

魔法学校の図書館ならもっとまともな物が無料で見られるのにである。

コイツらがまともなら末端の構成員達は魔法学校に出入りして蔵書を閲覧するくらいは出来ただろうにとアダムは顔をしかめた。


(こいつらをまともな道に引き戻すのも今回の目標だな)


後ろで黙々と勉強をしているのはどこで魔法を学べるのかわからない一般人なのだろう。誰もが誰も魔法の深淵を覗く為に研究するわけもないのでおそらくは職業魔導士を目指しているのかもしれない。

そう言った人からすれば権威主義者がオススメするあのインチキカタログはいいものに見えるのかもしれない。


「ここが魔法を極めんとする探求者の集まりであることは雰囲気だけでも十分に理解できました。しかし・・・」

「しかし?」

「総帥もそれなりの魔法使いであることもわかりましたが・・・組織に魔法に興味のない連中がいるのはよろしくない」


その言葉を聞いてダッカーノの表情は曇った。隠すまでもないが召喚の時に来なかったあの二人の事である。

痛いところを突かれたと言わんばかりの彼にアダムはふと、考え込む素振りを見せた。


「もしかすると・・・」

「?」

「彼らは来なかったのではなく、来られなかったのでは?」

「どういうことです?」


ダッカーノが食いついたのを見てアダムはさも得心を得たと言わんばかりに言う。


「経費の計算なんていつでもできるではありませんか・・・しかし、そんな時、皆が集まっている時にこそこそとやっている事とは何か・・・気になりませんかな?」

「・・・言われてみれば確かに」

「彼らは、私から見れば当て推量に過ぎませんが・・・何時も金の事ばかり言うような連中なのでは?」

「恥ずかしながらそうですが、それがどう関係するのです?」

「ならば猶更おかしい、何故そんな連中が手が離せないほど計算に追われているのです」


アダムはそう言うと手を後ろに組んで思考を深めるようにうろうろと歩き回る。


「そう言えば、あの小娘たちが綱紀粛正だとかなんとか言っていたような・・・」

「なんですと?」


ダッカーノはそれを聞いて拳を握りしめた。侮っていた小娘たちが自分達をどうにかするためにアダムを呼んだと察したのだろう。しかしながら交渉が決裂してアダムはこちらに来たことに安堵もした。


「つまるところこの組織で力を持ち過ぎたものを排除して組織の中のパワーバランスを調整したいと思っていたのでしょう。その為に私を引き入れたのだろうから」


それくらいの事は誰だって考えるであろうことだ。それを自分から言う事で彼らの疑念をさらに強める。


「そうなると、削っておきたいのは奴らか・・・こちらか」


どちらでしょうな?とアダムが問いかけるとダッカーノ達は顔を見合わせた。彼らの反応は既にこちらの思い通りと言ってもいいほどのものだ。


「そうなると、せっかく属するつもりだったこのチームが弱体化するのは私にとってもよろしくない。一つ仕事をしましょう」


アダムはダッカーノの肩に手を置いて言う。


「今、この組織のどの派閥に顔をだしても疑われないのは私しかいない。調べるには私が適任でしょう」

「・・・頼めますかな?」

「もちろん、これは将来への投資ということで」


それでは、とアダムは踵を返した。

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