潜入の準備だ!
アダムは情報をまとめると再び旧館の職員室に戻り、ルナ達と潜入のために作戦を練ることにした。
「向こうで色々とやらかしてるらしい人物はおおよそ把握できた。もう1日ほど向こうに行って色々と仕込むつもりだ。」
『相変わらずの仕事ぶりね』
「・・・ところであそこで着膨れしてるのはフラウステッドか?」
『着せれるだけ着せたけどやっぱりあの子はもっと落ち着いた感じが似合うわね』
豪奢なドレスを身につけているがどうにも窮屈そうで、隙を見てはバタバタと脱いでいる。そして普段の服装に戻るとホッとした様子で息を吐いた。彼女はどうにも着飾るという感覚に頓着しないようだ。
(あの子にドレスは無理だろうなぁ・・・)
ルナの母親であるアリシアは貴族の令嬢、服装を変えればすぐにでも夫人といった様子だが夫のエルドはどちらかと言えば制服、ヘタをすれば革や鉄製の鎧の方が似合う男だ。
ルナは物腰こそ母親よりだが服装の趣味は残念ながら父親寄り、実用性のない服装は気にもとめない有様だそうだ。
『あのジジイはどうしても貴族趣味で困るわ。値段ばかりであの子が着られるものを送ってくれないの』
「まぁあの様子だと騎乗服くらいしか着れんだろうな」
そこまで話したところでアダムは咳払いと共に今回の作戦の話に戻った。
「明日まではワシは掃除夫として潜入している。その後はワシは大悪魔を召喚し、契約したサモナーとして向こうの結社に向かうつもりだ」
『それならどこでも欲しがる逸材に化けられるだろうけど・・・、なるほど、それで私の出番というわけね』
アダムは魔法使いとしては残念ながら上位には食い込めない。召喚術など専門技術が必要とされる魔法などは悪魔など上位の者を呼び出すほど難しく、深い造詣が必要になる。
「そうだ、ワシがフラウステッドを・・・アービルを呼び出したように見せかける必要がある。それから総帥とやらに会って、ワシが仕事をする間に総帥を釘付けにする必要もな」
『それならお安い御用よ、近くに待機するから当日に手の甲に細工してあげるわ』
「頼む、魔法陣はどうする?」
『水銀を使うわ、手の甲同士をくっつけて円を描き、拳をぶつける。その後に瓶に入った水銀を床か、それなりに比広さのある場所に撒いてくれたら私が陣を描いて繋げる。向こうからすれば魔法陣をフリーハンドで描く凄腕に見えるでしょうね』
「わかった、それで頼む。それでは作戦決行の準備にはまだもう少しかかるから今日のところは帰って英気を養ってくれ」
ルルイエはその言葉に笑顔で頷くとルナを抱きしめ、二人そろって姿を消した。同時に帰る必要もなかったはずだが、恐らくはシュトリクがルナにべったりだったのが凄く嫌だったのだろう。
「・・・ドレスは片付けて帰れよ」
衣裳部屋になってしまった旧館の職員室。アダムは一人でよかった、と溜息をついた。
「さて、それでは今日も張り切っていくか」
再び掃除夫に扮したアダムは屋敷の中へと入っていく。二度目ということでまったく怪しまれることなく侵入したアダムはゴミ拾いをしつつ、再び情報収集に勤しむ。
「捕まえた魔物はどこへ?」
「引き取り手が金をはらったら・・・」
「ジダーノ様が黒字の部分を誤魔化しているそうだ」
「分け前はどれほどになるだろうな」
(こいつら部外者の前でもそんな会話を・・・)
ちらほらと聞こえてくる会話だけでもこれである。叩けばどれほどの埃がでるやら。
しかしアダムが今日求めてきたのはそんな情報ではなかった。
「ええと、ケッチータとジダーノの部屋はここか」
屋敷の中を歩いていくと前日に二人に出会った場所へ。ノックとともに中に入るとそこには貨幣を数えているジダーノとケッチータがいた。
「どうも、契約完了のためにここにサインをいただきたく・・・」
「・・・」
「・・・」
「お二人の名前をここに、”タダ”で!サインさせて”あげよう”!」
「「ここでいいんだね」」
このやりとりにちょっと慣れた自分が悔しい。アダムはどこか納得のいかない気持ちをどうにか堪えつつ二人にサインをもらい、そそくさと屋敷を後にした。
「シュトリク、文書はどうなっている?」
「こちらに」
少しはなれた場所に隠れ家を借りてアダムはシュトリクから書類を受け取った。
書類の内容はダッカーノ派を弾劾するという文で、それに賛同するメンバーの名前を書いたもの。内容については触れておらず、内容は二枚目からと記して先に賛同者を書くといった内容だ。判子も彼らが使っているものを使用した。
「これをどうするんですか?」
「この書類はワシが渡した羊皮紙でやっているな?」
「は、はい・・・そうですけど」
「それならあとは・・・」
アダムは入手したケッチータとジダーノの筆跡の部分を綺麗に切り取り、裏面をすこし削る。そしてその部分と同じ大きさの切り込みを書類の部分にも同様に切り、薄く削り取っていく。
「削り取った部分に筆跡の乗った切り取った羊皮紙を乗せて・・・接着すると」
「おお・・・すごい、まったく継ぎ目も何もない・・・」
「当たり前だ、粗があったら偽造する意味がない」
その為に同じ羊皮紙を使ったんだ。とアダムは言う。




