潜入!銀の黄昏!
たくさんのドレスや服が出てくる。ルナには分からなかったがシュトリクは職人として、アダムは職業柄、取り出されたドレスがとんでもない高級品であるとわかり仰天した。
「服屋でも開く気か?」
『クソジジイがあの子に着せろってうるさいのよ』
シュトリクは誰の事かわかっていなかったが、バエルがルナにお小遣い感覚であげているドレスと知ってアダムは顔をしかめた。
「ルナちゃんのおじい様は裕福な方なのですか?」
「めちゃくちゃな」
アダムはめんどくさくなったので説明を省いた。というより大悪魔が祖父と呼ぶ存在なんてとんでもない奴だと察して欲しかった。ドレスは数着では済まなくなってきているのを見てアダムはとりあえずルナが着替えるだろうことも加味して移動することにした。
「恰好やらは二人に任せていいだろう。ワシらは先に銀の黄昏のアジトに向かうぞ」
アダムはそう言うとシュトリクに案内を頼んで銀の黄昏のアジトへと向かうことに。
「ここです、銀の黄昏の本部は」
「・・・結構大きな建物だな」
屋敷と言っても差し支えない場所だ。しかしながら玄関の札のところを見ると『借家』と書かれている。
「取っとけよこんなの・・・」
「取ると大家さんに怒られるので・・・」
「家借りてる秘密結社とか聞いたことないんだが・・・」
アダムは溜息をつきつつも懐から布を取り出して顔に巻き始めた。そしてそのまま顔に巻いた布に魔力を当てて成形していくとすぐにどこにでもいそうなおじさんの顔になった。
「ふむ、それではまずは掃除夫として潜入する。借家である以上大家から調べろと言われたと言えば怪しまれまい」
「ああ、そうですね。よく大家さんが掃除の人を・・・」
「もしかして汚かったりするのか?」
「薬品の実験とか勝手にやって異臭騒ぎとか起こすので・・・」
そう言うとシュトリクは遠い目をしている。アダムはそれを見て非常に憐れに思ったが自分としては問題だらけの方が中に誰が居ても怪しまれないので複雑ではあったが。
「とりあえず行ってくる」
アダムは途上でどこから仕入れたのか掃除用具を手に屋敷に入っていく。
「誰だ?」
「掃除に来ました。汚れてるところがないか探しますよ」
「・・・入ってくれ」
門番らしき人物がいたが掃除用具とパッとしない顔に変装したこともあって止められる事もなかった。大家さんが怖いのだろうか?それとも不真面目なのだろうか。
屋敷の中には手入れがとてもされているとは思えない荒れた庭があり、そこからほどなくして玄関口へ。
「汚いな」
方便として潜入したが色々と酷い有様である。元々魔法使いには整理整頓が苦手な者が多いがこの場合はただただ管理されていないと言った方がいいだろう。汚すだけ汚して知らんぷりと言った様子だ。アダムは嫌々掃除をしながら屋敷の中を進んでいく。
「・・・」
廊下には何人かがなにやら話し合ったり、言い合いをしているところもある。それ以上に気になったのはどの部屋を見ても研究者の姿が少ないことだ。魔法使いがお金を稼ぐには知識を元に教師などで稼ぐか、研究をして資金を募るか、魔法そのものを使って稼ぐかだが少なくともこの屋敷に詰めているだろう人員のほとんどがそれらしいことをしていないのである。
(シュトリクが生地を売って収入にしていると言っていた。他はどうなっているんだ?この暇そうな連中は何をしている・・・?)
考えたくないがただの獄潰しの可能性もある。そうなると人数の割に未だにこの屋敷が借家なのも頷ける。
一致団結して稼ぐか、資金を募ればこの屋敷を買うこともできなくはないはずだがどうにもこの有様だ。
そもそもの話、元よりそのような団結力があれば彼女達が嘆くこともなかったのだろうが。
それからしばらく掃除をしつつ屋敷の中を探索する。その過程で掃除をした箇所をメモするふりをして屋敷の中の見取り図を書き取り、すれ違ったメンバーの中から重役そうなメンツの顔を覚えていく。
「収入はどうなっている?」
「今月は外で稼いだ分と金庫から持ち出した分で・・・」
「取引に使うモノは用意できたのか?」
「教会がうるさいからな、ぼちぼちだ」
アダムは聞き耳をたてつつ床をモップで擦り、彼らの会話を記憶していく。聞く限りでもかなりグレー、もしくはアウトラインを越えたような発言がいくつか聞けた。叩けば埃はいくらでもでるだろう。
そうして掃除を続けていると不意に声を掛けられた。
「おい、そこから先はダッカーノ様の部屋だ。近づくんじゃない」
「?」
「お前に言ってるんだぞ、掃除夫!」
声の方に顔を向けるとなにやら神経質そうなメガネの男が立っている。
「そうでしたか、今日が初めてなもんで」
「まったく!魔法使いでもないものがうろうろするな」
「これは失礼しました・・・ええっと?」
「私の名前も知らんのか!クノーツだ!この銀の黄昏の有力者の名前を知らんとは!」
アダムは色々とと記憶を探ってみたがクノーツという名前にとんと心当たりがなかった。裏も表もである。
つまるところこいつは自分で言うほど有力者もでなんでもないということになるが・・・。




